出生数80万人割れ、コロナ禍で少子化急加速 諮問会議試算

政府の経済財政諮問会議(議長・菅義偉首相)は4月26日、少子化対策と子育て支援について集中的に議論を行い、席上、民間議員がコロナ禍で妊娠届出数が大幅に減っているとして、2021年の出生数が「80万人を下回る可能性もある」との試算を示した。これまで政府の推計では80万人を下回るのは2030年ごろと予測しており、コロナ禍によって少子化が一気に前倒しで進んでいることが示された。また、自民党が設立に向けて議論している「こども庁」について、「組織論から入るのではなく、(中略)必要な機能を明らかにし、それに最もよく対応できる組織とすることが期待される」として、幼児教育と保育、児童虐待、障害児の保育・教育・福祉など、現在、複数の省庁で縦割りになっている業務の一元化などを求めた。

出生数の長期推移(経済財政諮問会議の資料より)

民間議員が提出した資料によると、コロナ禍を受けた婚姻・妊娠・出生数の動向について、婚姻数が昨年に54万件で前年比13%減と大幅に減り、婚姻届出数も昨年4~10月の7カ月間で前年同期比7.1%減の大幅な落ち込みとなったことを示し、この数字を根拠として、出生数は「2021年に80万人を下回る見込み」と予測した。

出生数は16年に97万6979人となって初めて100万人を割り込み、19年には86万5234人まで減少。政府は昨年度の少子化社会対策白書で「86万ショック」として危機感をあらわにした。民間議員が示した21年に80万人を下回るとの予測は、86万人ショックを大きく上回るペースで少子化が進んでいることを示している。

国立社会保障・人口問題研究所が示した「日本の将来推計人口(2017年推計)」では、出生数が80万人を割り込むのは中位予測で30年ごろとの見通しを示しており、この予測が約10年早く現実になってしまうことになる。学校基本調査によると、小学1年生の児童数は20年で101万8315人(男児52万542人、女児49万7773人)。21年の新生児が就学する27年には、小学1年生が現在よりも2割以上も少ない80万人未満になってしまうという、衝撃的な数字となった。

こうしたコロナ禍による急激な少子化に対応するため、民間議員は「社会全体で危機感を共有していくべき事態」であり、「若年層の雇用・所得環境を引き上げ、社会全体で安心して結婚し子供を産める環境を整えていくべき」だと指摘。具体的には「若者の婚姻・出産には、出会いの機会の不足に加えて、年収が少ないと子供が少ない、出産後の就業継続が難しい、男性の家事·育児時間が短いと第2子を持たない傾向など、働き方と所得環境が大きく影響しており、成長と雇用の好循環の拡大の実現は少子化是正に大きく寄与する」と提言した。

こうした少子化対策は、6月初旬に閣議決定される「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太の方針)に反映される見通し。

また、「こども庁」構想について、自民党が骨太の方針に盛り込むことを念頭に議論を進めていることを受け、民間議員は「組織論から入るのではなく、 児童虐待や子供の貧困などをなくし、子供および子育て世帯が安心して暮らせる社会を実現するために必要な機能を明らかにし、それに最もよく対応できる組織とすることが期待される」と指摘した。

「こども庁」が備えるべき具体的な機能として▽子供子育て世帯関連、少子化対策の政策立案·総合調整▽政府全体の関連予算の一元化、関連政策全体の政策評価と PDCAの実行▽各省の関連施策の縦割り業務(幼児教育·保育、児童虐待=児童相談所、警察=、障害児等に対する保育·教育·福祉の担保等)の一元化▽地方(自治体、支分部局)との連携--を挙げた。

民間議員の「こども庁」構想に対する指摘について、内閣府の担当官は「検討を行う際には、こういった考え方で進めることが必要ではないかと示したまで。民間議員が『こども庁』の設置を求めているわけではない」と説明した。

経済財政諮問会議がまとめる「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太の方針)は6月上旬に閣議決定され、来年度予算編成の基本的な方針となる。昨年の「骨太の方針」では、「新たな日常」(ニューノーマル)の構築をうたう中で、学校のデジタル化のほか、「少人数によるきめ細かな指導体制の計画的な整備」として少人数学級の方向性を打ち出し、それが予算編成過程で小学校全学年の35人学級の実現につながっている。

「こども庁」構想も骨太の方針に盛り込まれれば、そのまま来年度予算編成に反映されることになる。そうした状況を見越して、民間議員による提言内容は、「こども庁」構想を骨太の方針に盛り込む際の基本的な方向を示したものとみられる。


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