コロナ禍での変形労働時間制 小川特別部会長が疑問視

公立学校の教員を対象とした1年単位の変形労働時間制の導入を可能にする改正給特法が、今年4月から施行されるのに合わせ、北海道や徳島県など、一部の都道府県で今年度中に関連する条例を改正する動きが出ている。一方、新型コロナウイルスの影響で、学校の働き方改革は思うように進まず、国が指針で定めた月当たりの時間外勤務を45時間以内に収められない学校も多い。そんな中、中教審の「学校における働き方改革特別部会」で部会長を務めた小川正人放送大学教授は、教育新聞などの合同インタビューで、コロナ禍で変形労働時間制の導入を進める動きに対して「そんなに焦ってやることではない」と疑問を投げ掛けた。小川教授は、学校の働き方改革を巡る現状をどう見ているのか――。


教委や管理職の安全配慮義務の責任が強まる

インタビューは昨年末に、NPO法人「共育の杜」が主催し、複数の教育系メディアが参加。事前質問を取りまとめた上で、同法人の藤川伸治理事長が司会を務めた。

インタビューで変形労働時間制の議論を振り返る小川教授(Zoomで取材)

冒頭、小川教授は学校の働き方改革を進める学校現場での議論について触れ、「業務の効率化で周辺的、境界的な業務を減らすことで時間を捻出し、(その分)子供に向き合う時間を増やすことが本質というような言い方が学校現場でされているが、そういう捉え方は、実はおかしいのではないか」と疑問を投げ掛けた。その上で、中教審の答申の意図を「子供のためであれば、どんな長時間勤務も(いとわない)という考え方は、教師の使命感からくれば当然なのかもしれないが、それで教師が疲弊していけば、結局は子供のためにはならない。(答申は)これまでの日本の教師の働き方を見直して、教師の日々の生活の質や人生を豊かにすることであって、そのことがひいては効果的な教育活動につながっていくのだと考えるのが筋だ」と強調した。

さらに、教員の働き方改革を巡る法整備では、勤務時間の上限指針や変形労働時間制の導入を定めた改正給特法の成立と並行して、労働基準法や労働安全衛生法などの労働法についても改正された点を評価。労働者の健康被害の防止を目的に、管理職の安全配慮義務が強化されたことで、教員の過労死や長時間労働が問われる裁判などで、教育委員会や管理職の安全配慮義務違反が認定されるといった影響が出ると指摘した。

また、これまで教員の勤務時間を適正管理する慣習がなかった学校現場や教育委員会で、勤務時間の改ざんや虚偽、過少申告といった行為が横行すれば、教職員定数の改善などの取り組みにも支障が出ると警鐘を鳴らした。

変形労働時間制の導入は下からの手順が基本
変形労働時間制導入の前提条件

続いて小川教授は、変形労働時間制を導入することになった経緯に言及。小川教授の思いとして、「実質は、厳しい運用条件を伴う長期休業期間における5日間の休日のまとめ取り制度ということだ。1年を通じて繁忙期と閑散期を自由に調整するということではなく、夏休みを中心とした長期休業期間に5日間の休みを確実に取れる仕組みを現行法で考えてみたら、結局、1年単位の変形労働時間制の仕組みをつくるしかなかった。そのことをまずは理解していただきたい」と強調。1年単位の変形労働時間制に代わる制度のアイデアが考えられるならば、議論すべきだとする見解を示した。

その上で、国会での附帯決議などを反映し、変形労働時間制に対する懸念を払しょくするために、導入に当たっては、時間外勤務を月42時間、年320時間以内とすることをはじめ、厳しい前提条件が設けられており、5日間程度の休日のまとめ取りという目的以外のことは運用上できないようになっていると説明した。

さらに、コロナ禍で大半の学校現場がその前提条件を満たしていない実態を指摘。「まだ(変形労働時間制を導入できる)状況に至っていない自治体が多いので、都道府県は条例制定に対してかなり慎重に対応していると思うが、その中で北海道と徳島県(がなぜ条例整備を急いだのか)は疑問だ。そんなに焦ってやるようなことではないと思う」と述べた。

また、条例制定の手順について、「まずは学校ごとにいろいろ議論して、(勤務時間の条件をクリアできた状況で)学校現場がまずは手を挙げる。(それを受けて)市町村教育委員会が協議して、本当に各学校現場でそういう1年単位変形を入れるような条件があるのかどうか、前提条件がクリアされているかどうかをきちんと確認した上で、都道府県で条例をつくるという、下からの手順が基本だ」とも指摘した。

インタビューの全体は近日、「共育の杜」が運営する有料のオンラインサロンで公開される。

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