ICT先進校の「1人1台前夜」 気兼ねなく使える道具に

2018年に開校したばかりの公立学校ながら「世界最先端ICT教育」を掲げる、茨城県つくば市立みどりの学園義務教育学校(毛利靖校長、児童生徒1295人)。今年12月、いよいよ1人1台の端末が届く。同校は新型コロナウイルスでの休校に見舞われた直後、ICTを駆使した学びの保障へといち早く動き、10月には「日本e-Learning大賞」で文部科学大臣賞を受賞。ただ1人1台の環境はまだ実現しておらず、教員らが譲り合って使っている。「実現したら何をしようか――」。同校の「1人1台前夜」をのぞいた。

手前にある児童の端末から、前方のスクリーンに送られた回答を見ながらクラス全員で話し合う、小学4年生の算数の授業の一場面

「それでは送ってください」。教員が声を掛けると、前方に置かれた大きなスクリーンに児童の端末の画面が映し出される。「この考えを説明できる人?」「5センチ分が1個、2個、3個だから3倍」「図を使うと分かりやすいね」。教員と児童らの間で、活気のあるやりとりが進む。

これは11月16日の朝、つくば市立みどりの学園義務教育学校で行われていた小学4年生の算数の授業だ。つくば市内の小中学校に導入されているシャープの教育グループウエア「スタディノート10」を使って、それぞれの児童生徒が教室内や家庭から、自分が端末で書いた画面を送信することができる。教室での議論につなげられるだけでなく、これまで手を挙げることができなかった子供にも、目が行き届くようになるという。

現在、校内で整備されている端末はおよそ7人に1台。教員らは校務支援システム上にある端末の予約表を使って、授業に使う端末を確保している。普段から全学年でICTを用いた授業が積極的に行われているだけあって、予約はいつもいっぱいだ。
他のクラスの予約が入っていて1人1台が確保できない場合は、児童生徒の何人かで1台を使うか、端末を使わないで授業を行う。教員らの間では、端末の予約を“早い者勝ち”とするのがよいか、計画的に割り振るべきか、という議論もあったという。

「1人1台、常にあったらいいですよね」。そう話すのは中学2年生の英語を担当する吉田圭介教諭。吉田教諭の授業では、生徒たちがタブレットを使い、英語でプレゼンをしていた。「タブレットを使うと好きな写真や絵を貼り付けられ、(プレゼンを)する方も聞く方も意欲的になる」と吉田教諭。授業に参加した野本万乃栞(まのか)さんも「自分の頭で考えて伝えよう、という気持ちになる」と話す。

1人1台が整備されれば、小学4年生が算数の授業で行っていたように「生徒がそれぞれの端末で記入したワークシートを全て画面に表示させ、共有して議論することが、いつでもできるようになる」と吉田教諭は期待を寄せる。

「つくば市の祭り」についてプレゼンの準備をする中学2年生の野本万乃栞(まのか)さん

今年12月にはいよいよ1人1台端末が整備され、インターネット回線も増強される予定だ。各教室では端末保管庫の設置場所を決めるなど、準備が着々と進む。普段からICT教育に積極的に取り組んでいるだけに、教員らに活用への不安はさほどない。児童生徒にとっても、常に手元に置いて動かせる「道具」の一つになることへの期待は大きい。

同校の毛利靖校長は「これまで、授業の最初や最後だけ端末を使いたいという場合でも、端末を予約した時間分はフルに使わないと悪いのではないか、という気持ちがあった。今後は授業の内容に応じて、より柔軟に使えるようになるだろう」と見込む。

世間では新型コロナウイルスの第三波が懸念されている。新しい端末は家庭でも使えるようになっているが、毛利校長は「いくらオンライン動画を配信しても、子供たちが主体的に、問題意識を持って学ばなければ意味がない。普段から自分の課題を見つける学習をしておき、学校が休みになっても戸惑うことなく、むしろ『やった、自分の勉強ができる』と思えるくらいでなければ」と話す。

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