【GIGA到来】教育困難校での運用に悩み 教育新聞調査

GIGAスクール構想の本格始動に合わせ、教育新聞が小中高などの教員を対象に実施した、学校現場の1人1台端末環境に関するアンケートでは、端末を活用する上での懸念点や先進的な活用事例など、学校現場の声が数多く寄せられた。中でも、いわゆる教育困難校での端末導入について慎重な意見が見られ、「授業中の遊び道具を与えるだけでまったくもって効果がありません」などと赤裸々な訴えもあった。さらに教員用の端末が整備されず授業準備に苦戦したり、支給された端末のスペックが低く思うように活用できなかったりと、右往左往する教員たちの現状が浮き彫りとなった。一方で多数の課題を抱えつつも「教師が『やりたい』よりも、生徒が『やりたい』を優先したい」と前を向き、授業や学校行事での端末活用に挑戦し続ける心強い教員の姿も垣間見えた。

教員用の端末なく授業準備に支障も
1人1台端末活用に関する自由回答より

小・中・高、義務教育学校、特別支援学校の教員・学校管理職が自由回答に寄せた内容によると、端末を活用する上で懸念されるのが、教育困難校や課題を抱えた学級での運用方法だ。

「いわゆる教育困難校では、授業中の遊び道具を与えるだけでまったくもって効果がありません」(中国/公立高教諭・20代)、「正直に言うと、学力の低い学校での(端末の)扱い方によっては生徒指導が増える」(四国/公立高校教諭・20代)、「良い事例だけで導入を進められると、課題を多く抱えた学校で大変困る」(中国/公立高教諭・20代)など特に高校から慎重な声が寄せられ、所属校の実情に沿った端末活用について思い悩む教員の存在が浮かび上がった。

また「授業の指示が通りにくい生徒は、指示されたことではなく、(端末を)自分の使いたいように使ってしまい、(教員の)指示が通らなくなるのではないか」(東海/公立中教諭・20代)と、指導力に自信を持ちきれない教師の本音も見受けられた。

端末のスペックや使用するソフトなど、整備上の課題についても多くの指摘があった。授業を担う教員自身の専用端末がないことを取り上げ、「教員には持ち運びできる個人パソコンがない」(九州/公立高教諭・30代)、「教員用がないため、実際使うときのイメージが湧きにくい」(近畿/私立中教諭・30代)などと問題視する意見もあった。

また「文科省が推奨しているスペックがあまりに実態と乖離(かいり)していて、予算を付けないところに及び腰を感じる。電子機器も消耗品なので、遅くとも5年単位で更新できるものにしてほしい」(南関東/公立高教諭・30代)、「もっとスペックのいい端末がほしい」(南関東/公立小教諭・40代)など、授業に活用する上で機能に物足りなさを感じている教員もいた。

北関東の公立小教諭(30代)は「イースクールの情報活用能力の体系表などをもとに校内でカリキュラム化したいが、周りの理解がまだそこまで追い付かない」と、周囲との摩擦が起きないように配慮してICT機器を思うように利活用できない心情を明かした。

さらに「自治体によって端末やソフトが違い、異動によってこれまで作成したものが使えなかったり、非常に手間がかかったりする」(四国/公立小教諭・50代)、「教材作成に時間がかかるものばかりで、ある程度教科書準拠の比較的簡単に授業で使えるソフトが必要」(近畿/公立中教諭・50代)など、端末活用が進むにつれて、さらに深刻化しそうな問題点を指摘する教員もいた。

公立と比べ、端末活用が比較的進んでいる印象のある私立でも「私立は高い費用をかけた機器を有効に使うための研修や支援が不足している」(南関東/私立中高一貫校高等部教諭・50代)、「私立学校であるため、ICT導入の費用が潤沢ではなく、早期の導入が難しい状況」(東京都/私立高校教諭・20代)など、学校によって状況に大きな違いがあることが浮かび上がってきた。

児童生徒の視力低下など、健康への影響を危惧する意見もあった。

保護者との交流で有効活用を期待
利用中のツールに関する自由回答より(UserLocal テキストマイニングで分析)

さらにアンケートでは、学校現場のICT活用を促進するために利用しているアプリやツールについて質問。自由回答の結果を分析したところ、「グーグル クラスルーム」「ロイロノート」「マイクロソフト チームズ」が、3大ツールとして多くの学校で導入されている様子がうかがえた。ベネッセ系の「ミライシード」「Classi」、リクルート系の「スタディサプリ」、オンラインで授業を配信する「MetaMoJi」などの支持も高かった。

端末の活用事例については、数々の先進的な取り組みが寄せられた。

すでに端末が整備され、日常的に活用しているという東京都の公立小教諭(40代)は「グーグルのアプリ(スライド、ドキュメント、スプレッドシート)を活用して、クラス児童のノートや考えを共有、同時編集」「国語で物語を作り、iMovie の予告編で編集させる」「グーグル クラスルームを活用し、係活動を学校と家庭でシームレスにさせる」「オンライン保護者会の実施」などと回答。

他には、「(コロナ禍で)実演できない内容や、実際に現場に赴いて鑑賞することができない内容の動画を配信し、想像しやすいように活用した」(南関東/私立高校教諭・20代)、「保健室登校児童、基礎疾患のある児童への学習支援」(東京都/公立小管理職・50代)、「前年度の修了式で、(生徒が)タブレットを使って事前に作っていた、担任向けのありがとう動画をプレゼントした」(近畿/公立小教諭・40代)など、さまざまな取り組みが示された。

まだ1人1台端末の整備されていない高校では、生徒のスマートフォンを活用して「担当の英語でプレゼン動画を生徒個々に撮影させて、ウェブ上で回収し、教室内で上映会(評価)を実施した」(南関東/公立高校教諭・30代)など、BYODの観点から生徒の学習環境を整えている事例もあった。

一方、これから挑戦したい取り組みでは、保護者との連絡や情報交換を挙げる意見が目立った。

「学級だよりや連絡帳での連絡事項など、紙媒体で家庭へ連絡していた内容を端末でできると、保護者が目を通したかを確認したり、紙の利用を減らしたりできる」(甲信越/公立小教諭・30代)、「保護者や児童へのアンケートを端末で行えるのではと期待している」(北関東/公立小教諭・30代)、「授業参観や学習発表会、運動会などの参観」(東京都/公立小管理職・50代)など、コロナ禍で激減した学校と保護者の交流の代替手段として期待が寄せられた。ただ、実際に運用するためには、各家庭のオンライン環境の整備や保護者の理解などが課題として残されている。

また教員自身の授業への向き合い方については、「生徒が制限を感じることなく、のびのびと使用できる環境整備を模索している」(南関東/私立高校教諭・30代)、「教師がやりたいよりも、生徒がやりたいを優先したい」(北海道/公立中管理職・50代)など、児童生徒が端末を活用し学びを深めるために、教員が柔軟な発想で取り組む必要性が指摘された。


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