デジタル教科書の使用基準を撤廃へ 健康への配慮前提に

学習者用デジタル教科書の使用を、各教科等の授業時数の2分の1に満たないこととする現行基準について、文科省の検討会議は12月22日、児童生徒の健康面への配慮や、教員の指導力向上の施策を講じることを前提に、撤廃することが適当だとする方針をまとめた。来年度からの撤廃に向け、年度内に現行基準を定めた文科省告示の改正を目指す。

文科省が同日の検討会議で提示した案では、「児童生徒の健康に関する留意事項について周知・徹底を図り、必要な対応方策を講じるとともに、ICTの活用に係る教員の指導力の向上のための施策等を講じていくことを前提として、デジタル教科書の活用の可能性を広げて児童生徒の学びの充実を図るために、撤廃することが適当である」とされた。

「なお、現行基準を撤廃するとしても、それはデジタル教科書を各教科等の授業時数の2分の1以上において必ず使用しなければならないということを意味するものではなく、あくまでも必要に応じてデジタル教科書をより有効に使用できる環境を整えるための措置であり、その旨を関係者間で十分に共有する必要がある」と明記した。

この方針に対し委員からの異論は出ず、前回の議論で慎重な立場を示していた全国連合小学校長会の赤堀美子調査研究部長も「児童の健康に関する留意事項を中心に記載されていることは大変よい。(使用基準撤廃の)目的についても、あくまでもよりよい授業をつくるため、授業の可能性を広げて子供たちの学びの充実を図るための措置だということが、きちんと示されている」と評価した。

また、慶應義塾大学の中野泰志教授は、障害のある児童生徒への配慮として「適切な端末や設定の選択が必要」「視力の影響で(端末と)30センチ以上の視距離を取ることが難しい場合は、医師などの助言を受けることが必要」など留意点の記載の充実を求めた。

座長を務める東北大学大学院の堀田龍也教授は「他のデジタル教材には特に使用基準はないし、子供たちは他のツールも使う。教育データの利活用の観点から言えば、これらがシームレスにつながることが必要。デジタル教科書だけ使用基準を定めることの価値は、今日(こんにち)においては十分な意味をなさないのではないかという意見が、撤廃の検討につながっている」と背景を説明した。

今年度の学習者用デジタル教科書の発行状況は小学校用教科書で94%、中学校用教科書で25%だが、21年度にはともに95%に達する見込み。

今年10月には萩生田光一文科相、平井卓也デジタル改革相、河野太郎行政改革相の3閣僚会合で、GIGAスクール構想による小中学生の1人1台端末の整備を踏まえ、原則デジタル教科書に移行することを視野に検討を開始。萩生田文科相は文科省の検討会議に対し、使用基準の見直しについて、他の論点に先行して検討を加速するよう指示し、年内をめどに方向性を示すとしていた。

また学習者用デジタル教科書の普及を目指し21年度予算案では、1人1台端末の環境が整っている小中学校に対し、小学校5・6年生と中学校全学年の1教科分のデジタル教科書を提供する実証事業などに、22億円を計上している。

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