部活動としての「ボードゲーム」 真剣な遊びが育む学び

新型コロナウイルスの感染拡大で、年末年始は外出を控えて家にいる時間が増えたという人も多い。そんなコロナ禍での余暇の過ごし方として、にわかに注目を集めているのが「ボードゲーム」だ。実は、いくつかの高校には、そんなボードゲームと真剣に向き合う部活動がある。eスポーツ部や競技かるた部などとも引けを取らない「ボードゲーム部」の魅力に迫った。


コミュニケーションを育むボードゲーム
学年の分け隔てなくボードゲームを楽しむ卓上遊戯愛好会の生徒ら

期末テストを終えて、人の少ない校舎の中を進み、教室に案内されると、そこは異様な熱気に包まれていた。

東京都練馬区にある男子校の武蔵高等学校中学校(杉山剛士校長、生徒数1035人)では、昨年度から「卓上遊戯愛好会」が設立され、現在、中学1年生から高校2年生まで、十数人の部員がいる。毎週金曜日に集まり、多種多様なボードゲームに親しんでいるという。

一口にボードゲームといっても、その世界は奥が深い。有名なところでは、盤上の不動産をプレイヤー同士で取引しながら自分の資産を増やし、ほかのプレイヤーを破産させる「モノポリー」や、無人島を開発して最も栄えさせたプレイヤーが勝利する「カタンの開拓者たち」、タイルを並べながら都市を完成させていく「カルカソンヌ」などがあるが、世界中には他にもさまざまなボードゲームが存在している。この日の活動でも、部員の一人が珍しいボードゲームを持参し、多くの部員が未知のゲームを楽しんでいた。

愛好会の顧問を務める岡崎泰雄教諭は「初めてのボードゲームで遊ぶときは、みんなでルールを理解しないといけないので、伝える力や聞く力が鍛えられる。そして一緒の場をつくることで、コミュニケーションが生まれる」とボードゲームの効果を説明する。

実は岡崎教諭自身もボードゲームの愛好家。同校の高校1年生を対象とした「総合講座」の一つとして岡崎教諭が「卓上遊戯研究」を開講したところ、そこに参加していた生徒から「授業だけではなく、部活動としてやりたい」と声が上がったのが、愛好会創設のそもそものきっかけだ。

初代会長で、高校3年生の小澤諒聖さんは「ボードゲームは初対面や年齢が離れた人とでも、みんなで楽しくやれるのが魅力だ。実際、中学1年生でもゲーム中は高校生と気後れせずに話している。経済の仕組みなどを体感的に理解したり、社会課題を疑似体験したりできるゲームもある」と魅力を語る。小澤さんは高校卒業後、海外の大学に進学する予定で、そこでもボードゲームを持参し、海外の人とのコミュニケーションツールとして活用するつもりだという。

ボードゲームの教育的意義
世界中で愛されているボードゲームの数々

こうしたボードゲーム部は、同校を含め都内に少なくとも6校あり、「東京都高等学校ボードゲーム連盟」に加盟して、大会や交流会を開催している。大会ではモノポリーなどの指定されたゲームで学校対抗の真剣勝負を行う。

現在、卓上遊戯愛好会の会長を務める同校2年生の梶山滉太さんは「ルールさえ覚えれば誰でもできるのがボードゲームだが、他校との試合では勝てないこともある。技術の向上が課題だが、どうやったら勝てるのか、まだみんなで探っている段階だ」と話す。

愛好会を大きくしていくことも、小澤さんから梶山さんたち後輩に託された大切なミッションだ。

まだ設立2年目ながら、中学1年生の新入部員が予想以上に多く加入し、現在は部員の半数を占めている。多くの部員が他の部活動を兼部し、上下関係もない敷居の低さやボードゲームの面白さがその要因のようだ。また、一昨年の文化祭では来場者に対してボードゲームの体験会を開くなど、ボードゲームの普及活動に余念がない。当面の目標は、こうした地道な活動実績が認められ、予算が付く同好会に昇格することだ。そうすれば、会として新たなボードゲームを購入することができ、活動の幅がさらに広がる。

「教員が引っ張るよりも、先輩から後輩に受け継いでいく自治的な活動に本質的な意義がある。ボードゲームはみんなが主体性を持って参加できる創造的な活動だ。部活動や学校教育へのポテンシャルは十分にあると思う」と岡崎教諭は期待を寄せる。

こうした「ボードゲーム部」をつくろうとする場合、ネックになるのが学校側の理解だ。

東京都高等学校ボードゲーム連盟会長で、中央大学杉並高等学校思考ゲーム研究会顧問の生田研一郎教諭は「ボードゲームは不確定要素がある中で状況判断し、意思決定することが求められる。将棋のように対戦後に感想戦をすれば、そうした一連の思考過程を振り返ることもできる。不確定要素が大きなウエイトを占めるという点は、他の部活動にはあまりない特徴で、これからの時代を生き抜くのに必要な力だ」と教育的な意義を強調。

「もしボードゲーム部の設立を考えているのであれば、気軽に連盟に相談してほしい。部活動として始めるためのさまざまなノウハウの蓄積もあるので、アドバイスができると思う」と呼び掛けた。

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