児童生徒とのSNSの私的やりとり禁止 文科省が通知

児童生徒へのわいせつ行為で処分される教員が減らないことから、文科省は4月12日までに、教員にSNSで児童生徒と私的なやりとりを禁じるなどの予防措置を求めた通知を、都道府県と政令市の教育長に出した。わいせつ教員対策で文科省が教員に児童生徒とのやりとりに制限を求めるのは、これが初めて。新型コロナウイルス感染症への対応が教員のメンタルヘルスに与える影響を踏まえ、休暇の適切な取得を新たに通知したほか、学校現場での女性管理職の登用についても、校長と副校長・教頭のそれぞれについて具体的な目標設定を行うよう明記している。

通知は文科省が昨年12月22日に公表した「令和元年度公立学校教職員の人事行政状況調査」の結果を受けたもので、学校教育に対する国民の信頼を確保することを目的に、瀧本寛・初等中等教育局長と義本博司・総合教育政策局長の連名で4月9日付で出された。

通知では、精神疾患による病気休職者が過去最多の5478人を記録したことについて、「メンタルヘルス対策の充実・推進が喫緊の課題」と指摘。勤務時間管理の徹底やストレスチェックを全ての学校で実施するなど、従来の取り組みを改めて求めるとともに、新型コロナウイルス感染症に対応した業務が「精神的な緊張や心身の過度な負担につながっていることも懸念される」として、新たに「適切な病気、特別休暇等の取得など、各地方公共団体の条例等にのっとり、引き続き適切に取り扱いを行う」よう求めた。

次に、わいせつ行為などで懲戒処分を受けた公立学校の教員が過去2番目に多い273人で、このうち児童生徒に対するわいせつ行為を行った教員が126人 (免職121人、停職5人)だったことを受け、「児童生徒に対するわいせつ行為は教員として絶対に許されないことであり、非違行為や疑わしい行為があった場合には、校長が学校内でのみ対処するのではなく、教育委員会に確実に報告するよう指導を徹底する」と強調した。

児童生徒にわいせつ行為を行った教員に対しては「原則として懲戒免職とする」「告発を遺漏なく行うことを含め、警察機関等と連携して厳正に対応する」という従来の対応に加え、「事実関係の明確化や懲戒処分案の検討には、事案に応じて、弁護士や医師等の外部専門家の協力を得る」との項目を新たに盛り込み、教育現場以外の視点を踏まえて対処方針を決めることを求めた。

さらに予防的な取り組みの推進の重要性を初めて明記。これまで懲戒処分の対象と成った案件で、教員と児童生徒間にSNSなどに使った私的なやり取りが行われていたことから、▽児童生徒とのSNSなどによる私的なやりとりの禁止▽適切な連絡方法についての保護者への周知▽執務環境の見直しによる密室状態の回避▽教員や児童生徒に対するアンケートなどによる実態の把握▽被害児童生徒の相談体制の整備やスクールカウンセラーなど専門家による適切な支援--など、各教委が取り組むべき内容を具体的に示した。

教員の採用に当たっても、わいせつ行為で懲戒処分を受けた教員が、処分歴を隠したまま別の自治体で再任用されるケースがあったことから、▽刑罰や処分歴が明示される採用関係書類を使うなど、採用希望者の経歴の十分な確認▽過去の懲戒免職事由が分かる官報情報検索ツールの活用▽過去の任命権者である教育委員会への退職理由の照会も踏まえた採用判断の実施--など、再任用を避ける取り組みを徹底するよう求めた。

女性管理職の登用については、校長や副校長など管理職に就いた女性は20年4月1日時点で1万3501人と、全管理職の19.7%を占めて過去最高の割合となったが、地域差があることから「それぞれの地域における現状や課題を十分に把握する」ことを示した。さらに、政府の第5次男女共同参画基本計画で、25年までに校長の20%、副校長・教頭の25%を女性にすることが成果目標として掲げられていることから、校長と副校長・教頭に分けてそれぞれ具体的な目標設定を行うよう各教委に伝えた。

ハラスメントの防止措置では、昨年6月に文科省がパワーハラスメント、セクシュアルハラスメント、妊娠・出産・育児休業・介護休業などへのハラスメントについて各教委に行った実態調査の結果、一部の措置が進んでいないケースが確認されたことから、ハラスメント防止方針の規定や相談窓口の設置など防止措置を確実に実施することを求めた。さらに、▽域内の市区町村教委での取り組み徹底▽ハラスメント行為が明らかになった場合の厳正な対処▽処分に至らない事案も含めた服務規律の徹底--を求めた。

「令和元年度公立学校教職員の人事行政状況調査結果」による留意事項の通知(概要)

マーカー部分は新しく追加された内容

【病気休職】※ 精神疾患による病気休職者数 過去最多の5478人(2019年度)
(1)勤務時間管理の徹底をはじめとする学校における働き方改革の取組の推進

①勤務時間管理の徹底

○業務量の適切な管理等に関する指針等に基づき、在校等時間の管理や各地方公共団体の条例や規則等への反映を適切に実施

○ICTの活用などによる在校等時間の客観的な把握等

②過労死等防止対策の推進

○過労死大綱等を踏まえ、教職員や家族等が相談できる体制の整備など過労死等の未然防止の取組の実施

③その他学校における働き方改革の取組の推進

○働き方の見直しの取組を一層推進

○標準職務例を活用し、職務に集中できる環境等を整備

(2) メンタルヘルス対策の一層の推進

①予防的な取組の推進

○本人のセルフケアの促進、校長等のラインによるケアの充実、良好な職場環境·雰囲気の醸成等の取組の推進

②ストレスチェック等の取組の推進

○ストレスチェック及びその結果に基づく面接指導等の取組を学校規模に関わらず、全ての学校において適切に実施

③健康障害等に関する相談体制の整備

○ 健康障害に関する相談窓口の設置·教職員への周知や公立学校共済組合の健康管理対策事業の活用周知

④医師等による健康管理の推進

○長時間労働者への医師による面接指導の適切な実施や、教職員が相談しやすい職場環境を作る取組の推進

⑤復職支援の取組の推進

○ 取組事例を参考に、復職プログラム実施中の状況把握や復職後のフォローアップの取組実施

(3) 教育行政に係る法務相談体制の充実

○弁護士等への法務相談経費の交付税措置等を踏まえ、 外部からの過剰要求等に関する法務相談に係る体制の整備· 充実

(4) 公務災害補償の認定請求事務の迅速化

○公務災害事務の迅速かつ公正な遂行や、勤務実態把握のため在校等時間の把握、管理及び記録の保存の適切な実施

(5) 新型コロナウイルス感染症に対応した教職員の服務等

○適切な病気,特別休暇等の取得など、各地方公共団体の条例等にのっとり引き続き適切に取扱い

【懲戒処分等】※懲戒処分等を受けた者全体 4677人(19年度)
(1)懲戒処分全般の基準の作成 ·公表と処分事案の公表

○事案を速やかに教育委員会に報告するよう各校長への指導徹底

○懲戒処分全般の基準の速やかな作成·公表

○児童生徒等のプライバシー保護に十分配慮した上で、可能な限り詳しい処分事案の公表

(2) 体罰事案等に対する厳正な対応 ※ 体罰により懲戒処分等を受けた者 550人(19年度)

○体罰の未然防止や徹底した実態把握、法務省の人権擁護機関や警察機関等との連携強化

○傷害、常習的、隠べい、特別な支援を要する児童生徒に対する事案等には、免職も含めてより厳重な処分が必要

(3)児童生徒に対するわいせつ行為等の防止等

※わいせつ行為等により懲戒処分等を受けた者 過去2番目の273人(19年度)。うち、児童生徒に対するわいせつ行為により懲成処分を受けた者 126人 (免職121人) (初めて調査を実施)

①児童生徒に対するわいせつ行為を行った教員に対する厳正な対応

○児童生徒に対するわいせつ行為は原則として懲戒免職とするなど引き続き厳正な懲戒処分を徹底 (他校の児童生徒の場合も同様)

○事案が犯罪が当たるか適切に判断を行った上で告発を遺漏なく行うことを含め、警察機関等と連携して、厳正に対応すること

○事実関係の明確化や懲戒処分案の検討には、事案に応じて、 弁護士や医師等の外部専門家の協力を得ること

②予防的な取組等の推進

○SNS等による私的なやり取りを行ってはいけないこと等の明確化、保護者等への周知

○執務環境の見直しによる密室状態の回避、教育指導体制の見直しによる組織的対応、教員や児童生徒に対するアンケート等による実態把握、効果的な研修の工夫などの予防的な取組等を強化

○被害児童生徒の相談体制整備,相談窓口周知、精神的負担軽減等を図るためスクールカウンセラーなど専門家等による適切な支援

③採用前·採用段階における取組の推進

○採用希望者の経歴等の十分な確認(採用関係書類の様式例を参考添付)、官報情報検索ツールの管理及び活用(懲戒免職事由等を官報公告事項とする省令改正)、過去の任命権者である教育委員会への退職理由等の照会等も踏まえた適切な採用判断の実施

○採用前後の研修や教師塾、 教員養成大学と連携した取組等の促進

(4) 政治的行為の制限に違反する行為等の防止等

○政治的中立性を疑わしめる事案が発生することのないよう、服務規律の確保の徹底

(5) 営利企業等の従事制限、教育公務員の兼職·兼業等に関する適正手続

○許可の適正な手続が確実に行われるよう指導を徹底

○部活動改革に関する地域部活動への兼職兼業等については、取扱い等の通知を参照し適切に対応

【教職員人事に関する各種施策】
1.校長・副校長 教頭の登用状況等

※女性の管理職過去最高の13,501人、19.7% (2020年4月1日現在)

○社会の変化や近年の学校を取り巻く状況の変化、地域·学校等の特長·課題を的確に把握し、リーダーシップを発揮して組織的·機動的な学校運営を行う管理職の確保

○マネジメント能力を重視した管理職育成を行うとともに、校長の補佐体制の強化、教頭等の事務分担の見直し、主幹教論の配置、教員出身でない者の登用等の管理職選考の工夫などを通じた優秀な人材の確保

○女性管理職の割合は地域差があることから、それぞれの地域における現状や課題を十分に把握

○第5次男女共同参画基本計画等を踏まえ、校長及び副校長 ·教頭それぞれについての具体的な目標設定、意識啓発、人材育成、働き方改革の取組の推進など、女性管理職増加への取組を一層促進

○文部科学省が主催する人事管理担当者を集めた研修会等において、女性管理職の割合が高い教育委員会の取組事例を共有

2.ハラスメントの防止措置

※ パワハラ、妊娠· 出産 育休等ハラスメントの防止措置が一部進んでいない状況(2020年6月1日現在)

○各事業主に雇用管理上の措置が義務付けられていることから、方針等の規定、相談窓口の設置等の防止措置を確実に実施

○域内の市区町村教育委員会にも取組を徹底

○パワーハラスメント等の行為が明らかになった場合には厳正に対処するとともに、処分に至らない事案も含めて服務規律を徹底

次のニュースを読む >

関連
関連記事