デジタル教科書、小中学生の6割に導入 来年度予算案を決定

政府は12月21日の閣議で、2021年度予算案を決定した。文部科学関係予算は5兆2979億9700万円で、このうち文教関係予算は前年度から87億円減って4兆216億円となった。学校教育関連では、小学校全学年の「35人学級」を5年間かけて実現するための義務教育費国庫負担金や、学習者用デジタル教科書を小学5年生から中学3年生まで全国の約6割の学校で1教科ずつ導入し、学校現場がデジタル環境に慣れていくための促進事業などが盛り込まれた。来年度の学校現場は、全国の小中学校で1人1台端末によるICT環境の整備が進み、学級編制の見直しとともに、「令和の日本型学校教育」の実現に向けて踏み出すことになる。

文教関係予算案:初等中等教育関連の主なポイント

文教関係予算は前年度よりも微減となったが、今回の予算案は20年度第3次補正予算案と一体で編成する「15カ月予算」との位置付けになっており、新型コロナウイルスの感染防止対策やGIGAスクール構想の実現に向けたICT環境整備の関連項目は、第3次補正予算案に計上されている部分が多い=表参照。第3次補正予算案に計上された施策は、年度内に入札や発注などを進めることができ、来年度のスタートとなる4月ごろから切れ目のない予算執行が可能となる。このため、学校現場に投入される国の予算は、新型コロナ対策やGIGAスクール構想の実現のため、相次ぐ補正予算で大幅増となった今年度に続き、来年度も例年に比べて増額されることになる。

来年度予算案について、萩生田光一文科相は同日の閣議後会見で、小学校全学年の「35人学級」とGIGA スクール構想の加速に触れながら、「少人数学級と ICT 活用を両輪として、多様な子供たちを誰一人取り残すことなく、全ての子供たちの可能性を引き出す『個別最適な学び』と『協働的な学び』の実現に向けて、引き続き全力で取り組んでいく」と意気込みを表明した。

小学校全学年「35人学級」へ 5カ年計画が始動

小学校全学年「35人学級」に向けた義務標準法上の学級編制の計画

来年度予算案の折衝で最大の焦点となった少人数学級は、義務標準法で現在40人(小学1年生は35人)と定められている公立小学校の学級編制を、来年度から5年間をかけて段階的に下げ、全学年で35人とすることで決着した。現行「40人学級」となっている小学2年生以上を2021年度から毎年1学年ずつ「35人学級」に移行させ、年次進行で実現する=図参照。学級編制の引き下げは約40年ぶりで、「画期的」(喜名朝博・全国連合小学校長会会長)な改革となる。

5カ年計画の初年度となる来年度は、小学2年生の「35人学級」を実現するために以前から予算化されていた加配定数の一部など基礎定数に切り替え、744人の定数改善を図る。このほか、2018年度から10年計画で進めている通級指導の充実で397人の基礎定数を、小学校高学年の教科担任制の2022年度導入に先立つ小学校の専科指導の充実で2000人の加配定数を、それぞれ確保し、合わせて2397人の教職員定数を改善する。

文科省は、小学校全学年の「35人学級」によって、5年間で教職員1万3574人分の定数改善を見込む。計画的に実現するため、16年ぶりに教職員定数改善計画を策定。「正規の教職員をきちんと配置をしていくことを心掛けていきたい」(萩生田文科相)として、都道府県の教育委員会などに計画的な新規採用を求める方針だ。

新型コロナ対策と教員の働き方改革

新型コロナウイルスの感染拡大により、2020年の学校現場では、一斉休校による授業の遅れを取り戻すための補習や、教室などの消毒作業、児童生徒への保健衛生指導などで、教職員の負担は増え、皮肉なことに、働き方改革の流れに逆行する事態が起きた。来年度予算案では、外部人材を学校現場に取り入れ、教師がこれまで以上に児童生徒への指導や教材研究などに注力できるように、教職員の働き方をシフトする施策が拡充される。

学力向上を目的とする学習指導員は、前年度よりも3000人増の1万1000人を確保。退職教員や教師志望の大学生らが児童生徒の学習サポートなどを行う。学習プリントの準備や採点業務、来客や電話の対応、感染症対策の消毒作業などを行い、教師の負担軽減を図るスクール・サポート・スタッフは前年度よりも5000人増の9600人に倍増させる。また、中学校の部活指導員も前年度よりも600人増の1万800人に増やし、教員に代わって部活動の顧問を担当できるように促す。

消毒液など学校に必要な保健衛生用品の購入費は、20年度第3次補正予算案に256億円を計上し、来年度当初の4月から切れ目なく予算が執行されるよう配慮した。一方、文科省は、9月末の概算要求では、再度の一斉休校などに備えて、学習指導員を3万2000人、スクール・サポート・スタッフは2万4500人を要求していたが、「再び感染症が拡大し、緊急事態宣言が出されたり、一斉休校が行われたりする事態になれば、その時に追加的措置を考える、という財務省の整理で、当初予算案には盛り込まれなかった」(初等中等教育局財務課)という。

デジタル教科書 学校ICT整備のバロメーターに

来年度予算案について説明する萩生田光一文科相

来年3月末までに全国の小中学生に1人1台端末が整備される見通しになり、GIGAスクール構想は来年度から新しいフェーズに入る。いよいよ公立小中学校の現場にICT機器が本格導入され、対面授業とオンラインを組み合わせたハイブリッドなかたちで、中教審が近くまとめる答申で描き出そうとしている「個別最適な学び」と「協働的な学び」の実現に踏み出すことになる。

この新しいフェーズを学校現場が迎えるにあたり、来年度予算案が重視しているのは、一つは教員のICT活用指導力の向上であり、もう一つは教室で実際に1人1台端末を使った授業をスタートさせ、学校現場にICT活用を浸透させていくプロセスを前進させることだ。そのために、学習者用デジタル教科書について、全国の小中学校の約6割で1教科導入する新たな施策を盛り込んだ。

教員のICT活用指導力の向上では、教員の自己研鑽(けんさん)や能力開発に向けた支援が施策の柱となる。指導法の開発に必要な教材や関連図書の購入、外部講師を招いた校内勉強会など費用を想定し、20年度第3次補正予算案に216億円を計上した。また、ICTを効果的に活用した指導について有識者や民間の専門家らが助言する「ICT活用教育アドバイザー」を教育委員会など配置し、オンライン教員研修プログラムの作成を進める。

学習者用デジタル教科書については、1人1台端末の環境が整っている小中学校や特別支援学校などの小学5・6年生と中学生全学年を対象に、1教科分の経費として22億円を計上した。文科省によると、これにより、小学5・6年生の約6割、中学生全学年の約5.5割がカバーされる。

この学習者用デジタル教科書は、学校の授業だけではなく、宿題などを自宅で行うときにも使えるように、クラウド配信によって供給されることを前提としている。このため、使用するためには、1人1台端末だけでなく、学校や家庭などに通信環境が整っていることも条件になる。学習者用デジタル教科書が学校や家庭などでスムーズに使用できれば、児童生徒がオンラインで学ぶ環境が確保されていることになり、GIGAスクール構想が目指すICT環境整備がそれぞれの学校現場でどこまで実現できているかを示すバロメーターにもなりそうだ。

また、GIGAスクールサポーターを配置する経費として10億円を新規で計上。学校に必要なICT環境の設計や、使用するマニュアル(ルール)作りを行う専門家を4校に1人の割合で配置する。

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