ICTで児童の状態把握 自殺予防などに有効だが注意も

子供の自殺予防について話し合う文科省の「児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議」が3月26日、オンラインで開かれ、子供の心の状態を調査してフィードバックすることで抑うつ傾向が改善された事例や、児童生徒の情報をICT活用で共有して、異変に素早く対応する事例などが報告された。

オンラインで行われた児童生徒の自殺予防に関する調査研究協力者会議

千葉大学子どものこころの発達教育研究センターの清水栄司センター長は、弘前大学が2015年から弘前市内の小中学生を対象に行っている「心のサポートアンケート」について報告。それによると昨年7月の調査では、1割以上の子供が中等以上の「うつ」と判定されているものの、同市ではこうしたデータを担任や保護者にフィードバックすることで、小学3年生以上で毎年、抑うつ傾向の改善が進んでいるという。

清水センター長は「傾向を調査してフィードバックすることに意味があるといえる」と効果を説明した。

大阪市教委学校運営支援センターの山本圭作氏は、昨年10月から大阪市内の全小中学校で進められている、スマートスクール・次世代学校支援事業について説明。同市では、児童生徒1人ずつの生活や学習の様子、出欠状況などを画面にした「児童生徒ボード」を作成し、教員全体で情報共有している。

大阪市の小中学校で作成される「児童生徒ボード」の見本

山本氏は「若手教員とベテラン教員が共に子供の様子を分析するなど、『チーム学校』を実現するツールとして各校から期待されている」と成果を述べた。

これに対して委員から「教員の主観的な情報の書き込みが引き継がれる恐れはないか」といった質問が出され、山本氏は「教員の書き込みは『事実のみを記入する』と徹底し、保護者から開示請求があれば公開することにしている」と、情報の取り扱いに配慮していると説明した。

続いて各委員の意見交換が行われ、関西外国語大の新井肇教授は「オンライン化が進む中でICTを活用しない手はなく、自殺予防の視点で言うと、これまで以上に課題を見つけることが可能になる」と効果を認める一方、「危険のある子供が見つかったときに、その子を特別扱いせず、むしろ個性を認めるという教育的な哲学を持つ必要がある」と強調した。

また、弁護士の坪井節子委員は「自分が子供だったら、ここまでの個人情報を見られるのは嫌だろうなと思った。例えば虐待や非行などの問題が生じて、警察や児童相談所から情報を開示してほしいと言われたときにどうするか、データ収集が『何のためか』をきちんと考える必要があると思った」と述べた。

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