教員の養成・採用・研修「大胆に検討」 文科相が所信

萩生田光一文科相は3月5日、衆議院文科委員会で、教育政策の当面の方針について、所信を明らかにした。現在の学校教育システムが、情報化の進展など社会構造の変化に対応できていないとの指摘があることに触れ、「ICTの活用と少人数学級を車の両輪」として「『令和の日本型学校教育』の構築を目指す幕開けの年にすることを強く決意している」と強調。「新しい学校教育の実現に向けては、教育の質を支える教師の力が何よりも重要」と指摘した上で、教員の養成・採用・研修について「基本的な在り方にまでさかのぼって、大胆に検討を進める」と表明した。

衆議院文科委員会で所信を表明する萩生田文科相

萩生田文科相はまず、現在の学校教育システムについて、子供たちの知・徳・体を一体で育む「日本型学校教育」が「全ての子供たちに一定水準の教育を保障する平等性や全人教育という面で成果を上げてきた」と評価とした一方、「情報化の加速度的な進展への対応の遅れなど、近年の社会構造の変化や社会の多様化に必ずしも対応できていないのではないか、との指摘もある」と課題があることを確認。「その克服に努力することが重要」と述べた。

GIGAスクール構想の大幅な前倒しによって、4月からは全国の小中学校で1人1台端末環境が整い、「『GIGAスクール元年』を迎える」と強調。「約40年ぶりの改正となる小学校『35人学級』の段階的実施」や「新しい時代の学びにも対応した施設環境の整備」など、教育政策の取り組み状況を説明した。

これに続けて「こうした改革を何としても前に進め、ICTの活用と少人数学級を車の両輪として、新学習指導要領の着実な実施と相まって、全ての子供たちの可能性を引き出す個別最適な学びと協働的な学びの実現のため、『令和の日本型学校教育』の構築を目指す幕開けの年にすることを、強く決意している」と意気込みを見せた。

その上で、萩生田文科相は、教員の人材確保と質向上について「新しい学校教育の実現に向けては、教育の質を支える教師の力が何よりも重要」と言及。当面の取り組みとして、文科省内に設置した検討本部で、「35人学級」を担う教員の確保や社会人ら外部人材の活用に向けた施策を取りまとめ、「スピード感をもって実施する」と説明した。

中長期的にも実効性のある方策に取り組んでいく姿勢を示し、教員の養成・採用・研修について「基本的な在り方にまでさかのぼって、大胆に検討を進める」と、抜本的な改革を進める考えを強調。学校の働き方改革に関連して「学校が大変な職場というイメージを払拭(ふっしょく)し、教師が再び子供たちの憧れの職業となるよう、私が自ら先頭に立って全力を尽くす」と言明した。

教員に関わる制度改革について、萩生田文科相は2月2日の記者会見で、教員免許更新制の見直しについて「スピード感を持って取り組みを具体化していきたい。本気で取り組む」と述べるなど、積極的に取り組む意欲を繰り返し表明している。

この日の所信の説明は約18分かけて行われた。衆議院文科委員会では、3月10日から文教政策を巡る本格的な国会審議が始まる。

萩生田光一文科相が衆議院文科委員会で説明した所信

※教育関連部分の抜粋。テーマ別のタイトルは教育新聞が追加した。

【総論】

先月13日に福島県沖を震源とする地震で被災された方々に心よりお見舞いを申し上げますとともに、新型コロナウイルス感染症により貴い命を落とされた方々に、心から衰悼の意を表します

そして、学校現場における感染症対策に尽力されている教職員の皆様、入学試験に臨む若者たちのために万全の対策を講じていただいた関係者の皆様、大学病院において感染症患者の治療に携わっておられる医療スタッフの皆様、スポーツ・文化芸術活動における感染症対策に尽力されている関係者の皆様、さらに感染症対策に貢献しうる研究開発に取り組んでおられる研究者の皆様など、全ての関係者の方々に、改めて敬意を表したいと思います。私自身、真に国の礎とも言える文部科学行政を預かる責任者として、これらの分野の歩みを決して止めてはいけない、そうした決意で取り組みます。

前文部科学副大臣の不適切な行動により、文部科学行政に対する信頼を損ねる事態となりました。国民の皆様にお詫び申し上げますとともに、今後とも感染症対策をはじめとする諸課題にしっかりと取り組み、信頼国復に努めてまいる所存です。

【令和の日本型学校教育/GIGAスクール構想/35人学級】

子供たちの知・徳・体を一体で育む、いわゆる「日本型学校教育」は、全ての子供たちに一定水準の教育を保障する平等性や全人教育という面で成果を上げ、諸外国からも高い評価を受けています。

他方、情報化の加速度的な進展への対応の遅れなど、近年の社会構造の変化や社会の多様化に現在の学校教育システムが必ずしも対応できていないのではないか、との指摘もあります。こうした指摘にしっかりと向き合い、その克服に努力することが重要であり、教育再生実行会議においても、新たな学びの在り方についての具体的な検討を進めています。

GIGAスクール構想を大幅に前倒し、本年4月からは全国の児童生徒が1人1台端末環境での学びをスタートします。「GIGAスクール元年」を迎えるに当たり、民間事業者に対して学校支援に向けた協力を要請しているほか、教育現場に寄り添い、安全?安心な利活用に向けた支援が必要だと考えています。また、約40年ぶりの改正となる小学校「35人学級」の本年4月からの段階的実施に向けて、令和3年度政府予算案及び関連法案を今国会に提出しているところです。さらには、子供たちの学習・生活の場であり、災害時には避難所となる学校の安全・安心の確保に加え、新しい時代の学びにも対応した施設環境の整備が重要です。

私は文部科学大臣として、こうした改革を何としても前に進め、ICTの活用と少人数学級を車の両輪として、新学習指導要領の着実な実施と相まって、全ての子供たちの可能性を引き出す個別最適な学びと協働的な学びの実現のため、「令和の日本型学校教育」の構築を目指す幕開けの年にすることを、強く決意しているところです。

【教員の人材確保と質向上】

新しい学校教育の実現に向けては、教育の質を支える教師の力が何よりも重要です。

このため、本年1月、私の下に「『令和の日本型学校教育』を担う教師の人材確保・質向上に関する検討本部」を設置し、「35人学級」を担う教師の確保や社会人等多様な人材の活用等に関する施策を取りまとめました。まずはこれらの施策を、スピード感をもって実施するとともに、今後、教師の人材確保と質向上の両面から、中長期的な実効性のある方策に取り組み、教師の養成・採用・研修等について、基本的な在り方にまでさかのぼって大胆に検討を進めてまいります。

【わいせつ教員対策】

児童生徒等に対してわいせつ行為を行った教師への厳正な対応については、いまだ乗り越えられない法制上の課題があり、今国会に法案を提出できる状況には至りませんでしたが、引き続き、考えられる限りの実効性ある手だてを、関係省庁との連携も行いながら講じてまいります

【児童生徒の自殺者数の増加】

児童生徒の自殺者数が増加している現状を踏まえ、児童生徒の自殺予防の効果的な取り組みの推進、いじめや不登校への対応にも取り組んでまいります。

【働き方改革】

学校の働き方改革も重要な課題です。コロナ禍によって過去に例のない対応を余儀なくされている学校現場をしっかり支えながら、この改革をしっかりと前に進めてまいります。学校が大変な職場というイメージを払拭し、教師が再び子供たちの憧れの職業となるよう、私が自ら先頭に立って全力を尽くしてまいります。

【大学入試改革】

本年1月、第1回目となる大学入学共通テストが実施され、感染症対策も含め、おおむね無事に終了することができました。これら令和3年度入試の実施状況や、英語4技能、思考力・判断力・表現力を適切に評価することの重要性を踏まえた上で、今後の大学入試の在り方について、受験生をはじめとする国民の皆様に納得いただける制度を目指して、引き続き検討を進め、本年夏前には成案を得てまいります。

【大学のオンライン授業と対面授業】

大学においては、学びを止めないための工夫としてオンライン授業が大きく広がりました。教育環境のデジタル化の取り組みは必要ですが、大学教育はオンライン授業だけで完結するものではありません。各大学において、感染拡大の防止策を講じた上で、対面による授業の機会を積極的に検討いただくよう、引き続き働き掛けていくとともに、オンライン授業と対面授業の双方の利点を生かした大学教育の在り方についても、教育再生実行会議等における検討を進めてまいります。

【高等教育機関の改革】

我が国の高等教育機関が、人材育成とイノベーション創出の基盤としての使命を果たすことができるよう、改革を進めていく必要があります。先般、大学ファンドの創設に関する法案を御可決いただきましたが、数理・データサイエンス・AIなどの成長分野や分野横断的な教育研究の展開、グローバル化の推進、専門職大学や専修学校における地域のニーズや成長分野等を踏まえた質の高い専門職業人の育成、リカレント教育を含む多様な学生の受入れ、多様で柔軟な教育研究体制の構築、複数の大学の強みや特色を生かした連携協力の推進などについても着実に取り組みを進めてまいります。

国立大学は、社会変革を先導し、社会や地域から支えられる存在になることが求められています。そうした期待に応えられるよう、令和4年度から始まる第4期中期目標期間に向けて、ガバナンスの見直しや経営の裁量拡大を図るための制度改革を行うため、今国会に法案を提出しているところです。

【大学病院】

新型コロナウイルス感染症拡大という状況において、大学病院は我が国の地域医療の最後の砦(とりで)として大変重要な役割を果たしています。引き続き、現状に即した医療による貢献を果たすとともに、今回の経験を踏まえ、感染症分野の高度な知識を身に付けた人材養成の強化も図ってまいります。

【高等専門学校の振興】

高等専門学校は、産業界や諸外国から高い評価を受け、これまで我が国の産業界を支える大きな役割を果たしてきました。今後とも、機能の高度化、海外展開と国際化の一体的推進、地域の人材ニーズを踏まえた取り組みの促進など、その振興に努めてまいります。

【教育の負担軽減】

家庭の経済事情にかかわらず、誰もが質の高い教育を受けられるようにすることは大変重要です。幼児期から高等教育段階まで、切れ目ない形での教育の無償化・負担軽減を着実に実施するとともに、コロナ禍においても学びの機会が奪われることがないよう、必要な支援措置を講じ、その十分な周知に努めてまいります。

【就職対策】

コロナ禍の影響により意欲や能力のある若者の就職機会が奪われることがないよう、経済界における新卒扱いの柔軟化などに向け、関係省庁で連携して取り組んでまいります。

【特別支援教育の充実】

障害者が一生を通じて自らの可能性を追求できるよう、支援に係る環境の整備が必要です。医療的ケアを含め、特別な支援を必要とする子供が増加している状況を踏まえつつ、福祉部局等と連携した切れ目ない支援体制の構築や特別支援教育の充実を図るとともに、障害者の生涯にわたる多様な学習活動の充実に取り組んでまいります。

【地域と学校の連携/家庭教育の支援】

子供たちの成長を社会が一体となって支えていけるよう、地域と学校の連携推進、家庭教育の支援などにしっかりと取り組んでまいります。

【外国人児童生徒への対応】

さらに、在外教育施設の機能強化、外国人児童生徒等の就学促進や教育、外国人に対する日本語教育の充実等を進めてまいります。

【東日本大震災の復興加速化】

まもなく東日本大震災から10年を迎えます。復興の総仕上げに向けて、今後も引き続き、就学支援や心のケア、学校再開への支援をはじめ、復興を支える人材育成、学校施設や文化財の復旧など、被災者に寄り添った復興に取り組みます。また、廃炉に関する研究開発や人材育成、原子力損害賠償にも着実に取り組んでまいります。

【結語】

限られた時間の中で全ての課題をお示しすることは適(かな)いませんが、これまで本委員会でお約束してきた取り組みについては、私自身が先頭に立って、確実に実施してまいる所存です。「国民のために働く」菅内閣の一員として、国家百年の計に立って、「人づくり」をはじめとした文部科学行政における諸課題の解決に向け、国民に寄り添いながら、果敢に取り組みを進めてまいります。

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