小中一貫教育を生かす対話の重要性 国研が講演会

国立教育政策研究所は2月10日、今年度の文教施設研究講演会をオンラインで開いた。小中一貫教育における学校建築をテーマに、国内外の専門家による講演や、小学校を統合して小中一貫教育を始めた長野県信濃町立信濃小中学校の事例発表が行われ、新しい学校づくりに向けて、教師や地域住民をはじめとしたさまざまなステークホルダーによる対話の重要性が指摘された。

小中一貫教育をきっかけとした学校づくりのポイントを話す長澤教授(Zoomで取材)

基調講演した学校建築研究の専門家である長澤悟東洋大学名誉教授は「学校の変革は『観』の問い直しだ。子供観や教育観、学校観について、当事者である教員や学校を支える保護者、地域、学校設置者、建築家など、多くの人が『観』を巡り議論を交わし、共有することからスタートする」と指摘。子供の9年間の成長を見通して、地域の実情に合わせた独自の教育活動を明確にし、その学びを実現するためのさまざまな空間のイメージを、関係者の対話によって生み出すことの重要性を語った。

また、オーストラリアの大手設計会社「Hayball」で、学校の新設に関するプロジェクトを担当するキット・クー氏は、新しい学校施設の設計において「共創(Co-creation)」を重視していることを強調し、建築家が教員や保護者、子供たちをはじめ、学校に関わるさまざまなステークホルダーとオープンな対話を繰り返しながら、新しい学校に向けた課題の認識やビジョンの共有を進め、施設が完成した後も支援し続ける一連のプロセスを紹介した。

クー氏は「設計が教育を主導することがあってはならない。共創は学校のユニークな文化や教育の状況を理解し、特定のニーズに合わせるヒントになる。新しい学習空間に教師を関与させるのは、教育的なイニシアチブを獲得するために必要だ」と話した。

後半では、国内の事例として、少子化や既存の小学校の校舎の老朽化を受けて、2012年度に小中一貫校として開校した信濃小中学校について、当時の関係者らが登壇。地域住民と時間をかけて学校統合の必要性について懇談し、統合が決まった後も「学校づくり委員会」を設置して、地域が一体となって新しい学校の在り方を議論したことを紹介した。

同校の開校を支援した伏木久始(ひさし)信州大学学術研究院・教育学系教授は、小中一貫教育を進めるにあたり、当時まだ珍しかった校務支援システムを導入したことを挙げ、文化の違う小学校の教員と中学校の教員の意識を変えていく働き掛けの重要性を、学校運営のポイントに挙げた。

「単に小学校と中学校が同居すれば、小中一貫校になるわけではない。教師のマインドを一貫教育になじませることが絶対条件だ。既存の仕事を見直す中で、小学校の教師は中学校の生徒や教師のことを考えざるを得ない。中学校の教師は小学校の児童や授業に刺激を受ける。ハードとソフトの両面で一貫教育を推進していった」と振り返った。

次のニュースを読む >

関連