【初めての共通テスト(1)】 萩原全高長会長に聞く

コロナ禍という異例の状況で初実施を迎えた大学入学共通テスト。1月16~17日に行われた第1日程と1月30~31日に行われる第2日程とで、合わせて53万5245人が志願した。高校現場は、共通テストで出題された問題をどのように受け止めたのか。全国高等学校長協会(全高長)会長の萩原聡東京都立西高校校長に聞いた。

問題文をしっかり読めば正解にたどり着ける
――初めての共通テストの第1日程が終了しましたが、まずは率直な今の受け止めを教えてください。
多様な資料から考えを深める授業が求められていると指摘する萩原会長

地域によっては、新型コロナウイルスの緊急事態宣言が出ている中での実施となり、受験生は初めての共通テストであること以上に緊張していたと思います。今のところ、大きなトラブルもなかったようで、胸をなで下ろしています。

少し気になるのは、当日の受験率がこれまでの大学入試センター試験と比べてやや低い傾向にあること。つまり、当日欠席した受験生が例年より多かったとみられる点です。これは、体調不良などにより第2日程に回った受験生がいたこともあると思いますが、学校によっては、すでに学校推薦型選抜や総合型選抜で合格していても、共通テストを受けるように指導しているところもあると聞きます。しかし今回は、感染防止対策の観点から、そうした生徒は無理に共通テストを受験させなかったことが影響しているのかもしれません。

また、平均点の中間発表結果から、公民と理科②で得点調整が行われることになりました。平均点で20点以上の差が生じ、これが試験問題の難易差に基づくものと認められた場合、得点調整を行うことになっています。科目間の難易度調整の難しさを感じます。

――実際の共通テストの問題を見て、どのように感じましたか。

全体としてはセンター試験と変わらないマーク式ながらも、図表などの資料が多くなり、問題文の分量が全体的に増えました。限られた試験時間の中で、いかに問題文を素早く読み取るかがポイントになったと思います。英語のリーディング問題などはその典型です。

ただ、普段から本や新聞記事などの長い文章を読む習慣が身に付いている受験生にとっては、それほど負担に感じることはなかったのではないでしょうか。

また、例えば数学Ⅰ・Aの大問2では、陸上競技の100メートル走を題材にした問題が出ました。これまでのセンター試験では、こうした身近な事例を扱った問題はあまり見られなかったので、戸惑った受験生もいたかもしれませんが、これも、よく読んでいけば2次関数の基本的な問題だと分かります。このような身近な事例を取り上げた問題が、さまざまな教科・科目で散見されたのも特徴的でした。

問題そのものはセンター試験と比べて難しくなったという印象はなく、基本的に問題文をしっかり読んで考えれば、正解にたどり着けます。逆に言えば、消去法で答えるなどの裏技は通用せず、正攻法で取り組まなければならないわけで、受験生の本当の実力を測るという入試問題の原点に回帰したとも言えるかもしれません。

多様な資料を読み、考える授業へ転換を
――高校の授業も変わるでしょうか。

共通テストで問われたように、普段からいろいろな資料を並行して読んでいきながら、考えを深める授業が求められるようになるでしょう。教科書や参考書だけにとどまらず、関連するさまざまな情報を取り入れていく活動です。単に知識をインプットするだけでなく、例えば歴史であれば、なぜその事象が起こったのかを話し合いながら考えるといった学びをやっていく必要があります。

他の科目でも、Eメールや旅行の申し込みといった、生活に身近な題材や、複数の会話を聞きながら、内容を理解するといった問題も見られました。普段からこうした経験をしていると、問題を前にしたときにイメージしやすくなるでしょう。そういう体験を高校生活の中でどれだけ設けられるかもポイントになると感じました。

――共通テストの問題について、懸念されるようなことはありますか。

まだ第1日程が終わったばかりなので、第2日程を含めて分析をしっかりしていかないと議論できないと思いますが、もしも、問題文が多かったことによって、時間が足りなかったという受験生がかなりの割合になるとすれば、解答時間や問題文の在り方を考える必要があるかもしれません。

先ほども言ったように、普段から長い文章を読んだり、さまざまな資料に当たって考えたりしている受験生にとっては難しくなくても、そういう習慣がない受験生にとってはハードルが高かったかもしれません。その結果、受験生の得点分布が二極化するようなことになれば、ボリュームゾーンの受験生が識別でき、多くの受験生が取り組みやすい試験問題とするなどの見直しも必要となるでしょう。

ただ、そういった状況は最初の1回をやったに過ぎない現段階では判断材料が少なく、結論が出せるものではないので、当面の間、注意して見ていかなければいけない観点だと考えています。

――今後の大学入試や共通テストの論点は何でしょうか。

高校は2022年度から新学習指導要領下の教育課程が始まります。その最初の学年が受けることになる、25年に実施される共通テストについては、現在、出題教科・科目の検討が進められています。今年の夏ごろまでには、文科省から25年実施の共通テストに関する実施大綱が公表され、それを受けて各大学が入試に関する方針を決めることになります。そこは一つのポイントになるでしょう。

今回の共通テストで問われた力は、新学習指導要領で求められている力とも重なります。新学習指導要領を踏まえた授業改善に取り組む必要性が、今回の共通テストで改めて示されたとも言えます。知識だけでなく、さまざまな資料をしっかり読み解き、考えを深めることができる生徒を、日々の授業の中で育てていくことが、これからの高校現場には一層求められます。

次のニュースを読む >

関連