デジタル化推進「質の高い教育に不可欠」 文科相が所信

萩生田光一文科相は11月11日、衆議院文科委員会で、文教政策の所信表明に当たるあいさつを行い、教育政策の当面の方針を明らかにした。冒頭、「デジタル化の推進は今、社会全体で取り組みを進めなければならない課題」と述べ、教育のデジタル化を進める必要性を強調。遠隔オンライン教育やデジタル教科書に関連する規制の見直しについて、「児童生徒の発達段階」や「ICT環境整備の状況」に配慮しながら、「制度改正を含めた具体的な検討を進める」と述べた。また、少人数学級の実現については、現在進んでいる来年度予算編成での折衝を念頭に、「学級編制標準の引き下げも含め、しっかりと検討していく」と指摘した。

萩生田文科相のあいさつは、開会中の臨時国会で、文教政策を巡る審議が本格化するのに先立ち、約23分間行われた。

まず、新型コロナウイルス感染症への対応を通じて「既存のシステムが持つ課題に気付かされる場面」があったと指摘。「デジタル化の推進は、質の高い教育を実現する上で必要不可欠」として、全ての小中学生に1人1台端末の環境を年度末までに整備するとともに、学校のネットワーク環境整備を進め、GIGAスクール構想の取り組みをさらに加速する方針を強調した。

衆議院文科委員会であいさつする萩生田光一文科相(衆議院インターネット審議中継から)

学校現場のデジタル化に合わせ、▽教員研修の充実▽GIGAスクールサポーターの配置促進▽オンライン学習システムの全国展開▽全国学力・学習状況調査のCBT化▽教育データ利活用に関する検討――を進める。

遠隔オンライン教育やデジタル教科書を巡る規制の見直しについては、「児童生徒等の発達段階を考慮しつつ、ICT環境整備の状況も踏まえながら、制度改正を含めた具体的な検討を進めていく」と説明。義務教育段階では児童生徒の発達段階と、1人1台端末の整備状況や教員の習熟などに配慮しながら検討を進める考えを示した。

また、少人数学級については、「学校現場において高いニーズがある」と指摘。児童生徒一人一人の特性や学習定着度などに合わせた個別最適な学びを実現するために、「学級編制標準の引き下げ」を検討対象とする考えを明言した。文科省は、少人数学級について、来年度予算の概算要求で予算要求額を明記しない事項要求としており、学級編制標準を引き下げる場合には、来年の通常国会で、学級規模を現在、40人学級(小学1年生は35人学級)と定めている義務標準法の改正案を、予算関連法案として提出することになる。

衆院文科委員会では、11月13日から文教政策を巡る本格的な国会審議が始まる。

衆院文科委で萩生田文科相が行ったあいさつのうち、教育政策の関連部分
【総論】

新型コロナウイルス感染症により尊い命を落とされた方々に、心から哀悼の意を表します。文部科学省が担う教育再生や科学技術イノベーション、スポーツおよび文化芸術の振興は、わが国の未来を切り開く取り組みの中核であり、このコロナ禍においても決して歩みを止めることが許されないものです。こうした決意の下、安全な環境において子供たちの学びをしっかりと保障し、子供たちが自らの夢を実現することができるよう、関係省庁とも連携しつつ、持てる力の全てを尽くしてまいる所存です。

感染症への対応を進める中、既存のシステムが持つ課題に気付かされる場面もあり、特にデジタル化の推進は今、社会全体で取り組みを進めなければならない課題です。私はGIGAスクール構想の実現、デジタル社会に向けた最先端技術、教育研究基盤の活用、教育研究のデジタル化等に鋭意取り組む必要があるとの意を強くしています。

教育は国の礎であり、教育再生は菅内閣においても最重要課題の1つです。誰もが希望する質の高い教育を受けられる環境の整備は、わが国を支える基盤といっても過言ではありません。安倍内閣においては子供たちが自ら希望する進路に挑戦できる社会の実現を目指し、幼児教育、保育の無償化や、高等教育の修学支援新制度の実現をはじめとする取り組みを力強く押し進めてきました。

全ての子供たちに質の高い教育を保障するためには、こうした学びのセーフティーネットに加え、教育の質の向上を図るための取り組みを加速させる必要があります。

【教育デジタル化の推進】

令和の時代にあって、デジタル化の推進は、質の高い教育を実現する上で必要不可欠です。GIGAスクール構想の実現に向けた取り組みを加速させ、義務教育段階の全ての子供たちに対して、1人1台の端末の導入を本年度中に進めるとともに、SINETの初等中等教育への開放を含めたネットワーク等の環境整備に取り組みます。

また、並行して質の高い教育の実現を図るため、学校におけるICT活用の拡大に向けた教員研修の充実や、GIGAスクールサポーターの配置促進、オンライン学習システムの全国展開、全国学力・学習状況調査のCBT化や、教育データ利活用に関する検討を進めるとともに、今後の遠隔オンライン教育の充実や、デジタル教科書の普及・促進に向けて、児童生徒等の発達段階を考慮しつつ、ICT環境整備の状況も踏まえながら、制度改正を含めた具体的な検討を進めてまいります。

【少人数学級の実現】

少人数によるきめ細かな指導体制の計画的な整備は、学校現場において高いニーズがあります。新たな感染症の発生など、今後どのような状況においても子供たちの学びを保障するとともに、1人1台の端末の活用による児童生徒一人一人の特性や学習定着度等に応じたきめ細かな指導を実現するため、学級編制標準の引き下げも含め、しっかりと検討してまいります。

学校におけるICTの活用とその効果を最大限化する少人数によるきめ細かな指導体制は、まさに車の両輪です。新学習指導要領を着実に実施し、急激な社会的な変化が進む中で、多様な子供たちを誰1人取り残すことなく、全ての子供たちの可能性を引き出す個別最適な学びと協働的な学びを実現することができるよう、『令和の日本型学校教育』の構築に取り組んでまいります。

【教員の働き方改革】

学校現場の先生方には、日々、感染症対策と教育活動の両立に向けて、使命感を持って取り組んでいただいています。感染症対応のために学校における働き方改革が頓挫することがないよう、まずは学校に対する外部人材の配置等の支援を通じ、この特別な時期を乗り越えることが重要です。

学校における働き方改革は特効薬のない総力戦です。部活動の見直しや教員免許更新制の検証、小学校における専科指導の充実を始めとした教職員定数の改善、外部人材の活用などに取り組むとともに、改正給特法の趣旨も踏まえつつ、引き続き、国、学校、教育委員会があらゆる手だてを尽くして成果を出していけるよう、文部科学省が先頭に立って取り組んでまいります。

【いじめ、不登校など】

子供たちの成長は社会が一体となって寄り添い、支えていくべきものです。地域と学校の連携、協働の推進、学校安全の推進、いじめや不登校への対応、SNS等教育相談体制の構築、児童生徒の自殺予防の取り組みの推進に加え、道徳教育や人権教育の充実、教育支援センターやフリースクールなど多様な教育機会の確保、夜間中学の設置促進・充実、家庭教育支援の充実、読書体験機会の提供推進などに、しっかりと取り組んでまいります。

【高校改革】

高等学校においては、高校生の学習意欲を喚起し、実社会でのさまざまな課題に対応できる力を身に付けられるよう、普通科改革や職業教育の充実などに取り組んでまいります。

【わいせつ教員対策】

児童生徒を守り育てる立場にある教師が、児童生徒に対して、わいせつ行為を行うようなことは、決してあってはなりません。教員免許上の管理等の在り方をより厳しく見直すべく、制度改正を含めた必要な対策を講じてまいります。

【学校施設整備】

学校は子供たちの学習生活の場であり、災害時には避難所となるなど、国土強靱(きょうじん)化の観点からも重要な施設です。このため、非構造部材を含めた耐震化の早期完了を目指すとともに、学校施設の長寿命化を含む老朽化対策や、バリアフリー化、防災機能の強化、空調や給食施設等の整備の推進に力を尽くしてまいります。

【大学教育】

大学においては、新型コロナウイルス感染症への対応を進める中で、遠隔授業の実施にいち早く取り組むなど、学びを止めないための工夫がなされてきました。一方でいまだ対面の機会が十分でないとする学生の声、特に新入生による声をしっかりと受け止める必要があります。大学において、学生の理解が得られる学習機会が適切に確保されるよう、引き続き各大学による積極的な取り組みや工夫を促すべく、働き掛けてまいります。

Society 5.0に向けた人材育成やイノベーション創出の基盤となる大学等の改革が急務です。高等教育の質の向上と教育研究基盤の強化を図り、高等教育機関の取り組みや成果に応じた、手厚い支援と厳格な評価を徹底し、教育、研究、ガバナンスの一体的改革を推進してまいります。中でも国立大学は社会変革を先導し、社会や地域から支えられる存在になることが重要です。国立大学の戦略的経営を実現するため、ガバナンスの在り方や規制緩和等について検討を進めてまいります。

【大学入試と高大接続改革】

大学入試改革については、まずは令和3年度入試について、このコロナ禍においても、受験生が安心して受験できるよう、受験生第一の立場に立って、引き続き必要な準備を進めてまいります。また、英語4技能評価や記述式問題を含め、ウィズコロナ、ポストコロナ時代の大学入試の在り方について議論を進め、高大接続改革の推進に引き続き取り組んでまいります。

【大学病院】

新型コロナウイルス感染症への対応において、大学病院はわが国の医療を支える大変重要な役割を果たしています。医療提供や教育研究活動への継続的支援とともに、感染症分野の人材養成の強化に向けて尽力してまいります。

【高等専門学校】

高等専門学校は創設以来、約60年にわたり5年一貫の実践的技術者育成を行っており、産業界や諸外国から高い評価を受け、これまでわが国の産業界を支える大きな役割を果たしてまいりました。今後、機能の高度化、日本型高専の海外展開と国際化の一体的推進、技術者教育の基盤となる施設設備の整備とともに、地域に求められる人材ニーズを踏まえた積極的な取り組みを促進するなど、その振興に努めてまいります。

【リカレント教育と専門人材の育成】

リカレント教育については抜本的に拡充し、生涯にわたって学び続け、チャレンジし続けられる機会の確保を目指してまいります。
加えて、地方大学における地域の特性とニーズを踏まえた人材の育成や、数理・データサイエンス・AI教育を推進するとともに、成長分野等を踏まえた質の高い専門職業人を育成する観点からは、専門職大学や専修学校等における教育の充実に向けた取り組みの推進に努めてまいります。

また、これらの実現のためにも、国立大学法人運営交付金や施設整備費補助金、私学助成など基盤的経費を安定的に確保するとともに、経営力の強化、大学間連携や統合の促進、財政支援のメリハリ化等を通じ、強靭(きょうじん)な大学への転換を促してまいります。

【就学支援と子供の貧困対策】

幼児期から高等教育段階までの切れ目ない形での教育の無償化、負担軽減を着実に実施する必要があります。高校生等奨学給付金など就学支援の充実や、新型コロナウイルス感染症による影響を受けた学生を含め、引き続き学生等が進学・就学を断念することがないよう、必要な支援措置を講じてまいります。

また、幼児教育・保育の無償化の対象でない施設を利用する方の負担軽減については、子育て支援の観点から、関係省庁と連携しつつ、来年度からの支援の在り方について検討してまいります。これらに加えて、質の高い教育機会の保障や学校と福祉機関との連携強化を通じ、子供の貧困対策に取り組んでまいります。

【児童虐待】

児童虐待による悲劇を二度と繰り返してはなりません。厚生労働省など関係省庁と緊密な連携を図りながら、スクールソーシャルワーカーの重点配置など、児童虐待の防止にしっかりと取り組んでまいります。

【特別支援教育】

障害者が一生を通じて自らの可能性を追求できるよう、支援に係る環境の整備が必要です。福祉部局等と連携した切れ目ない支援体制の構築や、特別支援教育の充実、障害者の生涯にわたる多様な学習活動の充実に取り組んでまいります。

【グローバル化への対応】

グローバル社会を生きていく子供たちや若者にとって、外国語を含めた国際的素養を身に付けていくことは、極めて重要です。学校における外国語教育や留学生交流の推進など大学のグローバル化、在外教育施設の機能強化、日本型教育の海外展開、ユネスコが主導する持続可能な開発のための教育や、国際バカロレアなどを推進してまいります。

また、外国人児童生徒等への教育や、外国人に対する日本語教育の充実、大学等における留学生支援や、在籍管理の徹底等にしっかりと取り組むとともに、義務教育段階の外国人の子供たちの不就学等の状況を踏まえ、その実態把握や就学促進のための取り組みを進めてまいります。

これらの取り組みを着実に実現するため、必要な財源を確保しつつ、教育投資の充実に努めてまいります。

【災害への対応】

東日本大震災や令和2(2020)年7月豪雨を始めとする災害に対しては、就学支援、児童生徒の心のケア、学習や学校再開への支援等を始め、復興を支える教育人材育成、大学研究機関による地域再生の貢献、学校施設や文化財の復旧など、被害者の心に寄り添った復興に引き続き取り組みます。

さらに廃炉に関する研究開発や人材育成、原子力損害賠償にも着実に取り組むとともに、原発事故の避難者を始めとする被災した児童生徒に対するいじめについては、関係機関とも連携して、必要な取り組みを行ってまいります。

【結語】

本年9月新たに発足した菅内閣において、再度文部科学大臣の任を預かることになり、大臣として2年目を迎えました。国民のために働く菅内閣の一員として、今改めて、国家百年の計に立って、人づくりを始めとした文部科学行政における諸課題の解決に向け、果敢に取り組みを進めていく覚悟です。

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