コロナ禍の障害者のコミュニケーション課題 改善策を提案

視覚や聴覚に障害のある人たちのコミュニケーションを体験できる施設を運営しているダイアローグ・ジャパン・ソサエティはこのほど、厚労省で記者会見し、現在の緊急事態宣言下で、聴覚障害者を対象に実施した生活実態調査の結果を公表した。会見では、聴覚や視覚に障害のある当事者が、日常生活やオンライン会議でのコミュニケーションの困りごとを話し、改善策を提案。学校の教員に向けたアドバイスも行った。

手話を交えてオンライン会議の新しい習慣を提案する松森さん

調査結果によると、現在の仕事や学習環境についての不便や不安が「ある」と回答したのは62%。また、オンライン会議やオンライン授業の普及によって、良かったことや改善されたことが「ある」と答えたのは68%だった。自由記述で具体的な利点を聞いたところ、資料の共有やチャット、メールによる文字情報の増加、通勤時のリスク軽減などが挙げられた。

逆に、不便を感じたことや困ったことが「あった」との答えも72%に上った。具体的には「相手に自分の話している内容が伝わっているのか分からない」や「発言のタイミングがつかめない」などがあった。

新しい生活様式への移行に関する、聴覚障害者の感じている不便や不安

また、新しい生活様式への移行に関する不便や不安では、表情や口の動きが分からない「マスクの着用」を挙げる人が80%に上った。

ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ理事で聴覚障害者の松森果林さんは「聴覚障害と一言で言っても、人によって違う。表情を意識し、アイコンタクトや大きな身ぶり、メリハリのある話し方をしてくれると通じやすい。マスクを着用していても伝わるコミュニケーションの仕方を共有してもらえれば、仕事や学びの選択肢を広げることになる」と指摘。オンライン会議では▽発言者は手を挙げる▽発言時には名前を言う▽発言は一人ずつ行う▽うなずきなどの反応を示す▽笑顔を意識する――の5点を習慣にすることを提案した。

同じく理事で、視覚障害者の大胡田誠さんは、緊急事態宣言の影響で、夜間に人出が少なくなり、信号待ちなどで視覚障害者を助けてくれる人が減ってしまっているという課題を紹介。「信号が変わるタイミングが分からず、周りに人がいないと、無人島で船が来るのを待つような気分になる。視覚障害者を見かけたら、ぜひ横から声を掛けてほしい」と話した。

学校現場に求めることについて聞かれると、松森さんは「子供自身が困っていることに気が付いていないこともある。先生は『大丈夫?』と丁寧に声をかけて、保護者と情報共有してほしい。給食は無言で食べている学校も多いと思うが、手話ならば飛沫(ひまつ)が広がる心配もない。ぜひこの機会に手話のような非言語コミュニケーションを学ぶのもいいのでは」と提案した。

大胡田さんは「先生は黒板に書いた字を口に出して読んでくれると助かる。それから、視覚障害者だからできないと決め付けないでほしい。GIGAスクール構想でパソコンを子供一人一人に支給することになれば、とても便利になるが、視覚障害者用のソフトウエアなども必要だ。専門的な知識を持った人が学校をサポートできるような体制を考えてほしい」とアドバイスした。

代表理事の志村季世恵さんは「国連の持続可能な開発目標(SDGs)が掲げる、誰一人取り残さない社会に向けて、今こそ行動に移すべきだ。障害があることを『かわいそう』と捉えるのではなく、どんな文化を持っているか、交換し、対話する時間が大事だ」と呼び掛けた。

同調査は1月21~25日にかけて、聴覚障害者を対象にインターネットで実施。会社員や学生ら111人が回答した。今回の調査は昨年の5月と10月の実施に続き3回目となる。

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