部活動の地域移行を巡り、文化庁の調査研究事業を受託した三菱総合研究所は3月3日、文化部活動の地域展開の方向性について関係者らが話し合うオンライン座談会を開催した。同研究所が実施した調査では、部活動の地域展開は中学校の約半数で検討が進んでおり、自治体からは地域振興への期待が大きいことが示された。

同研究所が昨年10月14日~11月30日に、全国の市区町村教委や都道府県・市区町村の文化振興を所管する部署に対して、部活動の課題についてアンケートを行ったところ、中学校の部活動で地域に移行する取り組みをすでに実施しているのは9.7%、現在は実施していないが、検討しているのは47.5%の自治体に上った。
さらに、文化部活動の地域移行に期待する効果では、教職員の負担軽減や児童生徒の選択肢拡大が高かったことに加え、特に自治体の文化振興を所管する部署からは、地域の文化力の維持・向上や、文化活動を起点とした世代間交流・地域振興などへの期待が高い結果となった。
また、好事例の紹介では、静岡県掛川市で「地域部活・掛川未来創造部palette」を展開する日本地域部活動文化部推進本部の齊藤勇理事長が、市内のさまざまな中学校から希望する生徒が集まって、演劇やダンスなどの多様な表現活動を行う取り組みについて発表した。paletteは2020年度から学校の部活動と同じ位置付けとして学校説明会などで紹介されるようになり、現在は市内7校から40人以上の中学生が参加。同本部では、近隣の藤枝市などでも、文化部の地域展開の支援に乗り出すなど、活動が徐々に広がっている。
齊藤理事長は「個々の部員の興味関心や特技で活動内容が変わるので、毎年ゼロベースで活動を考えている。活動は平日週2回で、週末は不定期だ。発表前の詰め込み練習や集中練習は絶対にしない。このようにコンパクトにすることで、他の地域の活動や運動部にも通うことができる」と話し、部活動を地域展開することで、個別最適な学びや協働的な学びができると強調した。
続くパネルディスカッションでは、文化部活動に関わる有識者らが登壇し、地域展開の課題について意見交換した。
文化庁の「文化部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」の作成検討会議で座長を務めた長沼豊学習院大学教授は、部活動を学校から地域に軸を移していく手順として、まずは合同部活動や拠点校方式から始め、放課後に子供が学校の外に移動することから始めながら、意識を変えていくことを提案。
「地域での部活動は、ぜひ目的別でやってほしい。同じ合唱部でも、コンクールや大会を目指すところもあれば、趣味や異年齢交流を重視したところがあってもいい。目的別にすることで、多様なニーズに応えることができる」と呼び掛けた。
教育研究家、学校業務改善アドバイザーで、本紙「オピニオン」執筆者の妹尾昌俊氏は「部活動の地域移行は、教員の負担軽減のためだけなのかは、よくよく考えないと成否に関わる」と指摘。教員の負担軽減だけでなく、専門的な指導を受けられる、選択肢が広がるといった子供への好影響や地域振興など、多様なメリットがあることを、教員や保護者、地域などに理解してもらう必要性があるとした。
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