高校での頭髪指導の違法性認めず 大阪地裁判決に賛否両論

本来の髪の色が黒ではないにもかかわらず、髪を黒く染めるよう強く指導されたことが原因で不登校になったとして、大阪府立高校に通っていた女子生徒が損害賠償を求めた裁判で、大阪地裁は2月16日に府に対して33万円の賠償を命じる一方で、頭髪指導の違法性は認めなかった。いわゆる「ブラック校則」が注目されるきっかけとなった裁判で、原告側の実質的な敗訴となった判決に対し、この問題を取り上げてきた有識者からは疑問の声が上がった。

「茶髪はだめ」は必要な指導の範囲

2015年に府立懐風館高校に入学した女子生徒は、生まれつき髪の毛の色が茶色であったが、教員から髪を黒く染めるよう何度も指導を受け、それが原因で不登校となったと主張。約220万円の慰謝料を求めて府を訴えた。

判決では、不登校になった生徒が3年生のときに、学校側がクラス名簿から生徒の名前を削除したことについては違法と判断したものの、髪を黒く染めるよう求めた頭髪指導については、教員が女子生徒の地毛が黒であると認識していたとして、違法とまでは言えないと結論付けた。

また、髪を染めることを禁止した校則についても、学校の正当な教育目的で定められた合理的なものであるとした。

判決を受けて、同日の記者会見で吉村洋文府知事は「名簿から削除したというのは絶対に間違っていると思うし、これについては当初から不適切だと教育長から学校に指導もしている。ここについて違法性が認められたということであれば、その通りだ。そこに不服はない」とした。

一方で、髪を染める校則の存在については「地毛が茶髪の人を校則で黒髪にせよというのは反対だ。しかし、学校での教育指導のために、黒髪を茶髪にしたときに『茶髪はだめだ』と指導するのは、学校によっては必要な教育的観点での指導の範囲内だと思っている」と、学校での指導の必要性を認める見解を示した。

府教委は、クラス名簿に生徒の名前を載せなかったことは適切ではなかったとして、控訴しない方針。

黒染め指導は合理的と言えるのか?

この裁判をきっかけに、「髪は黒でなければならない」「下着の色を指定する」などの校則が、生徒の人権を侵害しているという批判が巻き起こった。

ブラック校則問題に詳しい教育社会学者の内田良名古屋大学准教授は「髪染めの禁止を含めて、学校側の言い分が通った。判決文では、事実認定された生徒と学校の頭髪指導を巡るやり取りが10ページにわたって書かれていた。まさにそれは生徒の戦いの歴史だった。生徒の視点で今回の判決文を読むと、とても悲しくなる。頭髪指導さえなければ、生徒は不登校にならなかったし、生徒の言動は誰も困らせていない。子供にとって学校が居づらい場所になっている。学校はこんなことを続けていていいのだろうか」と疑問を投げ掛けた。

2018年にインターネットによる校則の大規模実態調査を行った「『ブラック校則をなくそう!』プロジェクト」発起人の渡辺由美子キッズドア理事長は2月17日、判決に「失望と恐れを感じます」とのコメントを発表。「この裁判で重要な点は、『髪の染色や脱色を禁止した校則』の是非ではありません。『頭髪指導』の違法性でもありません。地毛が茶色いのに、校則をたてに黒染めを強要する『体罰』があったかどうかの事実認定を行って欲しかったと思います。なぜなら、この子だけでなく、日本全国で同じように地毛の黒染め強要に苦しむ子どもがたくさんいるからです」と、学校側の頭髪指導の問題に踏み込まなかった点を強く批判した。

同プロジェクト発起人の須永祐慈ストップいじめ!ナビ副代表は「学校側の主張がかなり採用されており、原告としては実質的に敗訴と言える。頭髪指導によって生徒が精神的に追い詰められたことや、学校としての指導の在り方、教師と生徒との信頼関係、学びの保障などで学校の責任はなかったのか、もっと争点になってよかったのではないか。問題となった校則は、社会通念に照らして合理的だとされたが、ここ数年の校則に対する世論の関心の高まりや、各地での見直しに向けた動きなどを踏まえれば、社会通念は変わりつつあると言える」と指摘。

「この裁判の結果、校則による指導の厳しい学校で、それがより強化される恐れがある。それでさらに被害を受ける子供が出れば、社会的不利益の出る判断だ」と懸念を述べた。

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