プログラミング教育をつなぐ 中学校技術分野の魅力と課題

小学校でのプログラミング教育の導入や大学入学共通テストでの「情報」出題の検討など、日本の情報教育が今、バージョンアップを迎えている。中でも中学校技術・家庭科の「技術分野」は、小学校と高校の情報教育をつなぐ重要な役割を担っているが、小学校や高校に比べると、あまり注目されていない。4月からの中学校新学習指導要領の全面実施を前に、日本産業技術教育学会(JSTE)会長の村松浩幸信州大学教授に、中学校における情報教育の魅力と課題を聞いた。


強固なセキュリティー設定が授業の足かせに
――いよいよ4月から中学校の新学習指導要領がスタートします。技術分野では、情報教育のウエートがより大きくなりますね。
日本産業技術教育学会会長の村松教授(村松教授提供)

技術分野では、もともとプログラミングによる計測・制御やデジタル作品の制作などの情報教育に取り組んできましたが、新学習指導要領では、ネットワークを使用した双方向性のあるコンテンツをプログラミングによって問題解決したり、情報セキュリティーに関わる情報技術の基礎的な仕組みを学んだりといった、内容の充実が図られています。

これを受けてJSTEでは、全日本中学校技術・家庭科研究会と全国中学校産業教育教材振興協会の協力を得て、昨年10~12月に、全国の1282校に技術分野における「情報の技術」の実態調査を行いました。その結果、これまでは計測・制御の教材としてはロボットカーが一般的だったのですが、それ以外にも、信号機や家電模型など、生活や社会と関連付けた題材を扱っていたり、校内掲示板や校内ウェブページを制作したりするなど、新学習指導要領を意識した取り組みが一定数見られました。

一方で課題も山積しています。4割弱の学校では、学校のセキュリティーレベルが厳しすぎて、実習などに支障が生じていました。ソフトウエアをインストールする場合も、8割の学校で教育委員会の権限が必要でした。セキュリティーの確保は大事なことですが、それにより実践に支障が出るのは考えものです。

また、技術分野は授業時数が少なく、3年生になると週1時間もありません。技術を担当する教員は多くの学校で1人だけで、免許外教科担任の割合も他教科に比べると多いのが実態です。これは大きな課題です

「情報の技術」の実施上の課題(JSTEの調査を基に作成)

教員の養成や指導力向上に関して、JSTEでは、文科省で実践事例集や教員向け研修資料の作成事業を受託し、現在進めています。また、技術の教員志望者向けに「技術科指導能力認定試験」をこれまでも実施してきたのですが、これをオンライン化して、教員採用試験を想定した例題なども充実させていきたいと考えています。教員志望者や新たに技術の免許を取得しようとしている教員に、ぜひ参考にしてもらいたいと思います。

技術の教員が小学校のプログラミングを教える
――小学校でプログラミングを学んだ子供たちが中学校に上がってきます。そうなると、プログラミングの内容はより高度になるのではないでしょうか。

私は、例えば「小学校でビジュアル型プログラミング言語でやってきたのだから、中学校ではテキスト型の言語に挑戦すべきだ」といった、技術的な面での高度化もさることながら、課題設定を高度化することの方がより重要だと考えています。

中学校では、生活や社会の中に題材を設定し、技術による問題解決に取り組ませる。そして、高校の情報科では、さらに社会実装を意識したり、データサイエンスとの関連を深めていく。そんなように、問題解決型の課題自体を高度化していくことが重要になります。

そうなると、小学校や高校との連携は今まで以上に意識しなければなりません。例えば、小学校のプログラミングの授業を、近隣にある中学校の技術の教員が教えられるような仕組みができないかと考えています。

また、JSTEは共通テストでの情報科の出題についても、先日、大学入試センターに提言しました。円滑な実施のためには、高校の段階だけでなく、中学校や小学校の段階からの情報教育を充実していかなければなりません。高校の情報科と技術科の免許外教科担任の解消は不可欠ですし、技術の授業時間数の増加も必要です。この点も強く訴えています。

STEAM教育のTとEは技術の本丸
――3年生で週に1時間もないという状況では、内容の濃い実習もできませんね。

どの教科もそうですが、特に技術分野は授業時間数の割にやる内容が多く、カリキュラムオーバーロードを起こしています。ただ、授業時間数を増やすのは次の学習指導要領の改訂まで待たなければなりません。しかし、生活や社会に身近な問題解決は他教科にも共通するテーマです。各学校でカリキュラム・マネジメントをしていきながら、「総合的な学習の時間」や他教科との連携をしていく必要があります。

今、STEAM教育が注目を集めていますが、このうちのTechnologyとEngineeringはまさに技術で扱う学習の本丸です。もっと中学校の技術を意識したSTEAM教育が展開されてもいいのではないかと思います。

オンラインの活用でものづくり教育の可能性広がる
――中学校でも、GIGAスクール構想により、1人1台環境が実現します。

GIGAスクール構想では、1人1台の端末の導入も大きいですが、同時に学校のネットワーク環境も改善されるはずです。使い勝手の悪い状態は、ぜひ改善してほしいと思います。

このコロナ禍で、オンライン授業が一気に普及しました。信州大学では、ものづくりやプログラミング、理科に興味のある長野県内在住の小学5年生~中学3年生を対象に、実験や実習を体験したり、プロジェクトに取り組んでもらったりする「ジュニアドクター育成塾」をやっているのですが、今年度はコロナ禍ということもあり、オンラインでの開催がメインとなりました。

しかし、それによって、これまで会場から遠くて、保護者の送迎の負担から二の足を踏んでいた子供も参加できるようになりました。家庭にネット環境さえあれば、プログラミングの内容などは、オンラインでも十分学ぶことができます。企業や大学が協力して、子供たちの学びにとことん付き合うこともやりやすくなりました。

こうした成果を、これからは学校現場に積極的に還元していきたいと思っています。

新学習指導要領の情報教育では、小学校のプログラミング教育や高校の情報科だけでなく、中学校の技術も熱い。ぜひどんな実践が行われているか、大いに注目してほしいです。JSTEとしても積極的に情報発信をしていきたいと思います。

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