1社しか知らない高校就活のわな 早期離職との関連を指摘

高校のキャリア教育の違いが、生徒の卒業後の働き方を大きく左右しているかもしれない――。リクルートワークス研究所がこのほど公表した大規模調査「高校生の就職とキャリア」では、高校における1社しか受けない・知らないという就職指導が、早期離職につながる要因になることが示された。雇用や働き方がダイナミックに変わりつつある中で、高校のキャリア教育はこのままでいいのか。調査のプロジェクトリーダーを務めた古屋星斗(しょうと)氏に調査で浮き彫りとなった課題を聞いた。

2、3社を比べることで早期離職を回避

高校卒業後に就職する場合、生徒が学校推薦を受け、ほぼ確実に内定を得られる「1人1社制」の慣行が根強く残っているため、就職率はほぼ100%に近い。しかし今回の調査では、就職後半年以内に離職している人が10.7%、1年以内では17.2%もいることが明らかとなった。就職内定率がほぼ100%であることとは裏腹に、こうしたミスマッチが起こっている実態が浮かび上がってきた。

その原因として考えられるのは、「1人1社制」に依存する高校側の課題だ。調査結果によると、就職活動にあたり「1社だけを調べ見て、1社だけを受けて、1社に内定した人」は55.4%と半数を超える。

就職活動の際の情報量別早期離職率(リクルートワークス研究所調べ)

そして、就職の際の情報が「不十分」と捉えている人のうち、47.9%が最初に就職した会社の評価に「0点」を付け、半年以内の離職率も13.3%だった。その一方で、「十分」と答えた人で「0点」を付けたのは11.9%で、半年以内の離職率も8.4%と低くなっていた。

さらに、就職で調べた企業数が「1社以下」と「2、3社」で、入社後のギャップに大きな差があることも分かった。

古屋さんは「就職活動で1社しか知らない状態は明らかにマイナスの影響があるが、だからといって大学生のように何十社も見比べる必要はない。同じ業種や生徒の希望に合う企業を2、3社比較できれば、仕事へのイメージを明確に持つことができる」と強調。その一方で「生徒に任せきりだったり、進学に重点が置かれ、就職には力を入れていなかったりすると、この『1社しか知らない状態』に陥ってしまいかねない」と危惧する。

高校間のキャリア教育格差

高校を対象にした調査では、企業との連携が思うように進んでいない実態が明らかとなった。

企業との連携内容(リクルートワークス研究所調べ)

キャリア教育・就職指導の内容のうち「働く意欲を高める」「将来の選択肢を広げる」「学んだことがどのように仕事につながるかを知る」「専門分野の職業について理解を深める」「幅広い職業について理解を深める」は「外部の協力機関と一緒にやりたい」と答えた高校の割合が6割以上を占めるなど、仕事の内容を中心に外部連携を望んでいる声が多かった。

一方、実際の起業との連携を見てみると、インターンシップの受け入れや企業人の講話をやっていると答えた学校は半数程度だったものの、キャリア教育プログラムの運営やカリキュラムの共同開発は9割以上の高校で行われていなかった。

古屋さんは「年に1回だけの講話やインターンシップだけをもって『キャリア教育』としている高校と、外部人材が伴走しながらPBLによる『キャリア教育』を実施している高校では、同じ『キャリア教育』でも格差がある。1年生の段階から助走を始めて、3年生でしっかり比べて選べることが理想だ」と高校のキャリア教育をアップデートする必要性を強調。

「日本では何でも学校にやらせるような文化があるが、全てを内製化する必要はない。一方で、個々の生徒のことをよく分かっているのは教師。生徒に合わせて外部の人材やリソースをファシリテートする新しい役割が求められている」と、高校のキャリア教育の役割分担を提案した。

成長や学び直しに前向きな意識

調査結果では、就職を希望する高校生のイメージを大きく変えるデータも示された。高校卒業後に就職すると聞くと「勉強が嫌いだから」や「家庭の事情」などが語られがちだが、実際に高校卒業後に就職した人にその理由を聞くと、最も多いのは「早期自立・成長のため」で44.7%。「家庭的理由のため」(20.0%)や「学業回避のため」(21.3%)は2割程度で、決してマジョリティーではないことが分かる。

また、高校で就職した人のうち、32.3%は「機会があれば大学院・大学や専門学校などで学び直したい」と回答した。

調査を行った古屋さん(昨年4月2日撮影)

古屋さんは「高校卒業後に就職する動機は半数近くが前向きなものだった。勉強したくないから就職しているという認識は間違いだ」と指摘。「社会に出て学び直したいという人をしっかり支援できれば、人材の質をさらに高められるということでもある。そもそも、何歳になっても学びたい人が通うのが大学の本来の姿だ」とリカレント教育の充実も課題に挙げた。

同調査は昨年9月に、高校卒業後に就職した約4000人にインターネットで聞いた「当事者調査」と、同じく昨年9月に5人以上の生徒が就職する高校に質問紙を郵送し、317校から回答を得た「学校調査」、昨年10~11月に従業員5人以上の民間企業約4500社から回答を得た「企業調査」で構成。サンプルサイズや当事者、学校、企業に横断的に実施した調査としては、過去に類例のない稀少なデータとなっている。

調査リポートは同研究所のホームページで公開されている。

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