震災遺児の10年 半数以上が今も死別信じられず

あしなが育英会は3月9日、記者会見を開き、東日本大震災の津波によって親を失った震災遺児らが、これまでの10年を振り返った。同会が震災遺児に行ったアンケートでは、今もなお、震災で大切な人との死別を「信じられない」と感じる人が半数以上を占めるなど、継続的な心のケアの必要性が浮かび上がる。

この10年間を振り返る萩原さん(Zoomで取材)

同会は東日本大震災の発生直後から、津波による震災遺児の支援をスタート。心のケアのために同じ境遇の人が集まり、ファシリテーターが間に入って交流を行うレインボーハウスを、宮城県内の3カ所で開設している。

小学2年生のときに東日本大震災で父親を亡くした高校3年生の萩原彩葉(さわは)さんは「父が亡くなってから、人前で泣いたり弱音を吐いたりできず、人に相談もできずに一人で苦しんでいた。あしなが育英会のファシリテーターと遊んだり話したりしていく中で、人と壁をつくらずに済むようになった」と話す。

父親が亡くなってから学校にうまくなじむことができずに、保健室で過ごしていた時期があり、そのときの養護教諭が優しく受け入れてくれたことがきっかけで、養護教諭を目指すことにしたという。

また、小学3年生のときに、母親と2人の妹を津波で失った新田佑さんは「当時のことはあまり覚えていない。母と妹を亡くして、悲しみよりも現状が理解できない方が大きかった。成長の過程で、悲しみや母親がいないことに対しての、周りとの違いを感じるようになった」と振り返る。

新田さんはその後、レインボーハウスで同じ境遇の仲間と出会うようになり、少しずつ前向きな気持ちになれたという。「今まであしなが育英会で支援してもらったので、今度は自分が支援する側になりたい。遺児支援もそうだが、大学で学んでいる情報学を生かせるような仕事に就きたいと思っている」と思いを語った。

亡くなったもしくは行方不明の人について話す相手

昨年10~11月に同会が東日本大震災の津波によって親を失った遺児1508人にアンケートを行ったところ、中高生の52.2%、18歳以上の29.0%が、亡くなった・行方不明の親について「誰とも話さない」と回答。震災による大切な人との死別が「信じられない」と「今でも感じる」と答えた人は54.9%、「以前は感じたが今は感じない」と答えた人は38.5%となった。

精神看護学が専門で、レインボーハウス活動のサポートを行っている髙橋聡美・中央大学客員研究員は「当時生まれたばかりの子供が10歳、小学生はもう大学生になる。成長していくが、まだサポートしなければいけない子供はたくさんいる。この10年の間に、サポートする側に回る子供が出てきたことは、レジリエンスを強く感じた。人の心は人との触れ合いがなければ癒やされない。同じ経験をしている人なら分かり合え、一緒に成長している感覚が得られる。それは専門家でも与えられない力だ。当事者同士が集まる『グリーフプログラム』の必要性を確信した」と、大切な人を失った人の心情に寄り添った回復までの長期的な支援の充実を呼び掛けた。

次のニュースを読む >

関連