LINEによる相談窓口が一部停止 不安高まる春に危惧の声

家庭や子供同士の連絡ツールとして普及しているLINEの個人情報が、中国の関連会社で閲覧できる状態になっていた問題を受けて、国や一部の自治体などでは、LINEを活用した相談窓口の使用を停止している。例年、春休みから新年度が始まる3月末~4月上旬は、環境の変化などから子供の不安も高まり、相談件数が増える時期に当たることから、サービスの停止を危惧する声も上がっている。

子供向けの相談窓口にも影響

加藤勝信官房長官は3月29日の記者会見で、この問題に関する政府機関の対応について説明。「情報セキュリティー対策などのポリシーを順守する観点から、政府機関において、機密性を要する情報を取り扱うLINE社のサービスの利用については、いったん、これを停止した上で、関係省庁を構成員とするタスクフォースを早急に立ち上げ、法所管省庁の検討も踏まえつつ、各利用主体による判断の参考となる考え方を早期に示したい」と述べ、ガイドラインを策定するまでは、個人情報などを扱うLINEを活用したサービスは停止する考えを改めて表明した。これにより、例えば法務省のSNSによる人権相談の運用が中止されるなど、さまざまな影響が出ている。

教育関係で最も影響を受けると考えられるのが、いじめや悩みごとを受け付ける相談窓口だ。今年度、文科省の補助金の対象で、SNSによる相談窓口を設置している28自治体のうち、LINEを活用しているのは20自治体を占めるなど、多くの自治体でLINEがプラットフォームとなっている。毎年、春休みから新年度が始まった直後は、新しい環境への不安などから、子供たちからの相談件数も増える時期だ。

そうした中、大阪府教育センターでは、毎週月曜日に専門の相談員が対応する「LINE相談」を実施していたが、この問題を受けて3月22日以降の窓口を休止している。今後の対応については検討中で、LINEの相談窓口の画面やホームページ上では「LINE相談はしばらくお休みします」とされ、代わりに24時間対応の電話やメールの相談窓口への案内が示されている。

大阪市でも毎週木曜日にLINEを活用した相談窓口を開いていたが、今年度の最終日となる3月25日までは運用したものの、4月以降はどのSNSを使うかや再開時期も含めて検討中で、いじめや悩みなどの把握は当面、既存の電話やメール、ファックスなどの手段で行うこととなる。

埼玉県では安全性を確認の上で利用を継続する方針としていたが、3月29日に大野元裕知事が記者会見し、利用者と双方向のやり取りが生じる相談業務については、LINE社による対応と安全性の確認ができるまで、当面の利用を停止する考えを表明した。これにより、同県教委が運用していた「SNS教育相談@埼玉県教委」は同日から停止され、LINEの画面上をタップすると24時間の電話相談の案内が表示されるようになった。

「相談をやめるデメリットの方が大きい」との声も

一方で、千葉県では、LINE社に個人情報への不正アクセスや情報漏えいがないことを確認した上で、国の個人情報保護委員会による調査結果が判明するまでは、LINEを利用した県のサービスを一時停止する方針を決めたものの、例外として専門のカウンセラーが対応する「いのち支えるSNS@ちば」や「SNS相談@ちば」は、命に関わり緊急性が高いとして継続することとした。

同様に、子供向けにLINEの相談窓口を運用する滋賀県大津市や長野県、東京都の各教育委員会でも、4月以降も窓口を継続する方針だ。ある自治体担当者は「相談をやめるデメリットの方が大きい」と話す。

LINE社によると、一般的なLINEを活用した相談窓口のシステムは、委託先の事業団体のサーバーにデータが保管されるようになっており、LINE社のサーバーで管理されるトーク画面などのデータも、国内のサーバーに保管されているという。同社では、現在、中国からのアクセスも遮断しており、個人情報の流出は確認されていないとしている。

10代を対象にLINEによる進路や生活などの相談窓口を運営しているNPO法人のD×P(ディーピー)は3月26日、LINE社に対して管理体制の強化を求めていくとしながらも、相談者の生活の支えとなることを優先すべきだとして、窓口の継続を表明。LINEを使った相談事業を中止する自治体や事業所に対して、具体的な漏えいが起こっていない状況で窓口を停止することは、コロナ禍で孤立しやすい相談者の最後の支えを閉ざすことにもなりかねないと指摘し、再考を促す声明を発表した。

D×Pの入谷佐知理事は「今回のLINEの問題は残念だが、だからといってすぐに停止することは過剰反応ではないか。サービスを突然閉ざされてしまうのは、ライフラインを断ち切られるのと同じことを意味する人もいる。別のプラットフォームに移した上で停止するなどの対応を考えてほしい」と呼び掛ける。

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