「中学校通信制の灯を消さないで」 支援団体が存続訴え

都内で唯一、中学校の通信教育課程が設置されている千代田区立神田一橋中学校の、通信制の存続が危ぶまれているとして、夜間中学の支援に取り組む団体「夜間中学校と教育を語る会」が4月21日、記者会見を開き、同校の通信教育課程の存続などを国や区に求める署名活動を始めたことを明らかにした。署名では、全国的に設置が進む夜間中学への通信制の併設も求めており、同会は「通信制の入学条件を柔軟にするとともに、夜間中学に通学が難しくても通信制で学べる制度を考えてほしい」と話している。

都内で唯一の通信教育課程が設置されている千代田区立神田一橋中

同校の通信教育課程では、戦前と戦後の義務教育制度のはざまにあって中学校で教育を受けられなかった、旧制度の義務教育修了者(尋常小学校卒業者など)を対象に生徒を受け入れている。しかし、対象がおおむね80歳代後半以上に限られ、現在は91歳の女性1人が3年に在学するのみで、来年春に卒業すると生徒がゼロになる可能性があるという。

こうした中、「夜間中学校と教育を語る会」では、同校の通信制が廃止される動きがあるとして、存続などを求める署名活動を始めた。具体的には、国と都、千代田区で協議して柔軟に対応し、中学校通信制の入学条件を撤廃して、年齢に関係なく義務教育未修了者が入学できるよう制度を見直すことを求めている。さらに全国的に夜間中学の整備が進む中、通信制を併設して通学が難しい人も教育を受けられるようにしてほしいと求めている。

現時点で100人を超す署名が集まっているといい、同会は21日、千代田区教委や区議会5会派に要望を伝えた。要望に対し、千代田区教委子ども部は「生徒がいなくなれば休校する可能性はあるが、現時点で廃校は考えていない」と答えたという。同会はさらに署名を集めて文科相に提出したいとしている。

記者会見する「夜間中学校と教育を語る会」のメンバー

同会の浦川文秀会長などは会見で、「神田一橋中学校の通信制は風前の灯であり、門戸を広げて柔軟な対応をしてほしい。また、夜間中学が各地に増えるのはいい流れだが、高齢や身体障害、引きこもりなどで通えない事情のある人もおり、そうした人たちの学びたいというニーズに応えられるよう、通信制を選択できる制度も必要であり、国などに対応をお願いしたい」と述べた。

また、会見には5年前に神田一橋中学校の通信制で学ぶ人を記録した映画『まなぶ』を制作した太田直子監督も同席。太田さんは「当時、校長の裁量で本来は入学できない戦後生まれの生徒も受け入れていたが、彼らにとってかけがえのない経験だった。戦後の義務教育を受けられず取り残された人がいたことも知ってもらい、夜間中学と通信制の連携に生かしてほしい」とエールを送った。

夜間中学を巡っては、国は2016年12月に成立した「教育機会確保法」を受けて、18年6月に「第3期教育振興基本計画」を策定するなど、全都道府県と政令市に少なくとも1つの夜間中学の設置を目指している。今年4月には徳島県と高知県で新たに開設され、現在は12都府県で36校の夜間中学が運営されている。

来年4月には札幌市と相模原市、香川県三豊市で開設される見通しで、菅義偉首相は今年1月の国会質疑で、今後5年間に全都道府県と政令市への設置を目指す方針を示している。


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