教員制度改革を包括諮問 中教審、免許更新制の見直し先行

中央教育審議会(中教審)は3月12日、第128回総会を開き、萩生田光一文科相が、教師の魅力の向上を図るため、教員の養成・採用・研修の在り方について包括的な諮問を行った。教員免許更新制については抜本的な見直しを行い、先行して結論を出すよう要請した。学校現場から教員養成まで幅広い議論が必要になるため、中教審は初中教育と高等教育を横断的に取り扱う特別部会の設置を決めた。「令和の日本型学校教育」を担う新たな教師像を描き、その資質能力を備えた教員の確保に向け、集中的に議論を進める。また、萩生田文科相は2022年度にスタートする第3次学校安全推進計画の策定についても、あわせて諮問した。

諮問を手渡す萩生田文科相(左)と渡邉中教審会長

今回の中教審総会は、委員の任期切れに伴い、新たに任命された委員14人を含む第11期中教審委員29人による最初の会合として開催された。冒頭、会長に渡邉光一郎・経団連副会長(第一生命ホールディングス会長)を前期に続いて選任。副会長には、永田恭介・筑波大学長、荒瀬克己・関西国際大学学長補佐・基盤教育機構教授が就いた。

萩生田文科相は席上、教師の養成、採用、研修の在り方に関する諮問について、要点を説明。まず、1月26日の中教審答申が「令和の日本型学校教育」を担う教師の姿として「学校教育を取り巻く環境の変化を前向きに受け止め、教職生涯を通じて学び続け、子供一人一人の学びを最大限に引き出し、主体的な学びを支援する伴走者としての役割を果たす」と描いていると説明。「今後、『令和の日本型学校教育』を実現できるかどうかは、時代の変化に応じた高い資質能力を身に付けた教師を確保し、教師が生き生きと活躍できる環境を整備できるかどうかにかかっている」と指摘した。

一方で、現在、教師を取り巻く環境について、「教師の長時間勤務、一部の学校における教師不足、教員採用選考試験の採用倍率の低下など厳しい状況にある」と課題を列挙。「こうした背景もあり、魅力的な職業としての社会的認識も必ずしも十分ではない」と、厳しい認識を示した。

こうした状況を踏まえ、「ICTの活用と少人数学級を車の両輪として、『令和の日本型学校教育』を実現し、それを担う質の高い教師を確保するため、教師の養成、採用、研修等の在り方について、既存の在り方にとらわれることなく、基本的なところまで遡って検討を行い、必要な変革を行うことで、教師の魅力の一層の向上を図っていくことが必要」と強調。教員制度を根本的なところまで掘り下げて検証し、抜本的な改革に取り組む考えを示した。

その上で、5つの事項を中心に審議を進めるよう求めた。諮問によると、5つの事項は①教師に求められる資質能力の再定義②多様な専門性を有する質の高い教職員集団の在り方③教員免許の在り方・教員免許更新制の抜本的な見直し④教員養成大学・学部、 教職大学院の機能強化・高度化⑤教師を支える環境整備――となっている。

このうち、教師に求められる資質能力の再定義では、「ICTを駆使しながら、個別最適な学びと協働的な学びの実現を通じ、全ての子供たちの可能性を引き出す創造的で魅力的なものであるという姿を描き出しつつ、各学校種・教科等を横断して全教師に求められる基本的な資質能力を、『何ができるのか』という観点も踏まえ、できるだけ具体的に明らかにしてほしい」と、注文を付けた。

多様な専門性を有する質の高い教職員集団の在り方では、外部人材の活用促進に焦点を当てた。教員免許の在り方では、学校種に対応した免許状の区分の見直しを求めた。

現場教員の注目度が高い教員免許更新制では、「現場の教師の意見などを把握しつつ、今後、できるだけ早急に当該検証を完了し、必要な教師数の確保とその資質能力の確保が両立できるような抜本的な見直しの方向について先行して結論を得てほしい」として、教員制度改革の包括的な取りまとめと切り離し、先行して結論を示すことを求めた。

中教審では、教員免許更新制の見直しについて、2月8日に教員養成部会が取りまとめた申し送り事項の中で、まず教員免許更新制が及ぼす影響の分析や、現場教師の認識を把握する調査の実施、講座を開設している大学や教員免許状を持ちながら民間企業に勤務する人に対する調査など、検証作業の実施が必要と指摘。その上で、『教師の資質能力の確保』『教師や管理職等の負担の軽減』『教師の確保を妨げないこと』のいずれもが成立する解を見出していかなければならない」と明記している。

このため、今後の進め方について、文科省では「まず、現場教員の意見を聞くなどの検証作業を行い、その上で申し送り事項に示された3つの要件が成立する解を探ることになる。法改正が必要になる可能性も考えると、来年の通常国会に法案を提出する場合、1年もかけるわけにはいかない」(総合教育政策局教育人材政策課)とみている。

第3次学校安全推進計画の策定については、現行の5カ年計画が来年度末に終了することを踏まえ、2022年度にスタートする新たな計画の策定に向けた論点の整理を求めた。具体的な論点としては▽現行計画の検証と社会の変化に基づく改善策として、防災教育の充実やSNSの普及への対応、感染症対策と安全対策の両立など▽学校安全への取り組みの全国的な質の向上▽安全教育、安全管理に関して教員養成段階で身に付けておくべきことや教員研修の在り方――を挙げている。2022年度の新計画スタートをにらみ、1年程度で答申をまとめる見通し。

ウェブ会議で議事を進行する渡邉中教審会長

再任された渡邉会長は「コロナ禍は10年早く未来を連れてきたと言われている。多様性と包摂を前提として、全ての人が生き抜くために必要な力を身に付け、活躍できるようにする上で、教育が果たす役割はますます大きくなっていく。その在り方を議論するに当たっては、未来の課題について検討し、それをバックキャスト的に課題解決していこうという、未来志向型の視点が極めて重要。教師の養成、採用、研修の在り方は、まさに喫緊の課題と考えている」とあいさつした。

中央教育審議会(中教審)に対する2つの諮問のポイント
■「令和の日本型学校教育」を担う教師の養成・採用・研修等の在り方について
①教師に求められる資質能力の再定義
  • 「令和の日本型学校教育」を実現するために教師に求められる基本的な資質能力
②多様な専門性を有する質の高い教職員集団の在り方
  • 優れた人材確保のための教師の採用等の在り方
  • 強みを伸ばす育成、キャリアパス、管理職の在り方
③教員免許の在り方・教員免許更新制の抜本的な見直し
  • ①を踏まえた教職識課程の見直し
  • 学校外で勤務してきた者等への教員免許の在り方
  • 免許状の区分の在り方
  • 必要な教師数と資質能力の確保が両立する教員免許更新制の見直し
④教員養成大学・学部、 教職大学院の機能強化・高度化
  • 多様化した教職員集団の中核となる教師を養成する教員養成大学・学部、教職大学院の教育内容・方法・組織の在り方
  • 学生確保、教職への就職、現職教員の自律的な学びを支えるインセンティブの在り方
⑤教師を支える環境整備
  • 教師を支える環境整備
  • 教師の学び等の振り返りを支援する仕組み
■第3次学校安全の推進に関する計画の策定について
○現行計画期間中の取組状況の検証及び社会の変化に基づく改善策
  • 東日本大震災の教訓及び近年の災害の激甚化を踏まえた防災教育の充実
  • 防犯・交通安全についての一層の充実方策
  • 学校、家庭、地域、 関係機関・団体との連携
  • 新たな課題(SNSの普及、新たな危機事象)への対応
  • 新型コロナウイルス感染症対策と安全対策の両立
○学校安全に係る取組の全国的な質の向上
  • 学校安全の質を全国的に高め、実効的で持続的なものとするための学校における組織体制の在り方や関係機関との連携
  • 国、地方公共団体、 学校設置者や地域が取り組むべき施策の在り方
  • 校内体制の在り方
○安全教育、安全管理に関して教員養成段階で身に付けておくべきことや教員研修の在り方
  • カリキュラム・マネジメントによる体系的な安全教育
  • 安全で安心な生活や社会を実現するために主体的に行動する態度の育成
次のニュースを読む >

関連