学習者ID、2023年度にマイナンバーで認証 政府WG報告

マイナンバーを活用した行政のデジタル化に向け、政府は12月11日、菅義偉首相が出席してマイナンバーの利活用とデジタル基盤の改善を議論するワーキンググループ(WG)の第6回会合を開き、検討対象となっていた33項目を実現するまでのスケジュールを明記した報告を了承した。教育関連では、GIGAスクール構想で注目されている学習履歴(スタディ・ログ)の活用などに必要な学習者IDをマイナンバーにひも付け、2023年度から希望する家庭や学校で利用できるようにすることや、学校健康診断の結果は2022年度を目途にマイナンバーで管理し、生涯にわたる健康情報を本人が把握するパーソナル・ヘルス・レコード(PHR)に活用することが盛り込まれた。報告はデジタル・ガバメント実行計画の改訂案に取り込まれ、改訂案は年内に閣議決定される。

ワーキンググループであいさつする菅義偉首相(首相官邸のホームページから)

この日の会合には、菅首相のほか、加藤勝信官房長官、平井卓也デジタル改革相、武田良太総務相が出席。菅首相は席上、「あらゆる手続きが役所に行かなくてもできる、そうした行政のデジタル化を実現するため、このワーキンググループでは、長年指摘されてきた課題を33項目に整理し、それらを今後5年間、令和7(2025)年度末までに実現するための取り組み方針をまとめた。これまで、各市町村のシステムはバラバラだったが、引っ越しをしても同じサービスが受けられるように、全国の自治体のシステムを5年後までに統一・標準化する。われわれに必要なことは、従来のやり方にこだわることではなく、変化にすばやく対応する、そのスピード感を持つことだ」と、あいさつした。

報告の名称は「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤の抜本的な改善に向けて」。この中で、マイナンバー制度の利活用を促進する対象として、▽マイナポータルをハブとしたデジタル・セーフティーネットの構築=年末調整・確定申告における自動入力の実現、ふるさと納税に係る寄付金控除手続きの自動入力の実現、iDeCo手続きのオンライン化・デジタル化など▽多様なセーフティーネット=児童手当などの情報連携などの改善の検討▽金融=公金受取口座、複数口座の管理や相続などの利便向上、ATMによる口座振込(マネロン対策・特殊詐欺対策)、預貯金付番の在り方の検討▽教育=学校健診データの保管のデジタル化とマイナポータルからの閲覧の実現、GIGAスクールにおけるマイナンバーカードの有効活用▽固定資産課税台帳とその他の土地に関する各種台帳等の情報連携等の検討――の5項目を挙げた。

GIGAスクールにおけるマイナンバーカードの有効活用では、学習履歴などを管理する学習者用IDとマイナンバーカードをひも付け、転校するときに教育データを持ち運べることなどを想定している。学習者用IDのあり方については、来年3月末までに小中学生の1人1台端末が全国で整備されることをにらみ、現在、文科省の有識者会議で日常的な児童生徒の学習や教員による指導への活用を優先課題として具体的な検討が進められており、このWGではそうした学習者IDとマイナンバーをリンクさせることを想定している。

報告では「転校時等の教育データの持ち運び等の方策を 2022年度までに検討し、2023 年度以降希望する家庭・学校における活用を実現できるように取り組む」と明記。内閣官房の担当者は「1人1台端末の配備を受けて、2021年度にさまざまな実証実験を行うと聞いている。その上で、2022年度に教育データを持ち運ぶ方策などを検討し、2023年度から家庭や学校で実際に活用できるようにする」と説明した。

一方、学校健診データの保管のデジタル化とマイナポータルからの閲覧の実現について、報告では、「2020年度中に健康診断データの標準様式を策定する」とした上で、「生涯にわたる健康データを、2022年をめどに、マイナンバーカードを活用して、一覧性をもって提供できるように取り組む」と明記した。

学校健診のマイナンバーによる管理は、生涯にわたる健康情報を本人や保護者が把握して、健康管理や病気の予防・治療に役立てるパーソナル・ヘルス・レコード(PHR)の一環として整備するもので、今年7月に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2020」(骨太の方針)で2021年に法整備を行い、22年をめどに実現させることが盛り込まれた。厚労省が所管する妊婦健診や乳幼児健診では、マイナンバーを使ったデータ管理が実用化されつつあるが、それに続く小学校入学後の健診データは各自治体が独自に管理しているケースが多い。乳幼児健診と学校健診の接続に向けて、学校現場の対応が待たれている状況だ。

このため、文科省では21年度に、40程度の自治体でマイナポータルを通じて健康状態や既往歴などを把握し、医療者との意思疎通につなげる調査研究を行う考え。来年度予算の概算要求に1億5500万円を盛り込んでいる。

こうした学校健診情報のPHRへの活用では、自治体ごとにばらばらとなっている個人情報保護の規制が課題になっている。文科省によると、学校健診のデータは7割程度の自治体ですでにデジタル化されているが、健診データは個人情報のため、マイナンバーの活用に慎重な姿勢をとる自治体が多い。

こうした自治体の個人情報保護規制について、平井卓也デジタル改革相は12月11日の閣議後会見で、「一番大きな問題は、各自治体が定めている個人情報保護条例。それが個人情報保護法の枠をはみ出して作られているものもある。来年の通常国会で個人情報保護法の改正を行い、それに合わせて、全体としての整合性を取れるように、国がガイドラインを示すことで、地方公共団体が個人情報を外部に提供しようとする場合に、統一的でスピーディーな対応ができるようになると考えている」と説明。法改正と国によるガイドラインの設定によって、自治体に個人情報保護規制を見直す方向性を明示し、学校健診についてもマイナンバーを使ったデータ管理とPHRへの活用を実現していく考えを示した。

WGは、政府のデジタル・ガバメント閣僚会議の下に、今年6月に設置された「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループ」。若手のIT企業幹部などの有識者と関係省庁の担当者で構成されており、菅政権が看板政策に掲げる社会のデジタル化を方向付けるブレーンの一つとなっている。

報告「マイナンバー制度及び国と地方のデジタル基盤の抜本的な改善に向けて」の学校教育関連部分

【教育】学校健診データの活用、GIGAスクールにおける認証手段等の検討
(1)学校健診データの保管のデジタル化とマイナポータルからの閲覧の実現
[現状]

現在、児童生徒等の健康診断結果は、電子的に保存している学校、 紙により保存している学校など、さまざまである。一方、政府方針では、2022年を目途に学校健診を含む全ての健診・検診情報のデジタル化対応を目標としている。

[取組方針]

2020年度中に健康診断データの標準様式を策定する。また、生まれてから職場等、生涯にわたる健康データを、2022年を目途に、マイナンバーカードを活用して、一覧性をもって提供できるように取り組む。

(2)GIGA スクールにおけるマイナンバーカードの有効活用
[現状]

GIGA スクール構想は、 2019年12月に打ち出された、ICT の環境整備と活用により、新時代における効果的な学びを実現しようとする取り組みである。今般のコロナ禍を受け、 その重要性がますます高まっている。

[取組方針]

学習者の ID とマイナンバーカードとの紐付け等、 転校時等の教育データの持ち運び等の方策を 2022年度までに検討し、2023 年度以降希望する家庭・学校における活用を実現できるように取り組む。

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