今年の「世界の教員ナンバーワン」 インドの小学校教師が輝く

教育界のノーベル賞といわれる「グローバル・ティーチャー賞」の今年の優勝者が12月3日、英国・ロンドンで発表された。世界140カ国、約1万2000のエントリーの中から、インドの小学校教師、ランジット・ディサーリー(Ranjitsinh Disale)氏が栄冠に輝いた。

グローバル・ティーチャー賞に選ばれたランジット・ディサーリー氏(バーキー財団の同賞HPから)

ディサーリー氏は優勝賞金100万ドル(約1億1000万円)のうち半分を、同じくトップ10に選出されたファイナリスト9人の教員に分配すると発表。「新型コロナウイルス感染症のパンデミックで、教育現場は大いに混乱に陥った。しかしこの困難な時期に、教師は全ての児童生徒が良い教育を受けられるように最善を尽くしている。教師は、チョークと挑戦で、児童生徒の生活を変える真の変革者だ」とスピーチした。

ディサーリー氏はインドのマハラシュトラ州にある小さな村の小学校で、2009年から教壇に立つ。赴任当初、児童の出席率は2%ほどに落ち込んでいた。使用する教科書も児童の母語であるカンナダ語ではなかったため、多くの児童が内容を理解できなかったという。また、村の多くの女子が10代で結婚するため、女子児童の学習環境が特に整っていなかった。

そこでディサーリー氏は村に移住。カンナダ語を学び、教科書を翻訳した。さらにオンライン教材の充実にも努めた。具体的には、教科書にQRコードを組み込み、タブレットを使うと音声やビデオ教材を利用できたり、課題にアクセスできたりなど、児童それぞれの能力や生活環境に合った学び方を選べるようにした。

その結果、児童の85%が試験でA評価をとるようになり、卒業生から大学に進学する者が出るなど、これまででは考えられなかった変化が起きたという。また女子児童が10代で結婚することもなくなり、全員が学校に通えるようになった。

ディサーリー氏は自分の学校の子供だけでなく、世界中の子供の教育にも目を向ける。例えば、自宅に用意した実験室から科学実験の授業をオンラインで配信。世界83カ国、8万5000人以上の子供が利用しているという。

さらに紛争地帯の若者を対象に異国間で交流する、オンラインプログラム「国境を越えようプロジェクト」を主催。インドとパキスタン、パレスチナとイスラエル、イラクとイラン、米国と北朝鮮、8カ国延べ1万9000人の子供たちが参加してきた。参加者は両国の仲間と対話したり、ゲストのスピーチを聞いたりしながら、お互いの共通点について理解を深める。

一方で、教師の育成にも力を注ぐ。夏休みには、赴任校のあるマハラシュトラ州の教師、約1万6000人に、テクノロジーを活用した教育法についてレクチャーするなど、自分の知識を仲間の教師に伝える活動も積極的に取り組んでいる。

授賞式は毎年ハリウッドスターなどをゲストに迎え盛大に開催されるが、今回は新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、オンラインで実施。ディサーリー氏を含めたトップ10に選出された教師たちも、各国からオンラインを通じて参加したほか、英国のボリス・ジョンソン首相らがビデオメッセージを寄せた。

同賞は英国の非営利教育団体「バーキー財団」が、2014年に創設。今回は、日本からは東京都新宿区立富久小学校の岩本紅葉主任教諭と、品川女子学院中等部・高等部の元教諭、竹内啓悟氏がトップ50に選出された。

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