1人1台運用開始へ6つの課題を提示 教育再生実行会議TF

ポストコロナ時代の教育を議論している政府の教育再生実行会議は12月1日、デジタル化タスクフォースの第3回会合を開き、教育のデジタル化に向けた検討項目について、小中学校の1人1台端末が整備される来年3月末を目指して検討を急ぐべき課題と、中・長期的な課題に整理した。急ぐべき課題として、1人1台端末の本格運用に先立つチェックリストの作成、教師のICT活用促進と指導充実に向けた支援、自治体ごとにまちまちな個人情報保護制度とそこでの学校教育の取り扱い――など6つを提示した。

教育再生実行会議デジタル化タスクフォースの第3回会合であいさつする萩生田光一文科相(中央右奥)

萩生田光一文科相は会合の席上、「前回、私より GIGAスクール構想の進渉(しんちょく)も踏まえ、 来年4月に間に合うよう早急に助言してほしい事項と、少し時間をかけて中長期的な視点で検討してほしい事項を整理して議論してほしいとお願いした。本日の討論の中で意見を頂戴したい」とあいさつ。

議論のたたき台として、内閣官房教育再生実行会議担当室の担当者が「課題の整理(案)」を説明。検討項目の例として、(1)学習履歴(スタディ・ログ)等の利活用(2)教育ビッグデータの効果的な分析・利活用の推進(3)ICT活用に対応した情報通信基盤の在り方(SINETの活用等)――などを説明。

その上で、ほぼ全ての小中学校で児童生徒の1人1台端末が整備される来年3月末に向けて、急ぐべき課題として、▽ICT端末の本格運用前のチェックリストの作成(例:端末の管理・運用の考え方、有害情報等から児童生徒を守るための活用方法等)▽教師のICT活用促進と指導充実に向けた支援▽クラウド・バイ・デフォルトの原則の推進▽個人情報保護制度の見直しの議論等を踏まえた学校教育の取り扱いの検討▽「教育データ標準(第2版)」の公表(学校現場で普遍的に活用されてきたデータ等)▽分析・研究体制の在り方――の6項目を明示した。

同担当室によると、この6項目について、委員を務める専門家から「チェックリストについては、昨年12月に文科省が公表した『教育の情報化の手引』のように、やるべき項目が一冊にまとまっているような手引きを作るべきではないか」との指摘が出た。別の専門家からは「1人1台端末として整備されるパソコンやタブレットは、文房具と同じで、自宅への持ち帰りが前提になる。自宅での利用方法や紛失時への対応などを例示するガイドラインを作る必要がある」との意見があった。

1人1台端末の整備に伴って蓄積される教育データの取り扱いと個人情報保護制度の関係については、菅義偉政権が看板政策としている社会のデジタル化に伴う個人情報保護制度の整備について、内閣官房IT総合戦略室と総務省が検討状況を説明した。それによると、個人情報保護法など関連する3本の法律を一元化する検討作業が現在、政府の有識者会議で進められており、その報告を受けて年明けの通常国会に改正法案が提出される。自治体ごとに条例上の規定の有無などがまちまちとなっている地方公共団体の個人情報制度についても、全国的な共通ルールを法律で設定する方向で検討が進んでいる。

こうした個人情報保護制度と学校が取り扱う教育データの関連について、文科省では「関連法律の施行に合わせて必要な通知等を行うことを検討している。学校現場での具体的な取り扱い例などを示すことも考えたい」(初中局学びの先端技術活用推進室)と説明している。

また、この日の会合では、委員の専門家2人が意見を発表。 溝上慎一・桐蔭学園理事長が、教育データの利活用やデータの標準化に関する課題を説明。日比谷潤子・前国際基督教大学学長(聖心女子学院常務理事)は、国際基督教大学がデジタル技術を活用しながら、世界18カ国からリベラルアーツ大学が参加する国際的な大学連盟「グローバル・リベラルアーツ・アライアンス」(GLAA)に加盟して国際交流を重ねるなど、オンラインの活用がグローバルな高等教育に結び付いている先進事例を紹介した。

教育再生実行会議デジタル化タスクフォースでの検討事項に係る課題の整理(案)
[検討項目例]

(1)学習履歴(スタディ・ログ)等の利活用

(2)教育ビッグデータの効果的な分析・利活用の推進

(3)ICT活用の抜本的拡充に対応した情報通信基盤の在り方(SINETの活用等)

(4)デジタル技術による教育手法や学務の高度化・効率化

(5)デジタル化の担い手となる人材の育成(数理・データサイエンス・AI教育の推進)

[急ぐべき課題 ~2021年3月末目途]

○ICT端末の本格運用前のチェックリストの作成(例:端末の管理・運用の考え方、有害情報等から児童生徒を守るための活用方法等)

○教師のICT活用促進と指導充実に向けた支援

○クラウド・バイ・デフォルトの原則の推進(利便性向上とコスト削減)

○いわゆる「2000個問題」の対応等に係る個人情報保護制度の見直しの議論等を踏まえた学校教育の取り扱いの検討

○「教育データ標準(第2版)」の公表(学校現場で普遍的に活用されてきたデータ等)

○分析・研究体制の在り方

[中・長期的な課題]

◎ラーニング・マネジメント・システム(学習eポータル)の活用促進

◎CBTの活用促進

◎デジタル教科書の普及促進、2024(令和6)年度からの本格的な導入を目指す

○教育データ(スタディ・ログ、ライフ・ログ、アシスト・ログ)の効果的な活用促進、教育データ標準の随時改訂

◎学校健康診断情報を活用したPHRの実現

○統合型校務支援システムの導入推進、モデル構築

○教育データ保存・流通基盤の整備

○マイナンバー制度の活用の検討

◎個人情報保護制度の見直し等を踏まえた学校教育の取扱いの明確化

○分析・研究体制の充実・強化

○学修履歴の電子認証化

◎デジタルを取り入れた教育手法の具体化・環境整備

◎大学教育のデジタライゼーション・イニシアティブの実施

○リテラシー教育の推進とエキスパート人材の育成

※◎は、中長期的な課題の中でも特に急ぐべき課題

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