室伏スポーツ庁長官に聞く 「教えない教え」を意識

スポーツ行政のトップである2代目のスポーツ庁長官として、2021年に臨む室伏広治氏。20年はコロナ禍によって東京五輪・パラリンピックが延期されたが、21年のスポーツ教育、オリパラ教育はどうなるのか。また部活動改革や、コロナ自粛で落ちたと言われる子供たちの体力問題などについて、どう取り組むのかを聞いた。(聞き手・教育新聞編集部長 小木曽浩介)


子供たちが将来を考えるきっかけを

「アスリートの思いや経験を、もっと学校教育で生かせる場面を」と語る室伏長官

――お会いするのは5年ぶりです。5年前、スポーツ庁長官になると思ってらっしゃいましたか。

いえいえ、全く考えもしませんでしたよ。

――去年はコロナ禍で暗いニュースが続いた1年でしたが、その中で室伏さんの長官就任の報は、世の中を明るくした気がしました。その就任から約3カ月がたちましたね。

ええ。東京五輪・パラリンピックも延期されるなど、大きな影響が出ている中での就任となりましたが、鈴木大地前長官の基盤を受け継ぎ、しっかりと取り組んでいきたいと思っています。

コロナ禍において、どうしても暗い話題やニュースが多くなっています。しかし、どんな時でも明るい話題を世の中に出していけるのが、スポーツです。社会からスポーツにどういったものが求められているのかを踏まえながら、皆さんに「感動してもらえるスポーツ界」を目指していきたいですね。

――その東京五輪・パラリンピック延期ですが、21年のオリパラ教育についてはどのように考えていますか。

コロナ禍で、予定していたオリパラ教育ができない学校もあると聞いています。オリンピアンがオンラインやアーカイブなどでもオリパラ教育に関わる形をつくれないか、検討しているところです。

また、オリパラ教育に限らず、アスリートの思いや経験を、もっと学校教育で生かせる場面があるのではないかと考えています。

例えば、プロサッカー選手の三浦知良さんは、中学生の時に単身でブラジルに渡った後、サッカー選手になった。そういう経験をした人は、身近にいませんよね?

彼の人生を聞くことで、子供たちが「自分は将来どんなことをやりたいのか」を思い描けるようになる。子供たちが人生を考えるきっかけになるのではないでしょうか。

自分の将来を考えることは、教科教育にも良い影響を与えるでしょう。「この教科は自分の将来につながる」というようなことが分かれば、苦手でもチャレンジしてみようと思うものです。

本人が気付いていないことを気付かせる
――コロナ自粛での、子供たちの体力低下も不安視されています。

一斉休校では週2、3回の体育の授業がなかっただけで、子供たちの体力が落ちたわけです。それも、子供たち自身が「体力が落ちた」と感じていた。子供がそんな自覚症状を訴えるのは、非常に珍しい現象だと驚きました。

つまり、それほど日ごろから身体を動かすということは大切なのです。今後は、子供たちにそうした機会を喪失させないよう、継続して体育の授業や部活動などができるように取り組むべきだと考えています。

「長所を見抜き、どう伸ばすかを大切に考えながら指導してきた」と話す

――自身も次世代の育成に注力されてきたと思いますが、どのような教育観を持って、指導に当たってきたのですか。

特長や伸ばしていくべき長所は、一人一人違います。早い段階でその長所を見抜いて、どう伸ばしていくかを大切に考えながら指導してきました。

もう一つ、本人自身が気付いていないことを、気付かせてあげることも重要なんです。自分のことは意外と知らないものです。こちらから教えるのではなく、自ら気付かせ、自ら取り組んでいけるよう、「教えない教え」を意識していますね。

(構成 松井聡美)

(1月3日午後9時アップ予定の後編に続く)

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