コロナ禍で役割増すSNSの相談窓口 子供のSOSどう拾う?

コロナ禍で2度目の入学式シーズンを迎えた。例年、春休みからゴールデンウィークにかけては、新しい学校生活で子供たちの悩みやストレスも増える時期だ。SNSによる相談窓口は、そんな子供たちの心のSOSを拾う重要なツールだが、中国の関連会社で個人情報が閲覧できる状態になっていたことが問題となったLINEを活用している相談窓口の一部が停止されている。コロナ禍で重要性を一層増しているSNSによる相談窓口の可能性や課題について、SNS相談の質の保障などに取り組む全国SNSカウンセリング協議会の浮世満理子常務理事に聞いた。

赤信号の手前の段階にまで追い込まれる子供たち
――コロナ禍でSNSの相談窓口に寄せられる相談には、どのような変化があったのでしょうか。
インタビューに応じる浮世常務理事

新型コロナウイルスは子供たちのコミュニケーションを分断させてしまいました。それは、休校期間中だけでなく学校が再開されても同じで、子供たちからは「学校でどんなノリで友達としゃべったらいいのか分からない」「パーテーションで仕切られたり、給食中も話ができなかったりして、雑談もできなくなる」などの声が寄せられました。加えて、学校や家族でもしも感染者が出たらという不安や恐怖が、大きなストレスになっています。

大人はストレスを抱えたときにさまざまな気晴らしができますが、子供はそれが限られています。それに卒業式をはじめとするさまざまな学校行事が子供に与える比重は大きく、それができないことは、子供の自己否定感を強めてしまうことになりかねないのです。

日本では、SNSによる相談窓口は2018年に本格的に始まりましたが、このコロナ禍で、従来から生きづらさを感じていた層に加えて、普段であれば大丈夫であった子供たちも、急速に赤信号の手前の段階にまで追い込まれている。リスクが高まっていると感じます。

コロナ禍の影響は大人でも深刻で、虐待やDV、希死念慮の相談の中で緊急対応が必要なものも急増しました。これを受けて、厚労省や文科省もSNSの相談窓口の拡充を図ったのは、とてもよいことだと思います。

公的な相談窓口を止めるべきではない
――そんな中で、LINEで中国の関連会社が個人情報を閲覧できる状態になっていたことが問題となり、一部の相談窓口が停止してしまっています。

子供たちからのアクセスは、圧倒的にLINEです。電話やメール、その他のウェブツールでは、代替できない側面があると思います。

今回の報道では、実際に個人情報の漏えいや情報流出が確認されたわけではないのに、あまりにもネガティブに取り上げられ過ぎたのではないかと思います。もちろん、LINEの体制に問題があったことは確かで、調査や対処を早急に行う必要があります。

しかし、相談件数が多くなるこの時期に止めるというのは、まるで今まさに火事が起きているのに、「近くの池の水は水質に問題があるから火消しに使えない」と議論しているようなものです。LINEによる相談窓口は止めずに、より安全性を高める措置を同時並行で考えるべきです。LINEの相談窓口を止めている国や自治体などには、もう少し俯瞰(ふかん)的に捉えて対応してほしいと思います。

――公的なLINEの相談窓口が使えないことで、他にどんな問題が考えられるでしょうか。

先ほども指摘したように、メールや電話などの他の手段は、子供たちにとって大きなハードルがあります。ちゃんとしたカウンセラーが対応している公的な相談窓口にアクセスできないとなれば、子供たちはネット上で相談先を探すことになるでしょう。そのとき、カウンセリングの知識がない人や、悪意のある人につながってしまう危険性も考えられます。神奈川県座間市で起きた殺人事件のように、ネットで悩み相談に乗るふりをしながら、子供たちを監禁し、殺してしまうことだって起こらないとは限りません。

私たち民間事業者も、信頼性の高い相談窓口であることを認証するような制度を導入したり、団体のプロフィールを公開したりするなどの対策の必要性は急務だと感じていますが、教育委員会などの公的な機関が相談窓口を置く意味を今一度考えていただきたいのです。SNSの相談窓口は、保護者にも、教員にも相談できない子供にとって、最後の相談先なのです。

教員向けのSNSの相談窓口を
――新年度を迎え、学校では新しい学年がスタートします。学校の教員はどのようなことに気を付ければいいでしょうか。

コロナ禍はまだ続いていて、子供たちはさまざまなストレスを受け続けているので、今まで以上にアンテナを高くして、いじめの兆候などに気を付けてほしいと思います。

ただ、いじめと一口に言っても、最近は表面的に見えるものばかりではありません。相談の中には「何となく仲間外れにされている気がする」「本音を言うと『空気が読めない』と言われ、友達と話すのが嫌で学校に行きたくない」といった声も聞かれます。コロナ禍で、さまざまな行動が制約されるので、子供たちは

必要以上に神経質になっていると言えるかもしれません。

学校の教員も保護者も、子供が学校に行くことを嫌がるようなときに、「学校に行かなければいけない」と強く責めるのではなく、行きたくない理由をしっかり聞いてあげ、行きやすいような環境をつくるようにしてあげてください。そうやって、普段から本音を言えるような関係を築いていくことが大切です。

――そうなれば、いじめなども早期に発見・対処しやすくなるし、子供にとっても学校が居心地のよい場所になると思います。

いじめへの対応では、教員が一人で抱え込まずに、オープンに相談していく必要があります。いじめの問題は複雑で、教員が一人で対応できるものではありませんし、教員だけに責任を押し付けるものでもありません。

個人的には、SNSの相談窓口は子供だけでなく、教員にもあったらいいのにと思います。いじめの対応での困りごとだけでなく、深刻なメンタルヘルスなど、守秘義務を担保した上で、カウンセラーをはじめとするチームで相談に乗りながら、必要があれば関係機関につなげ、連携して対処していけるような仕組みができないものでしょうか。SNSを活用して、学校の教員を支援していくような取り組みをやっていく必要性を強く感じています。

【プロフィール】

浮世満理子(うきよ・まりこ) 全国心理業連合会公認上級プロフェッショナルカウンセラー。全国SNSカウンセリング協議会常務理事、全国心理業連合会代表理事、アイディアヒューマンサポートアカデミー学院長を務める。教育・医療福祉・アスリートや企業経営者など心のケアを行う。SNSカウンセラーの育成にも取り組む。


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