『教育格差』の松岡亮二准教授 「全員に教育投資を」

昨年ベストセラーとなった『教育格差』(ちくま新書)の著者で、教育社会学者の松岡亮二早稲田大学准教授がこのほど、埼玉県戸田市教委主催の「戸田市教育フェスティバル」に登壇し、「教育格差社会のなかの学校現場」というテーマで教員に向け、データに基づいて教育を変えていく重要性を語った。

データに基づき教育を議論する重要性を強調する松岡准教授

松岡准教授は講演の冒頭、教育社会学とは実証性を重んじ、データで現状把握を正確に行う学問だと説明。その上で、教育格差の定義とは、出身家庭や出身地域、性別で人生の可能性を制限されていることであると解説し、日本では、親の最終学歴や住んでいる地域、男女の違いによる格差が戦後から存在し続けていることを指摘した。

次に、埼玉県学力調査の結果などから、小学4年生の時点で確実に教育格差があり、学年が上がってもその差は縮まっていない傾向を提示。「差は縮まっていないが、一方で拡大もしていない。つまり、学校がなかったら格差は広がるということだ。学校教育は格差を縮められないが、拡大もしない」と、学校が果たしている役割を強調し、コロナ禍による一斉休校で、教育格差は確実に拡大すると警鐘を鳴らした。

教育現場に向けては、「今までと同じことをしていたら変わらない。派手な議論より、どうやったら子供たちの可能性を伸ばせるのか、実際に知見を集めて、この格差の傾きを変える努力をしないといけない。議論よりもデータが必要だ。意識的にデータで見て、変えていかなければいけないところに強烈に介入していかないと変わらない」と、データに基づいた政策決定の重要性を改めて強調。

さらに「日本は高校受験までにある程度、平等な機会を与えたという建前で、後は自助努力。その子のその後の可能性に投資をしなくなる。それでいいのだろうか。平均寿命が80歳や90歳という時代に、15歳で人生の可能性が決まってしまう。そういう社会を望むのか。それとも、もっと一人一人に機会を与えて、生産力を上げるようにするのか。全員に教育投資をする必要性があると思う」と問題提起した。

同フェスティバルは新型コロナ感染対策で、会場と市内各校をオンラインでつないで開催した。

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