【GIGA到来】地域一丸となって取り組む 東京都練馬区

GIGAスクール構想の前倒しにより、この4月から多くの自治体でハード面については横並びになった。一方で、子供たちの実態に合わせて有効に活用していくために、各自治体では試行錯誤が続いている。昨年度中に区内約4万7000人の全児童生徒に1人1台の端末が行き届いた東京都練馬区では、今年度から教育委員会による新たな研修が始まり、ICT支援員も倍増させるなど、サポート体制を強化。また、2月にはGoogle教育者グループの「GEG Nerima」が立ち上がるなど、区内の教員がつながりながら情報交換したり、学び合ったりする動きも活発化してきている。地域一丸となってICT活用を底上げしていこうとする同区の動きに迫った。

ICT活用推進リーダーの設置とICT支援員の倍増
「情報発信しながら、歩みを止めないようにしていきたい」と練馬区教委の原指導主事

コロナ禍前までは、練馬区も決してICT活用が進んでいたとは言えない自治体だった。「各小学校に20台程度、各中学校に40台程度」という環境から、昨年度中に一気に全小中学校の児童生徒に1人1台の「クロームブック」が配布され、「Google for Education(グーグル・フォー・エデュケーション)」が導入された。

同区教委では端末が配布されるまでも、例えば昨年9月にICT機器の活用リーフレットを発行したり、端末が決定してからは各校に2台ずつ教員の習熟度用端末を配布し、基礎的な操作方法についての研修や、「グーグル・フォー・エデュケーション」の3段階の習熟度別のオンライン研修を行ったりしてきた。

今年度から同区では、各校に1人ずつ「ICT活用推進リーダー」を設置。その教員を対象とした研修を年間5回程度行っていく予定だ。同区教委の原僚平指導主事は「現場の声を吸い上げて実践的な研修をしていくことで、効果的な活用につながるのではないか。各校に1人配置するので、必ず自校の校内研修などで内容を還元してもらうことで、区全体の底上げをしたい」と意気込む。

さらに、今後は全校に向けて実践事例集も発信していくが、「教育委員会として『こういうことをやってください』というトップダウンではなく、各校での好実践を『こんなこともできます』という選択肢として紹介していきたい」と強調する。

また、文科省が2022年度までに4校に1人配置することを目指しているICT支援員についても、同区では今年度倍増させ、約3.5校に1人の配置となる予定だ。

これまでは14人のICT支援員で区内の公立小65校、公立中33校を回っており、各校を1〜2週間に1回程度しか訪問できていなかった。そのため、教員一人一人に対してきめ細やかな支援ができず、支援員が来ても授業支援ではなく校務支援が多くなってしまいがちだったという。

それを今年度は28人に増員するため、各校を週に1〜2回程度回れるようになる。原指導主事は「ICT支援員が学校に来る回数が増えれば、もっと積極的に授業支援ができるようになるなど、支援の幅が広がるだろう」と期待を寄せる。

地域の教員がつながる「GEG」という実践コミュニティー

「GIGAスクール構想は、子供にとってはワクワクだけれども、先生にとっては不安の方が大きい。それでも、みんなでその変化を楽しんでいきましょう」

「GEG Nerima」はフェイスブック上の練馬区内小中学校教員限定コミュニティー

2月11日、オンライン上でそう呼び掛けたのは、練馬区内小中学校教員限定コミュニティー「GEG Nerima」のリーダーを務める練馬区立石神井台小学校の二川佳祐教諭だ。この日は、「GEG Nerima」のキックオフイベントが行われ、約40人の練馬区立小学校、中学校の教諭が「グーグル ミート」上に集結した。

GEG(グーグル教育者グループ)とは、地域の教育者がオンラインやオフラインの交流を通じて共に学び、情報を交換し、互いを高め合うためのコミュニティーで、現在は全国に48拠点ある。各グループはGEGリーダーによって運営されており、グーグルからは完全に独立している。

二川教諭は立ち上げた理由について、「まず“知る”ということ。今は多くの情報に触れることが大事で、GEGがそのきっかけになるような情報提供の場になったらと考えている。そして、まず“やってみる”ということ。体験から得た学びが重要で、この場を通してどんどん体験していってほしい。もう一つは“つながる”ということ。各学校、各教員が手を取り合って、練馬区全体で取り組んでいくことを大事にしたい」と参加者に説明した。

この日は、昨年5月に立ち上げられた「GEG Himeji」から、共同リーダーを務める姫路市立広峰小学校の高田周祐教諭と、設立を提唱した同市立手柄小学校の三浦一郎教諭もゲスト参加。ビジョンやこれまでの取り組みを紹介した。

現在「GEG Himeji」には、市内の公立小中学校の教員を中心に211人が参加して日々、情報交換を行っている。三浦教諭はGEGについて、「実践コミュニティーだと思っている。公の研修会とも違うし、教科の担当者会とも違う。困り事や解決法を、学校や自治体を超えて共有することを大切にしている。ただ情報を集めるだけでなくて、地域の人と人をつなぐことがGEGの良さ」と説明。

さらに、「例えば何かのマニュアルも、GEGで一つ作れば参加メンバーの教員に共有できるので、各学校で作る必要がなくなる。働き方改革にもつながる」と、必要な情報を素早く、一気に横展開していけるメリットについても述べた。

二川教諭からの「今後さらにメンバーを増やしていくために、どうすれば良いのか?」という問いに、高田教諭は「姫路でもまだまだGEGに参加していない教員の方が多い。みんなで進んでいくために、昨年8月から『Himeji G Suite(Google Workspace) Land』というイベントをGEG内で準備し、これまでに5回開催してきた」と事例を挙げた。

「Himeji G Suite(Google Workspace) Land」は、「グーグル クラスルーム」やスライド、フォームなどのアプリケーションの使い方や、学習への活用方法をワークショップ形式で学んだりするもので、毎回参加者は100人を超えるという盛況ぶり。日々のやりとりだけでなく、こうしたイベントを通して「GEG Himeji」のメンバーを増やしているという。

キックオフイベントに参加した練馬区教員は「GEG Himeji」の活動からも刺激を受けたようで、「グーグル クラスルームの校内研修を計画したい」「校内の共有ドキュメントを作り始める」など、明日からのそれぞれのアクションを誓い合っていた。

教員が前向きに取り組んでいくために

その後も「GEG Nerima」では、2~3月に3回連続講座として平日の夕方の休憩時間を活用した「グーグル スライド」を使ったワークショップを開催。春休み期間中にもクラスルーム、フォーム、管理コンソールについてのワークショップを行っている。

二川教諭は「区内の教員がつながることで、情報をキャッチするのが速くなったし、継続的に学ぶことができている。何より、仲間がいると学ぶこともおっくうではなくなる。教員のICTに対する心理的なハードルが下がっていっているのがよく分かる」と変化を話す。

今後も「GEG Nerima」では、平日夕方の休憩時間などを活用し、気軽に短時間で学びにアクセスできるようなワークショップなどを行っていく。また、互いの実践を発表できるような場も作っていく予定だという。

「変化はネガティブなことではなく、ポジティブなこと。この変化の時代を、子供たちとともに楽しめる教員を一人でも多く増やしていきたい」と二川教諭は力を込める。

次のニュースを読む >

関連