集まれなくてもアートでつながる 光明学園が特別な文化祭

コロナで集まれなくてもアートでつながろう――。特別支援学校の都立光明学園(田村康二朗校長、児童生徒225人)で11月30日、入院中の子供も含めた全ての子供たちが共同制作した壁画が完成し、同校の文化祭「光明祭」でお披露目を迎えた。新型コロナウイルスの感染防止のため、今年は12月1日から1日に、1学年につき1家族だけを招待。家族は授業参観とともに、子供たちのアート作品を見て回る。“特別な文化祭”の幕が上がった。

1日1組限定の文化祭

分散でも盛り上がる光明祭の開会式

「今年は一度も全員で集まることがなかったけど、こうしてみんなで今日を迎えられてうれしい」

開会式で、壇上に登った田村校長は笑顔で子供たちに語り掛けると、光明祭の開会を宣言した。この開会式も、体育館に集まったのは中学部3年生と高等部3年生だけ。小学部6年生はZoomを使って別の会場から、他の学年は各教室から校内放送で、離れた分教室では分身ロボットを活用して、開会式に参加した。

同校には感染リスクの高い子供も多く在籍するため、感染防止対策はどこよりも細心の注意を求められる。そのため、毎年11月の土日に保護者を招いて実施していた光明祭を、今年はどういう形でできるかを検討した結果、1日に1学年1組の家族だけを招くという、約1カ月に及ぶ異例の形式に。その代わり、それぞれの家族には招待状が送られ、子供が学習する姿を見学できるほか、子供の展示作品を1日じっくり楽しめるようにした。

新校舎の建設が進んでいることもあり、田村校長はまず、新校舎の殺風景なスロープをアートギャラリーに変えることから着手。美術の教員らを中心に、子供たちの作品がまるで本物の美術館のように展示されたアート空間が現れた。

さらに、PTA会長の澤村愛さんから紹介してもらった、イラストレーターの小池アミイゴさんを総合プロデューサーとした壁画づくりもスタート。来年12月には取り壊される予定の現校舎の体育館の壁に、全員の子供たちが関わった作品が出現。道行く人々からの注目を集めた。
「光明祭開催期間中の授業参観では、英会話の授業で、自分たちで考えたプログラムをやる。壁画の色も自分たちで考えた。自分たちができたことをアピールしたい」と、最後の文化祭を迎えた高等部3年生の川田晃夫さん。光明祭の本番を待ちに待っていた子供たちの表情もどこか誇らしげだった。

「一番いいものを積み重ねたら、こうなった」

総合プロデューサーとして子供たちと向き合った小池アミイゴさん

壁画制作では、アミイゴさんが延べ15回も同校に足を運び、子供たちの表現しようとする姿と向き合ってきた。教師でもない、保護者でもない立場で、最初は戸惑いもあったが、次第にコミュニケーションの方法をつかむと、一人一人の個性も見えてきたという。

「ある女の子が、考えて考えて、ぽんっと黄色の絵の具を壁に乗せた姿を見たとき、まるで自分の人生そのものが更新されたようだった」と語るアミイゴさん。子供たちとのセッションは、アーティストとしてのアミイゴさんの成長にもつながったという。

同校には、教員が子供たちのもとに出向いて指導する病院訪問や在宅訪問、入院中の子供を対象とした分教室も設置されている。普段は本校舎に来ることがない、そうした子供たちも参加できる取り組みとすることが、この壁画づくりの大きなミッションだった。

そこで、アミイゴさんは子供たち一人一人に紙を用意し、ビデオレターを付けて、「楽しかった思い出を1本の線で描いてみて」と伝えた。それぞれの個性が込められた1本の線を、学校に通っている子供たちが描いた壁画に組み合わせることで、一体的なアートに仕上げることにしたのだ。子供たちからアミイゴさんに送り返されてきた作品には、線だけでなく美しい色も塗られ、その裏にはびっしりとメッセージも書かれていた。

それを受け取ったアミイゴさんは「1本の線をきっかけに、子供たちの表現がどこまでも広がることを実感した。それと同時に、自分へのプレッシャーにもなった」と振り返る。アミイゴさんは、このやり取りを「ラブレター」に例える。曲がりくねった線から始まった「ラブレター」は、最後には生き生きとした花になり、壁画を彩るピースになった。

「一番いいものを積み重ねていったら、こうなった。あと1年で壊されてしまうけど、それまでみんなで育てていきたい」と語る。
そんな壁画を見上げる保護者の中に、恒例となった大根の衣装で開会式を盛り上げた、同校PTA病弱教育部門会長の和泉智乃さんの姿があった。和泉さんは「通学が難しい在宅や病院で学ぶ訪問学級の子供たちは、作品を作っても学校に見に行くことができなかったり、病院から出られなかったりすることもある。この壁画なら、車で外から眺めることもできる。アミイゴさんは、保護者でも、病院の医療関係者でも、教師でもない存在。そんな人と出会えたことが、すごく大事なことだった」と話す。

アートを共通言語に、一つにつながる

子供たち全員が参加して完成した壁画

さまざまな人の思いが詰まった壁画も、1年後には校舎の解体で姿を消してしまう。保護者からは実物の保存を希望する声もあるというが、田村校長はデジタルで保存して、新校舎で展示することで、来校者がいつでも見られるようにしたいと考えているという。

田村校長は「2020年、私たちはみんなでコロナ禍を乗り切った。壁画はその証だ」と話し、「みんなコロナで不安になる中で、学校として何か目標となるものを掲げて、みんなで取り組むことが必要だと考えた。その結果として、病院訪問や分教室の教師、子供たちも、アートを共通言語に一つにつながることができた。特別支援教育はもともと制約だらけだ。コロナ禍をやらない、できない言い訳にしてはいけない。発想を広げ、どうピンチを切り抜ける答えを見つけるかが、教師の腕の見せ所だ」と語る。

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