【GIGA到来】初心者はここから グーグル担当者に聞く

GIGAスクール構想で端末整備を進める自治体のうち、今や半数近くが採用するグーグル。ICT活用に熱心に取り組む学校でも、グーグルのツールを活用している教員は少なくない。無償で使えるツールも数多いが、初心者でも使いやすく、授業改善に役立つ機能にはどんなものがあるのか。学校や家庭で安全に端末を使うため必要なことは何か。新年度からの1人1台端末の本格活用に向け、Google for Educationアジア太平洋地域マーケティング統括本部長のスチュアート・ミラー氏と、同社市場開発担当課長兼Google for Education認定トレーナーの上原玲氏に活用のヒントを聞いた。

クラスの声を満遍なく聞く

グーグルは今年2月に、これまでのクラウド型教育プラットホーム「G Suite for Education」を「Google Workspace for Education」に名称変更し、有料オプションを追加すると発表したばかり。とはいえ、授業支援ツール「グーグル クラスルーム」のほか、文書作成ツール「ドキュメント」やアンケート作成ツール「フォーム」、ウェブ会議ツール「ミート」など、引き続き無償で、多くの機能を使うことができる。

Google for Educationアジア太平洋地域マーケティング統括本部長のスチュアート・ミラー氏(提供:Google for Education)

それでは、初心者はどこから使い始めればよいのだろうか。ミラー氏は「やはり学校では、クラスルームが中心的なツールになります」と語る。クラスルームでは、教員がお知らせや資料などを投稿できる「ストリーム」というページのほか、教員が課題の作成や提出状況の管理、課題の採点などに使えるツールがそろう。

「まずは『ストリーム』から使い始めるのがよいでしょう。ここでは、教員からの連絡事項や課題など、クラスの最新情報を順次、流せるようになっています。それとは別に、限定公開コメントで児童生徒と個別にやりとりできる機能もあります」(ミラー氏)

クラスルーム「ストリーム」の画面(提供:Google for Education)

クラスルームをはじめ、グーグルが提供する機能は数多い。日本の学校で教員経験もあるというミラー氏は「学習に使えるツールが増えると意見交換が活発になり、深い学びができるだけでなく、コミュニケーションの在り方も多様になります。授業でなかなか手を挙げられなくても、『ドキュメント』になら書けるという子供もいるはず」とみる。

教員向け研修などで学校現場と接する機会が多い上原氏は「普段から発言の機会が多い子は、ICTを使っても使わなくても発言するでしょう。ただ、そうでない子もたくさんいる。『ドキュメント』は書き込んでいる人の名前が見えるようになっていますが、アンケートツールの『フォーム』なら匿名で回答でき、しかも瞬時に集計できるので、教室にいる児童生徒の声を満遍なく聞けるようになります。国語の授業で、登場人物の気持ちや心情について投票させるといった使い方もできます」と話す。

「これまでは限られた授業時間で、情報のインプットからディスカッションまで行う必要がありました。GIGAスクールの端末は持ち帰りも可能。事前に『ストリーム』に資料をアップロードしておいて、児童生徒に家庭で目を通してもらい、授業ではディスカッションに時間を割く『反転授業』にも使えます」(上原氏)

教員から歓声が上がる機能
独自性レポート機能の教師側画面(提供:Google for Education)

最近追加された「独自性レポート」機能には、「先生から歓声が上がる」と上原氏はいう。「中学生や高校生になると小論文やレポートを書く機会もありますが、インターネット上のウェブサイトからのコピー・アンド・ペーストも心配なところ。この機能を使うと、提出課題がどのウェブサイトから何割、引用されているかを可視化することができます」(上原氏)。無償版で一部機能が、有料オプションでフル機能が利用できる。

今後、拡充を予定している主な機能には「エンゲージメント・トラッキング」と「オフラインモード」がある。現状でも課題の提出状況などは把握できるが、「エンゲージメント・トラッキング」機能を使うと、課題にいつから取り組んでいるか、最後に取り組んだのはいつかなど、個々の児童生徒の取り組み状況を、より詳しく把握できるようになる。

また「オフラインモード」は、通勤・通学中などインターネット接続が不十分な場所でも作業を続けられる機能で、日本の学校現場からの要望がとりわけ大きかったという。オフラインで作業した内容は、次にインターネットに接続した時に同期される。Googleの端末「クロームブック」ではすでに使えるが、今後はモバイル端末でも使えるようになる。

ミラー氏は、先行して1人1台のクロームブックを整備した小学校の事例を踏まえ、「当初は苦手意識があっても、1カ月もすれば使い方を理解する先生が多いです。特に共同編集ができる機能は協働的な学びに適しており、低学年でも抵抗なく使えているようです」と話す。

上原氏はクロームブックを採用する学校を対象に行っている基礎研修で、経験の浅い教員たちの不安も感じるという。とはいえ「これから自分の授業がどう変わり、子供たちがどう変わるのかといったことへの楽しみ、わくわく感も非常に大きい。利活用が進むまでに1~2年はかかるとみていますが、まずは使えるところから少しずつ、自分のアイデアと組み合わせて、可能性を広げてみては」と期待を寄せる。

パスワード紛失時の対応「事前に学校でルール作りを」

授業での活用と並んで学校現場が頭を悩ませているのが、端末の管理だ。特に家庭に持ち帰った際、紛失・破損や不適切な使用などのトラブルを懸念する声は根強い。

管理コンソールの画面(提供:Google for Education)

グーグルのプラットホームでは、学校の管理者が「管理コンソール」というツールを使って、500以上の項目の設定を行うことが可能。例えば、自宅で不適切なサイトにアクセスできないよう、「常にセーフサーチを使用する」「危険性のあるダウンロードをブロックする」といった項目がそれぞれ設定できるようになっている。

アカウントやパスワードが分からなくなってしまった場合には、権限のある教員が管理コンソールを使って、パスワードをリセットできる。端末を紛失した時も、管理コンソールから遠隔で端末を無効化できる。ただ、紛失などトラブルが起きた時の連絡先や対応の流れを、あらかじめ各学校がルールとして確立しておくことが重要だ。いざという時の備えがあれば、スムーズな解決が可能になる。

「自治体でトラブルを想定した設定のガイドラインが示されれば、学校や教員で項目を設定していくことが可能です。各学校では、まず校内での設定を決め、学校外でも同じ設定にするのか、より厳しく制限するのか、もしくは制限を緩めるのかを判断してもらうことになります」(ミラー氏)

ICT活用の取り組みを進める中で、さらなるスキルアップを目指す場面も出てくるかもしれない。グーグルは「Grow with Google」というウェブサイトで、教員や児童生徒がICTスキルを学ぶことができるオンラインコースを多数そろえる。教員は「安心・安全なインターネット利用のためにできること」「管理コンソールの使い方」「はじめての遠隔授業」など、テーマに沿った研修動画を見ながら、自分のペースで学ぶことができる。

また、グーグルユーザーの教員らでつくるコミュニティー「GEG(Google教育者グループ)」が全国に48拠点あり、授業改善のアイデアをシェアしたり、使い慣れた教員が新しく加入した教員に助言をしたりと熱心に活動している。とりわけ昨年の臨時休校以降、学びの保障のためのオンライン授業の方法などについて、各地で活発な情報交換が行われている。

「基礎的な研修を受けた先生に、しばらくたって再び話を聞くと、お伝えした使い方とは全然違う使い方を自分で編み出している方もいます。やはり、子供たちと普段から接している先生には、アイデアが豊富にある。4月から本格的な活用が始まれば、夏ごろにはこれまで想像もしなかった使い方がどんどん出てくるはず。とても楽しみです」と、上原氏は笑顔を見せる。

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