【GIGA到来】現場奮闘、「ルール作り」に悩み 教育新聞調査

GIGAスクール構想を巡り、教育新聞が教員を対象に実施した1人1台端末環境に関するウェブアンケートでは、小中学校などの教員から学校現場での課題や工夫など、生の声が多数寄せられた。端末や周辺機器の整備、家庭との連携、組織体制など問題が山積している中、教員がさまざまな工夫で困難を乗り越えようとしている姿が浮かび上がってきた。端末が整備されつつある現在、とりわけ多くの教員が頭を悩ませているのは、端末を管理・運用する上での「ルール作り」だった。子供たちに「ルール作り」を話し合わせることで好結果を得ている事例が示される一方、そうした対応を現場の教員任せにするのではなく、学校管理職や教育委員会がリーダーシップを発揮するよう求める声も多かった。

端末は届いたけれど…
GIGAスクール導入に関する自由回答より

小中学校・義務教育学校・特別支援学校の教員・学校管理職が自由回答で寄せた内容によると、まず端末整備の面では大半の教員に1人1台端末が届いているが、一部では「整備される見通しがない」(北関東/私立小教諭・30代)、「全員に行き渡るだけの台数は確保していない」(都内/私立小教諭・60歳以上)、「1年生から3年生については端末が用意されていない」(北海道/公立小教諭・40代)などの実態があった。

また端末が届いても「機材が届いただけで、ほとんど白紙の状態」(東海/公立小教諭・40代)という声や、「モバイルルーターが20台ほどきたが、予算の関係で使えるのが2台だけ…。正直、意味がない」(南関東/公立特別支援学校教諭・30代)、「児童の作業を一斉管理する(見える)システムがないので、児童の学習のプロセスが見えにくい」(都内/公立小教諭・40代)など、1人1台の効果を十分に発揮できていない状況も見られた。

九州・沖縄の公立小教諭(40代)は「児童の学習のためという理由で、教師用の端末がないことも、使いづらいと感じる。もちろん予備の端末もないし、金額を抑えるために保証もつけていない。カバーもないので、いつ落としたり故障したりするか分からない状態。子供たちに自由に使わせるのは難しいと感じる」と危機感をあらわにした。

特別支援学校の教諭からは「特別支援の生徒が使いやすいといわれているiPadの導入を希望したところ、義務教育(の端末)がクロームブックであることを理由に、またしても義務教育とは分断され、教委のサポートも受けづらい事態に陥ってしまった」(南関東/公立特別支援学校教諭・30代)という声も上がっている。

通信環境については「CPUの性能が低く、リモート授業中に動きがもっさりしている。校内で数百名の生徒がネットにつながるとサーバーがダウンする」(九州・沖縄/公立中教諭・40代)との声も。「時間や人数を制限して使った」(南関東/公立中教諭・20代)など、同時接続に制限を強いられる状況も少なくないようだ。

家庭への持ち帰りが想定されていることから、家庭との連携を課題とする声も多かった。「ネット環境が整っていない家庭への配慮や、端末の保証が課題」(九州・沖縄/公立小教諭・40代)など、家庭の通信環境を心配する声は多く、「家庭でWi-Fiがつながっていないところがあり、教員が支援に行った」(近畿/公立小教諭・20代)というように、対応に追われるケースも見られた。

対応に追われ、仕事が増える実情も

端末が届き、授業で日常的に活用していると回答した人では「(授業中に端末での)作業に夢中になり、指示が通らない場合がある。切り替えに関する指導の充実が必要」(都内/公立小教諭・40代)、「保護者からの『ログインできない』という問い合わせや、児童の端末破損による修理などの対応の劇的な増加」(都内/公立小教諭・30代)と、もともと忙しい教員にさらなる負荷がかかっている実情もうかがえる。

端末の導入に疲弊している教員の声も届いた。「何もないただの箱を渡されて、全てのパソコンを先生方でインストールせよ、と言われて、期限を切られ、やらされて、エラーが出た時の処理も分からず。正しい使い方も教えなければならないし、仕事が増えただけ。倒れそうです」(北陸・公立中教諭・50代)と悲鳴が上がる。

さらには「教育委員会から『児童の学習のために使うものであり、教師の働き方改革のためではないので、健康観察などでは使えません』という回答が来た」(九州・沖縄/公立小教諭・40代)と、教員の働き方改革に逆行する指示もあったようだ。

「YouTube見放題」が心配

教員が最も頭を悩ませているのが、端末を管理・運用する上での「ルール作り」だ。とりわけ家庭に持ち帰る際や休み時間などに「YouTube見放題となり家庭学習の時間が減りそうで怖い」(北関東/公立小教諭・30代)、「大人が見ていない間の動画視聴に課題を感じる。無制限にYouTubeを見ることが可能な設定であるため、自治体単位で制限できるような設定がほしい」(都内/公立小管理職・50代)といった懸念の声が相次いだ。

「休み時間にYouTuberの動画を視聴している生徒もいる。直接授業に関係ない場合であっても、今後の社会において動画編集のスキルも場合によっては必要になるため、一概に娯楽と受け止めてよいものか、指導に悩む場面もある」(都内/公立中教諭・30代)と、端末操作のスキル向上との間で葛藤する声もあった。

ここでは組織の問題を挙げる人も多く「生徒自身にルールを決めさせること。自分で使い方をジャッジ(判断)させること(を意識している)。しかし管理職の消極的姿勢があり、持ち帰りなど制限がかかることが多い」(東北/公立中教諭・30代)、「使わせたい教員と、苦手・トラブルを懸念する教員との間でルールの方針に差がある」(近畿/公立小教諭・30代)など、校内での温度差に悩む声もあった。

さらに、教委との役割分担を課題とする指摘もあった。「詳細なガイドラインを学校が作成するのか、教委から通知されるのか不透明」(南関東/公立小教諭・20代)、「写真や動画など、個人情報の取り扱いについて教委からガイドラインが示されておらず、学校任せになっている」(北海道/公立小教諭・50代)といった声が寄せられた。

制限をかけすぎない対応も多数
管理・運用ルール作りに関する自由回答より

教育新聞は今回、課題に直面した際に取った対応についても尋ねた。特に課題として挙げる教員が多かった管理・運用のルール作りについて、すでに端末を授業で日常的に活用している教員からは「制限をかけすぎないようにしている」という対応が多いことが分かった。

「制限をしないこと。学習に必要なことに使う、相手を傷つけない、教師の許可を得る、でよい」(南関東/公立小教諭・30代)、「『タブレット10の約束』を作成して、学習に使うことを明記した上で、結構自由に活用させている」(近畿/公立小教諭・40代)など、最低限の原則を示すにとどめ、あとは子供の自主性に任せる考え方も広がりつつある。

近畿地方の公立中教諭(50代)は「生徒をコントロールする意識を手放し、生徒との信頼に基づいた学校作りを進めていく中での端末導入だった。それが功を奏して、学びに向かう落ち着いた環境へと一段と進んだように思う」と振り返る。「休み時間にゲームをすることはあったが、見守りながら軽く声をかけ、時々学校全体に『学びに使っていますか』と問う、という対応。従前の生徒指導的な対応はあえてしない」と記した。

北海道の公立小教諭(20代)は「多くの先生が、子供たちに失敗させることを恐れている印象がある。まずは渡してみて使わせ、子供たち自身に『どんな危険性があるか』『どのように使うと便利になるか』など使い方について問い、子供たち自らルールなどを設定できるようにすればよいと個人的には考えているが、なかなか浸透していない」と答えた。

通信環境などのトラブルに直面した時の対応についても、多くの回答が寄せられた。「同時接続できなくなった際、再接続を待つだけで課題に取り組めない児童が出てしまった。プリントなどアナログの課題も用意した」(南関東/私立小教諭・30代)と、紙とデジタルを併用した例もある。「みなが動画を見たり会議をしたりすると(通信速度が)遅くなるので、なるべく分散し、必要なければカメラをオフにするなど(の対応をした)」(南関東/公立中教諭・30代)など、不十分な通信インフラをカバーする工夫もあった。

中には「想定外の(トラブルの)場合はチャンスと捉え、そのつどチームで話し合って具体的に提案していった」(都内/公立小教諭・30代)という前向きな声も。1人1台端末という経験したことのない環境を前に、さまざまな困難に見舞われながらも奮闘する学校現場の姿が浮き彫りになった。


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