肢体不自由の子供をつなぐ 遠隔合同授業マッチングサイト

移動に困難が伴う肢体不自由の子供たちが、教室とさまざまな拠点を結んで行う遠隔合同授業の可能性が注目されている。肢体不自由の子供たちが在籍する筑波大学附属桐が丘特別支援学校(下山直人校長、児童生徒116人)では、肢体不自由の子供がいる特別支援学校同士での遠隔合同授業を活性化させるツールとして、参加した学校が授業内容や連絡先を登録できるマッチングサイトを開発。現在、参加校を募集している。同校にマッチングサイト開設の狙いを聞いた。

遠隔合同授業の相手探しが課題に

開発されたマッチングサイトの検索画面

同校が開発した「遠隔合同授業マッチングサイト」は、遠隔教育の効果的な活用方法を検討する文科省の「新時代の学びにおける先端技術導入実証研究事業」の一環で、昨年6月から開発をスタート。昨年12月14日から同校ホームページで公開されている。

もともと、全国の特別支援学校などとつなぎ、遠隔合同授業に長年取り組んできた同校だが、遠隔合同授業をやる際の最大のネックとなっていたのが、相手校探しだった。下山校長は「これまではポスターで募集するなどの地道な方法で相手先を開拓してきたが、限界があった。また、それでは同校と他校とのつながりはできても、他校同士を結び付けた網の目のようなネットワークにはならない」と説明する。

そうした課題意識から生まれたのが、このマッチングサイトだった。まず連絡先などの必要事項を登録すると、同校からIDとパスワードが送られ、利用開始できる。サイトでは、参加校の遠隔合同授業の予定を検索でき、授業目的や教育課程の類型、学年や教科領域・実施時期、接続方法などをチェック。もし希望する内容に合致する授業があれば、実施予定校に連絡をして、遠隔合同授業の実施に向けて学校同士で具体化させていくことになる。もちろん、自ら遠隔合同授業の計画を登録することも可能だ。

サイトの開発を担当した情報主任の齋藤豊教諭は「遠隔合同授業はさまざまな調整を行わなければならないことが、教員の負担感につながっている。それを少しでも軽減したい。将来的には、遠隔合同授業のデータベースとして機能させていきたい」と意気込む。

子供や教員のコミュニティーをつくる

このサイトは、肢体不自由の子供の多様なニーズに対応している点も画期的だ。

例えば、教育課程の類型では、小学校や中学校に準ずる場合だけでなく、児童生徒の習熟度に応じて、下学年の教科指導を行う場合や知的代替(知的障害特別支援学校の教科で教科指導を行う)、自立活動主(自立活動を主に指導する)など、子供の発達段階に応じた選択ができるようになっている。

また、目的の中には「交流の幅を広げたい」「話し相手になる同世代が欲しい」など、学習面だけでなく人間関係づくりも狙った活用を想定しているなど、肢体不自由の子供のニーズに合わせたさまざまな条件を備えている。

「学校同士がつながることで、障害のある子供たちが、同世代のコミュニティーをつくり、自分の障害を見つめるきかけになれば」と下山校長。また、実証研究事業の主任を務める田村裕子教諭は「多くの肢体不自由の教室では、教員と子供が1対1で、教授型の授業が行われている。そこに遠隔合同授業で新しい仲間が入ってくると、どうやって相手に伝わるかを工夫したり、学ぶ意欲が高まったりする。肢体不自由の子供を指導する教員にとっても、一緒に授業を考える仲間ができるので、授業改善につながるのでは」と期待を寄せる。

遠隔合同授業のハードルを下げる

桐が丘特別支援学校と全国各地を結んだ遠隔合同授業(同校提供)

このマッチングサイトが生まれた背景には、同校がこれまで取り組んできた遠隔合同授業の実践で確信した学びへの効果を、全国に広めたいという思いがある。

青森県八戸市にある県立八戸第一養護学校と理科の遠隔合同授業を行った齋藤教諭は「ちょうど授業で天気を取り上げたが、本校の子供が関東地方の特徴を青森の子供にも分かるように説明しようとすると、結果的に深く掘り下げることができたり、青森からは雪のことを教えてもらったりした。遠隔合同授業は大変だが、やってみないと実感できない良さがたくさんある」と振り返る。

田村教諭も「中学部で遠隔合同授業をやった後に、相手校の生徒から手紙が来て、SNSでつながったこともある。遠隔合同授業が、友人関係を広げるきっかけになっている」と話す。

同校では今年度中に、全国12校と遠隔合同授業を実施する計画で、2月4日と5日には、その成果を発表する「肢体不自由教育実践研究協議会」をオンラインで開く予定だ。

下山校長は「遠隔合同授業には、いろいろな可能性がある。その準備や意気込みのハードルを一段下げるのが、このマッチングサイトだ。ぜひ多くの学校に登録してほしい。学校がつながることそのものへのハードルが下がれば、今度は地域の学校とつながることにチャレンジしようとなる。そうなって初めて、インクルーシブ教育の実現に向けた素地が生まれる」と遠隔合同授業の先にある未来像を語る。

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