喜名全連小会長と中教審答申を読む 現場は受け身ではいけない

「私たちが取り組むべき課題全てが網羅されている」――。中教審が今年1月に取りまとめた答申「令和の日本型学校教育」をこう評する、全連小会長の喜名朝博(ともひろ)東京都江東区立明治小学校校長。「これまでの日本型学校教育の成果と課題がまとめられた」と、その意義について語る。

学校現場の一人一人は答申とどう向き合い、日々の教育実践にどう生かせばいいのだろうか。喜名会長とともに、現場目線でその内容を読み解く。


「教育=学校教育」という勘違いを捨てる
――今回の中教審の答申について、どのように見ていますか。
教育新聞の取材に答える喜名校長(2020年3月撮影)

これまでの反省とこれからの学校の在り方を論じており、私たちが取り組むべき課題全てが網羅されています。私自身も、初等中等教育分科会教育課程部会や教員養成部会の委員として議論に参加してきましたが、それぞれの委員の意見をよく取り入れていただいていると感じました。

答申では学校教育の役割について、「学習機会と学力保障」「全人的な発達・成長の保障」「身体的、精神的な健康の保障」――と改めて整理されました。

その上で、これまでの日本型学校教育の成果と課題を統括したのはとても重要な点でしょう。日本社会では、「教育=学校教育」という間違ったイメージがいつの間にか定着してしまい、社会も学校現場も悪循環に見舞われているように思います。

学校教育は、あくまで生涯学習の始まり、つまり人生における学びのスタートにすぎません。多くの人が「教育=学校教育」と勘違いしているせいで、学業を終えると学ぶことを止めてしまう人が目立ちます。これはとても残念なことです。

さらにこの勘違いが、教育に関する学校、家庭、地域、それぞれの役割を整理できない状況を生み出しているのではないでしょうか。例えば児童生徒の学校外での行動や人間関係についても、当たり前のように学校が介入して間を取り持たなくてはならない状況をよく目にします。これは家庭の教育機能や、地域の教育力の低下を促してしまうことにもつながりかねません。

答申ではこのような日本型学校教育の課題が明確になりましたが、解決の具体策は示されていません。課題を学校現場だけでとどめておくのではなく、社会、国民全体で共有して、教育について広く意識改革を促す必要があると改めて感じます。

――その他に注目するポイントはありますか。

教育施策評価が盛り込まれたことも、画期的であり、評価したい点です。これまでのビルド&ビルドの行政体質からの脱却や、PDCAサイクルを取り入れた施策評価と施策への反映。さらに、中教審自体も必要な検証を実施すると明言している点に、大変意義を感じます。

新学習指導要領との整合性は
――現場の教員は、どのようなメッセージを読み取ればいいでしょうか。

これまでの学校が内包する悪しき習慣について、直接的に指摘しています。同調圧力や正解主義、二項対立など現在の学校現場にまん延している根深い問題について、自己改善する必要に迫られているのです。

例えば「みんな違って、みんないい」と言いながら、「どうしてみんなと同じにできないの」といった過度な同調圧力を児童生徒に押し付けていないか。「100点を取るのがいい」「正解こそが正義」といった正解主義に走り、児童生徒が教師に忖度(そんたく)して学習せざるを得ない環境になっていないか。デジタルかアナログか、履修主義か修得主義かなど二項対立で考え、学びの可能性を狭めていないか。

今まさに、教師一人一人が自問自答し、それぞれの教育観を転換するタイミングがきたのです。

この答申の理念を、どのように現場が受け止めるかがポイントです。文科省も啓発資料を作成するそうですが、学校現場は受け身ばかりではいけません。まず管理職である校長自身が理解し、教職員に説明して、学校全体で学び合う環境をつくることが大切です。

特に小学校では、2020年度より新学習指導要領が全面実施されました。新学習指導要領で触れられている「主体的・対話的で深い学び」と、答申のキーワードである「個別最適な学びと協働的な学びの実現」の整合性をいかにとるかが、今後のテーマとなるでしょう。これまでのようにキーワード用語に飛び付き分かったつもりになるのではなく、それぞれの言葉が意味する意図を読み解かなければなりません。

――解決に向けて緊急性のある課題についてはどう考えますか。

答申の末尾には、次期中教審への申し送り事項が明記されています。

教員の人材確保と質の向上は、特に小学校教育において最大の課題であり、まったなしの状況。これに関しては、教員養成・採用・研修、どれか一つの仕組みを変えれば解決するわけではなく、構造的、抜本的に見直していく必要性を再度認識し、解決に向けて歩みを加速させることが求められています。

また教委の在り方についても、さらに強化する必要性が指摘されています。一斉休校中のオンライン授業への挑戦など、画期的なチャレンジで成果を上げた教委があった一方で、柔軟に動けず、結局何もできなかった自治体があったことも事実です。例えばコロナ禍の移動教室や修学旅行においても、対応を学校に丸投げした自治体があり、現場は混乱したという話も耳にしました。

特に4月から本格的に始まる1人1台端末の整備や、デジタル教科書の導入については、それぞれの教委によって方向性や予算、関わる人材の質や数などに大きな差があります。この地域間格差が、ゆくゆくは児童生徒の学びの差にならないかと危惧します。

コロナ禍の制限下で学校生活を送らなければならない現状や、学校教育の在り方の変革期にきている今、校長を中心とした学校現場と、それぞれの教委がアイデアを出し合い、柔軟にチャレンジし続けることが求められています。

(板井海奈)

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