一部時間帯だけ自宅で学習 大阪市の方針に現場は混乱

新型コロナウイルスの感染拡大により、緊急事態宣言が発令されることを受けて、大阪市は4月22日、小中学校で一部の時間帯に自宅でのオンライン授業を実施する、独自の対応方針を通知した。GIGAスクール構想により1人1台の学習者用端末が配備されたものの、子供への配布がまだできていない学校もあり、情報が錯綜(さくそう)して保護者からの問い合わせが殺到するなど、学校現場は混乱の渦に巻き込まれている。

■給食を食べに学校へ

市教委の方針では、小学校の場合、児童は1、2時間目は自宅で動画配信や配布されたプリントなどによる学習を行い、その後、学校に登校。3、4時間目は1、2時間目に行った学習の振り返りなどをし、給食を食べる。午後は再び自宅に戻り、学校で配られたプリントなどの課題に取り組む。

中学校の場合、生徒は午前中に自宅で動画配信や配布されたプリントなどによる学習を行い、給食を食べに登校。午後は午前中に取り組んだ課題の振り返りなどをし、下校する。部活動は原則として行われない。

登校時間が変則的になることから、市教委が示した例を踏まえ、各学校で時間割を編成する。

3度目の緊急事態宣言における大阪市の対応方針

また、小中学生ともに、家庭の事情により自宅での学習が困難な場合は、学校で子供を預かる。

動画配信は昨年の緊急事態宣言による一斉休校中に、市教委が作成した授業動画を活用することなどが想定されている。自宅で動画配信による授業を受けられるようにするため、市教委では各学校に対し、端末にログインする指導などを行うよう求めているが、対応が困難な場合は紙のプリントやドリルなどを利用する場合も考えられるとしている。

この方針について4月21日の記者会見で松井一郎市長は「第三波のときと比べると、子供同士の感染も見受けられるようになった。病床もひっ迫している状況なので、できるだけ自宅に居られる方は自宅でオンラインを活用して勉強してもらおうということだ。(オンラインとリアルの)両方できるということで、ありとあらゆる手段を講じて子供たちの健康を守っていきたい」と強調した。

■保護者からの問い合わせが学校に殺到

大阪市の対応を巡っては、4月19日に松井市長が「オンラインのシステムはこの4月から全ての小中学校で稼働できるようになっているので、休校にはしないが、自宅で過ごせる子供たちについてはオンライン授業を選択する形を取る。子供たちの学ぶ権利もあるので、授業はオンラインで実施する」と記者会見で発言したことを受けて、市教委や学校現場は対応に追われた。

ある市立小学校の教諭は「端末は届いているが、まだ個人に配れてはいない。4月はただでさえ業務が多く、オンライン授業への対応を検討している時間すらない。このままではICT担当の教員が倒れてしまう」と悲鳴を上げる。オンライン授業を実施することはインターネットのニュースで知らされ、保護者から学校の方針を確認する電話が殺到したという。

「多くの子供も教員も、オンライン授業を体験したことがない。時間割や登下校の安全確保はどうするのか、自宅で過ごせない子供を預かりながら、オンライン授業にも対応することになり、マンパワーが圧倒的に足りない」と訴えた。

一方で、ある市立高校の教諭は「勤務している高校では教材配信のシステムはすでにあり、昨年の一斉休校のときのノウハウもあるので、対応はできるだろう」と話す。その上で、小中学校でも一斉に動画配信などを行った場合に、市内の学校をつなぐネットワークにどれだけの負荷がかかるかは未知数だと指摘。「大阪市内でも経済的に厳しい家庭が多い地域では、仕事を休める保護者も少ないし、ネット環境も不十分な家庭も多いと思われるので、オンライン授業への対応は厳しいのではないか」と懸念する。

■まずは連絡手段として端末の活用を

大阪市の今回の対応について、教育の情報化が専門の豊福晋平・国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授は「学校に来られない児童生徒だけ端末を活用し、ハイブリッド型の授業を求める声があるが、ハイブリッド型授業は学校現場の負担が大きい。(先進的な取り組みをする)大阪府寝屋川市のように、どこでも簡単に実現できるものではない」と指摘。

その上で「1年前の一斉休校の際に、どのような学びの保障手段が学校に求められたのか、今一度思い出してほしい。最も困ったのは、児童生徒と対面できず連絡手段がなくなり、3カ月間『ほったらかし』の状態になったことではないか。保護者とのやり取りも途絶え、わだかまりや不信感が生まれたケースもある。1人1台端末があれば、そのライフラインが保障できる。端末を活用して授業をする以前に、まずは端末を活用して(非常時の)学校と家庭間の連絡を途切れさせないようにするのが先決だ」と話す。


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