虐待の疑いがある児童を、児童相談所で一時保護する手続きの課題について協議している、厚労省の検討会はこのほど、第5回会合をオンラインで開き、虐待の事実がないにもかかわらず、児相の判断で一時保護が長期化し、保護者と子供が離れ離れになってしまう「親子分離」のケースについて、当事者である保護者からヒアリングした。
児相の一時保護を巡っては、家庭で子供が事故や病気で意識を失った際に、SBS(揺さぶられっ子症候群)やAHT(虐待による頭部外傷)を疑われ、児相が子供を一時保護することを決定したものの、虐待の可能性が極めて低いにもかかわらず、手続きが進まずに一時保護の状態が継続され、問題のない家庭なのに子供と一緒に暮らせないケースがあると指摘されている。
この日のヒアリングでは、「SBS/AHTを考える家族の会」の菅家英昭さんが、子供が生後10カ月から2歳になるまで、1年以上にわたり一時保護が続いた経験を基に、児相の対応の問題点を指摘した。
菅家さんによれば、自宅で転倒して意識を失った子供は、入院先の病院からそのまま児相が一時保護することとなり、一時保護中の面会も週に1回1時間程度に制約され、納得のいく説明はなかったという。
菅家さんは「(子供の)けがの責任は私と妻にある。その負い目は消えない。しかしなぜ、引き離されなければならなかったのか。引き離されている間は罰を受けているようだった」と当時の苦しさを振り返った。
その上で、同じような苦しみを経験した当事者が多くおり、「これはまだまだ氷山の一角だ」と強調。「虐待を見逃さないという思いが強すぎて、事実に基づかない判断がされ、子供の最善の利益が守られていない。家庭に寄り添って、支援やケアに全力を尽くすのが児童福祉ではないか。虐待は防がなければならないが、家庭で育つことができる子供が引き離される犠牲はあってはならない」と訴えた。
この報告を受けて委員からは、一時保護の対応手続きについて、分かりやすい資料に基づき、保護者が丁寧な説明を受けることの重要性や、第三者を介して児相と保護者の話し合いを行う機会の可能性などについて、意見が出された。
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