【GIGA到来】若手活用とチーム制が鍵 さいたま市立北浦和小

いよいよ本格始動するGIGAスクール構想の1人1台端末。すでに9割以上の自治体に端末は届いたが、授業実践や教職員研修、ネット回線の不具合など課題は尽きない。トライ&エラーを繰り返しながら進むことが求められる中、ICT先進校とは呼ばれない“普通の公立校”はどのような策を講じているのだろうか。3月から端末を利活用し始めた、さいたま市立北浦和小学校の事例をもとに、多くの学校現場が導入当初に直面する課題を拾い上げ、改善の糸口を探る。

学校一丸で山を登っていく
算数の授業でタブレットを活用する5年生の児童

「教科書や本は古い情報しか載っていないけれど、タブレットを使うと最新の情報がすぐに調べられて、勉強がはかどる」――。授業にタブレット端末が取り入れられて2週間、5年生の児童はこう感想を述べる。

県立浦和高校をはじめとした複数の学校施設に囲まれた、住宅地に位置する北浦和小。2月末、全校児童749人にタブレット端末を整備し、3月から試用を始めた。各教科の授業や行事などで少しずつ、児童や教員が端末に触れ始めたところだ。三村悟校長は「とにかくやってみよう、うまくいかなくてもいいからチャレンジしよう、と教職員に呼び掛けている。端末を導入したら即、自由に、便利に学習できると思いがちだが、それは違う。ここからが本番だ。学校一丸となって、この山を登って越えていかなければいけない」と強調する。

エバンジェリスト制度で情報交換

同小はICTを日々の授業により浸透させるために、「若手の活用」と「チーム制」の2本柱で挑むという。そのために、管轄のさいたま市教委が学校現場をフォローするために用意する施策を、存分に生かしながら取り組んでいる。

その施策の1つが「エバンジェリスト制度」。「エバンジェリスト」とは伝道師を意味し、IT業界では技術的な知識や話題を分かりやすく説明し、広める役割を指す。同市ではその「エバンジェリスト」を担う教員を、各学校で指名するように指示。彼らは市教委が定期的に開催する研修に参加し、最新の情報や知識に触れて所属校に持ち帰る。さらに各学校のエバンジェリストが、Teams上で交流する仕組みも構築。市内の小学校をグループ分けし、各学校のエバンジェリストが質問や情報交換など、学び合いを重ねている。

同小のエバンジェリストは4人。日ごろからICT機器を使いこなしている教員歴3~7年の若い世代が、率先して手を挙げたという。

この制度について、三村校長は「正直、機器の不具合など、私たちだけでは即答できないことも多い。各学校の事例や取り組みを横展開でき、リアルタイムで情報交換できる環境を市教委が用意してくれたことは大変心強い」と大きな期待を寄せる。

さらにエバンジェリストとして活躍する教員について、「業務の負担になると危惧していたが、全員がやる気を持って快諾してくれた」と明かし、若いエバンジェリストが研修などを通して、意欲的にどんどん発信するようになり、学校全体の変化を促していると説明する。「この取り組みを通し、この若いエバンジェリストが学校組織の中で自信をつけ、成長していく姿を目の当たりにした」とほほ笑む。

まず校長が失敗して挑戦しやすい環境を

また市教委では、各学校に対してICT推進に「チーム制」であたるよう通知を出している。同小ではこのチーム制をより手厚くするために、委員会組織を設置した。授業活用、整備や管理などのサポート、デジタル教科書の活用など、ニーズを細分化してそれぞれに専門教員を配置。多方面からICT推進にアプローチする体制を整えた。

三村校長(左)と池田教頭

ICTを積極的に活用する校風をつくるためには、管理職による働き掛けの影響も大きい。池田誠教頭は、三村校長について「『挑戦しよう、うまくいかなくてもいいじゃないか』という言葉だけではなく、校長自身がどんどん端末を使って、失敗して、試行錯誤する姿が他の教職員を後押ししている」と話す。

例えば、卒業式。同小では新型コロナウイルスの影響で、6年生以外の児童は参加できない。それでも、来年卒業を迎える5年生に、式典の様子を見せてイメージできるようにしてあげたいと、三村校長の発案で予行演習をTeamsでライブ配信するよう計画したが、当日はうまくいかなかった。しかし、三村校長はすぐさま気持ちを切り替えた。なぜうまく行かなかったのか、課題点を教職員らと出し合い、試行錯誤を重ね、さらなる取り組みにつなげていくという。「途中で動画が止まったり、音声がハウリングしたりとハプニングがある。うまくいかないところがあっても、教職員と『次はどうしようか』と前向きに考えて、一歩一歩進んでいきたい」と前を向く。

端末を文房具として使うためには

端末を活用した学びの可能性は未知数だが、その分、不安も大きい。本格的に運用する4月以降、「今はまだ見えていない問題が、次々と浮かび上がってくるだろう」と、三村校長は緊張感を強める。現時点でもネット回線の不具合が頻出し、喫緊の課題になっているという。

さらに端末の保管場所なども、試行錯誤の連続だ。「机の中には入らないし、ロッカーの上に置くとなると展示物を飾れない。当校は1クラス当たり40人ほど児童がいるので、スペースも限られている。今は授業が終わる度に、教室前方に設置した充電保管庫にしまっているが、児童が日常的に使うためにはもっとベストな方法があるはずだ」と、よりよい環境づくりを目指して日々、研究を重ねていると明かす。

GIGAスクールのゴール地点を、三村校長は「児童が端末を文房具として使い、主体的な学びを広げている姿」と定める。そのためには教員側の授業実践の研さんやネット環境の整備など、ハード面とソフト面の両面を整えていかなければならない。

とはいえ、いきなりゴール地点に到達できるわけではない。まずは児童が端末に触れて興味を持ち、面白いと感じることから、全てが始まる。同小では休み時間の個人的な利用や自宅への持ち帰りはまだ解禁していないが、朝の会や授業の合間など隙間時間を使って、児童が端末に触れる機会を着実に増やしている段階だ。

タブレットを活用した授業について5年生の児童は「教科書や本は古い情報しか載っていないけれど、タブレットを使うと最新の情報がすぐに調べられて勉強がはかどるし、楽しくなった。タブレットは家でも使っていたけれど、最近は学校で触れる時間の方が長くなってきた。これからはインターネットで調べた情報を、すぐに授業に生かせるような学習の仕方をしてみたい」と笑顔で話し、学ぶ意欲をのぞかせた。

三村校長は「学校に当たり前にタブレットがあれば、いずれ、それは児童にとって文房具になるだろう。図書室の本を使うように、知りたいことや探究したい内容があれば、当たり前に触れるものになってほしい。そのために今はどんどん挑戦を重ねたい」と力を込めた。

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