「?」「!」のサイクルで理科の楽しさを TIMSS2019

国際教育到達度評価学会(IEA)が12月8日に公表した「国際数学・理科教育動向調査」(TIMSS2019)の結果によれば、「理科の勉強は楽しい」と答えた児童生徒の割合は増加傾向にある。東京都世田谷区の三田国際学園中学校・高校(大橋清貫学園長、生徒1306人=11月現在=)で理科・生物を担当する大野智久教諭は「探究型の授業など、ここ数年の取り組みが背景にあるのでは」とみる。生徒が「理科の勉強は楽しい」と感じる授業の秘訣(ひけつ)は何か、大野教諭に話を聞いた。

三田国際学園中学校・高校で理科を担当する大野智久教諭(左)と、同高校3年生の山本花香(はなか)さん

理科の授業の中で、生徒たちが最も夢中になる時間とは――。大野教諭によれば、何といっても「実験」だという。ただし「やることが全て決まっていて、出る結果も見えていて、理想とする結果が出たかどうかで生徒を評価する“レシピ実験”ではいけない」。

まず、自分がどうしても知りたい問い「?」があり、実験などを通して「なるほどそうか!」という「!」が出てくる。だがそのうち「でも、これはどうなのだろう?」という次の問いが生まれる――。大野教諭が大切にしているのは、こうした探究のサイクル。最初の問いは教員が投げ掛けるが、いずれは生徒自身が問いや解決方法を考えることも目指す。

大野教諭が最近、中1の生徒たちに課した探究課題は、「砂糖と塩を、味を確かめずに区別する方法を、グループでできるだけたくさん考えなさい」というもの。「水に溶かして電気を通す」「炎色反応で調べるとどうか」といったアイデアのほか、「キュウリを塩もみすると水が出てくるはず。先生、キュウリはありますか?」と聞いてくる生徒もいた。生徒は近所のスーパーにキュウリを買いに走り、戻ってきて実際に確かめたという。

「理科が楽しい」と思うために必要なことは、「わくわくしていること。そこに大きく影響しているのが自己効力感で、それがないとアイデアが出てこないし、やりたくなくなってしまう」と大野教諭は話す。

授業の前には「生徒が本当に行き詰まり、アイデアも出せない状況になったら、問いを投げ掛けたり選択肢を提示したりして、サポートする心づもりはあった」というが、実際には行き詰まってしまう生徒は皆無で、実験に使いたい道具や場所について、生徒が次々と聞いてきたという。

特徴的なのは定期試験を行うものの、その得点を成績評価に入れないことだ。「ほとんどの人が解けないが、考えると面白い」という思考問題を出すことができるし、「基礎的な問題は解けるが、思考問題は苦手だ」というセルフチェックにもつながる。ある生徒は「生物ほど、分からないことに興奮する科目はなかった」という言葉を残したという。

TIMSS調査の結果では、小学生と比べて中学生で「理科の勉強は楽しい」と答える割合が低い。「中学校に入ったとたん、定期試験の得点で順位をつけられ、目指す先は高校入試。そうした実態が顕著に表れているのでは」と大野教諭はみる。

同校の高校3年生、山本花香(はなか)さんは「小学校の理科は好きだったが、中学生になってから、元素記号や周期表など覚えることが一気に増えて、あまり好きではなくなってしまった」というが、高校に入ってから再び、化学に引かれるようになった。

「虹はなぜ、きれいな七色の半円に見えるのだろう」といった日常の何気ない疑問が、授業で学ぶことで解決していく「サイクル」が回り始めたという。「大学は化学科に進み、化学を教える教員になりたい。そして定年後は、お客さんに理科を体験してもらう“サイエンスカフェ”を開きたい」と山本さんは話す。

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