「受益者は児童生徒」 教育データ利活用で中間まとめ案 

GIGAスクール構想で1人1台端末環境が実現することを踏まえ、学習履歴(スタディ・ログ)など教育データの効果的な利活用について検討している文科省の有識者会議は3月19日、第5回会合で中間まとめ案を示した。案では「全ての子供たちの力を最大限に引き出す」という観点から5つの原則を示すとともに、データ利活用の「中心となる受益者は、保護者を含む学習者(児童生徒)」と明記。学校現場での利活用における課題と今後の方向性を整理した。有識者会議は本日の検討を踏まえて文言の修正などを行い、今月中をめどに中間まとめを取りまとめる。

データ利活用に向けた「5つの原則」
ウェブ会議で行われた有識者会議(文科省YouTubeより)

中間まとめ案では、初等中等教育段階での児童生徒の教育・学習に関する定量・定性データの利活用を進めるにあたって、▽教育・学習は、技術に優先する▽最新・汎用的な技術の活用▽持続可能性の確保(働き方改革への寄与など)▽教育データの安全・安心の確保▽スモールスタート・逐次改善――の5つの原則を示した。

この中で、教育データ利活用の目的は「学習指導要領が目指す『主体的・対話的で深い学び』を実現するため、いかに学びの姿を把握し、学びを支援するか」だとして、「技術やデータの利活用をすること自体が目的化しないようにする必要がある」と指摘。

こうした原則を強調することで、教育データを利活用する主体は児童生徒(学習者)、保護者、教職員、学校、学校設置者、行政機関、研究機関などさまざまだが、中心となる受益者は「保護者を含む学習者」であるという考え方を明確にした。

また、教育データを整備する上では、「なるべく相互互換性や流通性を確保すること」「多忙な学校現場にできるだけ負担をかけず、簡便に、効果を実感できるような仕組みとすること」「個人のデータが、本人の望まない形で流通・利用されることによって、個人が不利益を受けることがないようにすること」などを必要事項として挙げた。

データの収集はできても、利活用に「試行錯誤」

中間まとめ案ではまた、学校現場へのヒアリングなどを踏まえ、今後のあるべき方向性を示した。教育データの一時利用(現場実践目的)と二次利用(政策・研究目的)の考え方に関しては、「学校の教職員などの関心は、新たなデータや知見の生成や活用よりも、現在アナログで扱っているデータをデジタル化し、より便利で安全に活用できる環境を構築することにある」と指摘。そのため、まずは全ての教職員がデータの一時利用をできる環境を充実させることが急務だと示した。

また先行する自治体や学校の事例から「データの収集や蓄積はできても、児童生徒の学習を効果的に向上することにデータを利活用するという点で、試行錯誤している部分が見受けられる」と指摘。

これに対し、「児童生徒の理解を深め、発問、焦点化、支援などを行い、授業後の履歴データで理解度を確認する」といった効果的なサイクルの構築や、学習履歴だけでなく生活・健康面の記録(ライフ・ログ)、教師の指導に関するデータ(アシスト・ログ)など、多面的なデータの活用が有効だとする方向性を示した。

また、全国の学校で知見の共有を図ることや、児童生徒、保護者、教職員、教委、教育事業者などのデータリテラシーを向上させること、テストの点数などの定量的データだけでなく、演算可能な数値では表せない定性的データとあわせて解釈することが大切だとした。

学習指導要領のコード化など、すでに取り組みが始まっている教育データの標準化については、教育データを相互に交換、蓄積、分析するために不可欠だとして「検討を加速化すべき」と明記。「デジタル教科書やさまざまな教材などで、学習指導要領コードを活用していくべき」としたほか、児童生徒ごとのデータを活用するための学習者用IDの必要性について、マイナンバーの活用も含めた具体的な検討が必要だとした。

「保護者、教員がデータ利活用に懐疑的」

座長を務める堀田龍也・東北大学大学院情報科学研究科教授は「公教育のデータをどのように定義し、使っていくかについて、一定の整理はできた」と評価。

ただ、「(現状では)行政の情報化が十分に行われておらず、データを集められない、集めてはならないとなっていて、教育によい効果を残す分析ができない事態が生じかねない。(今年9月に予定されている)デジタル庁の設置である程度は進むだろうが、その前夜である今の時期に、拙速に答えを出すことは難しい。とはいえ、スピード感をもって進めていく必要がある」と、行政のデジタル化が過渡期を迎えている現状の課題を示した。

また、もう一つの課題として、堀田教授は「保護者や先生からの懐疑的な声が大きい。これまで経験していないことを想像で考え、心配が増えている。GIGAスクール構想が本格化するタイミングで、公教育のデータが集められて分析される事例、教育産業とうまくつながる事例が出てくれば、理解し、納得しながら整理が進んでいく部分があるのではないか」と述べ、教育データの利活用について保護者や教員の理解を促す必要性を指摘した。

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