中教審、答申を了承 「令和の日本型学校教育」打ち出す

中央教育審議会(中教審)は1月26日、総会(第127回会合)を開き、約1年9カ月間をかけた議論を通じ、今後の初等中等教育の方向性をまとめた答申「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して」を了承した。予測不可能な未来社会を自立的に生き、社会の形成に参画するための資質・能力の育成に向け、「個別最適な学び」と「協働的な学び」を一体的に充実させ、新学習指導要領が目指している「主体的・対話的で深い学び」の実現につなげるという、「令和の日本型学校教育」の理念を打ち出した。ICT活用については、学校教育に「必要不可欠」と位置付けた上で、教師に対して、子供たちの発達段階に応じ、対面指導と遠隔・オンライン教育の双方を使いこなす「ハイブリッド化」による指導の充実を求めた。

答申は、概要がA4判13ページ、本体は総論と各論を合わせて同92ページに及ぶ。副題は「~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~」とされた。

学校教育の意義を再定義 「個別最適な学び」と「協働的な学び」

答申の総論では、これからの子供たちはSociety5.0の到来や新型コロナウイルスの感染拡大など、予測困難な時代を生きていくことになると指摘。急激に変化する時代を生き抜くために、子供たちに育むべき資質・能力について、「一人一人の児童生徒が、自分のよさや可能性を認識するとともに、あらゆる他者を価値のある存在として尊重し、多様な人々と協働しながら様々な社会的変化を乗り越え、豊かな人生を切り拓き、持続可能な社会の創り手となることができるようにする」と説明した。

こうした資質・能力を育む教育を、2020年代を通じて実現すべき「令和の日本型学校教育」と命名。その構成要素として、「個別最適な学び」と「協働的な学び」の2つを挙げた。この2つの学びは対立する考え方ではなく、それぞれの学びを一体的に充実し「主体的・対話的で深い学び」の実現に向けた授業改善につなげる、と整理したことが答申全体を貫く特色となっている。

「個別最適な学び」は、指導の個別化と学習の個性化による「個に応じた指導」を学習者の視点から整理した概念と定義。この学びを進めるためには、「これまで以上に子供の成長やつまずき、悩みなどの理解に努め、個々の興味・関心・意欲等を踏まえてきめ細かく指導・支援することや、子供が自らの学習の状況を把握し、主体的に学習を調整することができるよう促していくことが求められる」と説明した。こうした個別最適化された環境に欠かせないのがICTの活用で、「学習履歴(スタディ・ログ)や生徒指導上のデータ、健康診断情報等を利活用することや、教師の負担を軽減することが重要」と指摘している。

一方、「協働的な学び」については、「個別最適な学び」が孤立した学びに陥らないようにするため、「探究的な学習や体験活動等を通じ、子供同士で、あるいは多様な他者と協働しながら、他者を価値ある存在として尊重し、様々な社会的な変化を乗り越え、持続可能な社会の創り手となることができるよう、必要な資質・能力を育成する」と説明している。

中教審の議論では、ICTを活用したオンライン教育の普及によって個別最適化学習が進むと、学校に通って集団活動を行う必要はないとする考えが社会的に広まることを懸念する意見が多く出された。このため、義務教育段階での学校教育の意義を定義し直す意味でも、国際的にも主流となってきている「個別最適な学び」に、集団活動を通して子供たちの知・徳・体を一体で育むという、従来の日本型学校教育を受け継いだ「協働的な学び」を組み合わせ、「令和の日本型学校教育」の理念として打ち出すことで、議論の落としどころを見いだす形になった。

対面とオンラインのハイブリッド指導 教員に求める

各論では、小学校高学年での専科教育を行う教科担任制の2022年度導入や、高校の普通科改革、特別支援教育の充実、外国人の子供たちに対する教育支援など多角的な項目が取り上げられた。その中で、学校教育におけるICT活用について、基本的な考え方を示している。

ICTについては、まず「これからの学校教育を支える基盤的なツールとして必要不可欠」と位置付け、GIGAスクール構想による1人1台端末の整備をはじめ「日常的に活用できる環境整備が必要」と明記した。同時に、ICTはあくまで教育のツールであり、「活用自体が目的化しないよう留意する必要」という、ただし書きも付けている。

その上で、答申が学校現場に期待しているのは、「対面指導と遠隔・オンライン教育とのハイブリッド化による指導の充実」だ。概要では「(子供たちの)発達の段階に応じ、ICTを活用しつつ、教師が対面指導と家庭や地域社会と連携した遠隔・オンライン教育とを使いこなす(ハイブリッド化)ことで、個別最適な学びと協働的な学びを展開」と説明している。

具体的には、▽ICTを「文房具」として自由な発想で活用できるようにし、授業改善に生かす▽学習履歴(スタディ・ログ)など教育データを活用した個別最適な学びの充実▽学校の授業時間内で、対面指導に加え、遠隔授業やオンデマンドの動画教材などを取り入れた授業モデルの展開–などを挙げている。不登校児童生徒、障害のある児童生徒、日本語指導が必要な児童生徒を支援するために、ICTを活用することも求めた。

学校現場に多くの注文が付いた答申の内容には、この日の総会でも委員から、学校現場への支援強化を求める意見も出た。橋本幸三・京都府教育長は「これを任される側の先生たちの立場に立つと、実行に相当な厳しさを感じられる方も多いのではないか。さまざまな支援がなければ、働き方改革にも逆行しかねず、改革の実現性にも影響する。そのためには教育委員会だけでなく、人的資源や物的資源を十分に供給することが国の役割になる」と述べた。

答申では、ICT活用に絡んだ学校現場への支援策として、GIGAスクールサポーターやICT支援員などのICT人材の確保、ICT研修の充実、外部人材の活用も含めた教育委員会へのICT専門家の配置、ICT活用教育アドバイザーの活用などを進める必要性を盛り込んでいる。

また、答申の最終ページでは、今後の重要な検討事項として、教員の人材確保、外部人材の活用など教育行政の推進体制が明記された。総会での議論でも、こうした積み残された課題への対応を求める意見が相次いだ。

加治佐哲也・兵庫教育大学長は「教員養成の現場では、学生の教職への志向が弱まっていることに、非常に強い危機感を持っている。学生だけでなく、民間の優秀な人材をもっと学校に引き入れていくべきだ。ハードルは高いと承知の上だが、教員の待遇改善にも踏み込んでほしい。これからの教師はICTを活用して、個別最適な学びと協働的な学びをクリエイトする仕事と位置付けられたのだから、これこそ高度専門職になる。その魅力を打ち出す方策を考える必要がある」と指摘した。

文科省では、この答申に先立ち、教員の人材確保と質の向上について「『令和の日本型学校教育』を担う教師の人材確保・質向上に関する検討本部」(本部長・萩生田光一文科相)を1月19日に設置し、部局横断で取り組む姿勢をみせている。

次のニュースを読む >

関連

あなたへのお薦め

 
特集