わいせつ教員対策、法改正を見送り 官報に処分歴明記へ

「わいせつ教員を二度と教壇に立たせない」ことを目指して検討を重ねてきた教育職員免許法の改正について、萩生田光一文科相は12月25日の閣議後会見で、「法制上乗り越えられない課題がある」として、来年1月に始まる次期通常国会への法案提出を見送る考えを表明した。一方、わいせつ行為で懲戒免職処分を受けた教員の再任を防ぐため、新たな対応策として▽官報で公告する懲戒免職処分の事由が児童生徒へのわいせつ行為だったことを判別できるように規定を新設する▽教員採用の関係書類に刑罰・処分歴の記入欄を新設し、採用権者がわいせつ行為による処分歴を把握できるようにする――ことを打ち出した。また、教員が児童生徒らとSNSなどを通じた私的なやりとりを行ってはならないことを明確化するなど、予防策の充実を図る考えも示した。

法改正見送りを説明する萩生田光一文科相

わいせつ教員対策として、文科省は、児童生徒へのわいせつ行為で懲戒免職処分を受けた教員が再び教壇に立つことがないように、懲戒免職によって教員免許状が失効した場合、欠格期間を実質的に無期限とする教員免許法の改正に取り組んできた。

萩生田文科相によると、内閣法制局との調整の結果、「現行法上、例えば、殺人罪などの重罪を犯し、懲役刑に処せられた場合でも、刑の執行後10年で刑が消滅することなどとの均衡上、法制的に取ることができなかった」という。

次に、文科省は、小児性愛者が子供と身近に関わる環境にいるとわいせつ行為を行う恐れがあるとの専門家の指摘を踏まえ、小児性愛の診断を受けた人に教員免許状を授与しないとする教員免許法の改正を検討した。

しかし、内閣法制局は「小児性愛は概念が十分に明確とは言えない」と指摘。厚労省からも「現状では、疾病として診断基準等が確立されているとは言えない」との回答があったという。こうした調整の結果、萩生田文科相は「現時点では、適用範囲の明確さが求められる、法令上の欠格事由として規定することはできないと判断せざるを得なかった」と説明した。

このため、来年1月18日に次期通常国会が召集されるスケジュールを踏まえ、萩生田文科相は「わいせつ教員を二度と教壇に立たせないという思いで法改正を準備してきたので、忸怩(じくじ)たる思いがある。しかし、もう年末。通常国会へのエントリーをしなければならないので、こちらから(メディアに)事情を説明したというのが正直なところ」と、法改正の見送りを表明した状況を明らかにした。

法改正を見送る一方、文科省は、わいせつ教員対策の実効性を上げるため、2つの対応策を新たに打ち出した。

一つは、新たに文科省令に教員の懲戒免職処分を記載する官報の公告事項について規定を設け、懲戒免職処分の理由が児童生徒に対するわいせつ行為だったと判別できるようにすること。

文科省は、都道府県・指定都市教委などが教員の採用に当たり、過去の懲戒免職処分歴を確認することができる「官報情報検索ツール」の検索可能期間を、「過去3年間」から「過去40年間」へと大幅に延長。今年11月から過去5年分、来年2月から過去40年分が検索できるようになる。ただ、官報には懲戒免職処分の理由が詳しく記載されていないため、わいせつ行為による処分だったかどうかが分からない。このため、文科省令である教育職員免許法施行規則に、懲戒免職処分の際に処分理由を明記する規定を新設し、わいせつ行為による処分だったことが分かるようにする。

わいせつ教員対策を説明する浅田和伸・文科省総合教育政策局長

背景説明を行った浅田和伸・文科省総合教育政策局長は「処分理由を分かるようにすれば、官報情報検索ツールを使うときに実効性が高まるのではないか」と説明。都道府県教委などが教員採用時に適切な判断を行う手助けになるとの考えを示した。

もう一つは、教員採用時に応募者が提出する履歴書などの採用関係書類に刑罰・処分歴の記入欄を新設するよう、都道府県教委などに要請すること。浅田局長は「地方公共団体によっては、採用関係書類に刑罰や処分歴の記入欄を設けて正確かつ詳しく記載を求めている。各教育委員会にこういう取り組みをやっているところもあると示して、さらなる工夫改善を促したい」と狙いを話している。

わいせつ教員対策を巡る教育職員免許法改正の検討過程では、懲戒免職処分による欠格期間を現行の3年から5年に延長する案も浮上したという。これについて浅田局長は「欠格期間を3年から5年にしても、国民に納得してもらえるとは到底思えない。法制局とのやりとりではいろいろな議論があったが、(わいせつ教員が二度と教壇に立てないように)正攻法で譲らずにやった」と説明。「文科省にわいせつ教員を再任させていいと思っている人間は一人もいないと思う。それなのに、欠格期間を3年から5年にする法案を国会に出すなんて、恥ずかしくてできない」と矜持(きょうじ)を見せた。

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