【緊急事態宣言】子供のストレス GWに大人ができること

コロナ禍で迎える2度目のゴールデンウィーク。緊急事態宣言や「まん延防止等重点措置(まん延防止)」の対象となる地域もあり、人の多い場所への外出などは控えることが求められている。そうした中で心配なのは、子供が抱えているストレスだ。新年度が始まって1カ月が過ぎ、新しい学校生活に対する疲れも見え始めるこの時期、保護者や教員はどのようなところに注意すべきか。コロナ禍での子供の心の状態をリサーチしている専門家に取材した。

2年目のコロナ禍の中にいる子供の状況

昨年のGWと今年のGWでは、コロナ禍であることは共通していても、子供たちが置かれている状況は少し異なる。
2015年から青森県弘前市教委と連携して、市内の公立小中学生のメンタルヘルスを継続的に調査している弘前大学大学院保健学研究科の足立匡基(まさき)准教授は、これまでの調査を踏まえて「全ての子供たちがコロナ禍によってメンタルヘルスを悪化させているわけではなく、大部分の子供はこのような状況下においても心の健康を維持している。注意を向けなければならないのは、コロナ禍以前から、ぎりぎりのところで踏ん張っていた子供たちだ」と話す。

例えば▽家庭に問題がある▽居場所がない▽発達的な偏りから対人関係が苦手▽叱られることが多く自信をなくしがち――などの問題を持ちつつ、何とかやれていたハイリスク群の子供たちが、徐々に追い込まれているという。

一方で、昨年から複数回にわたり、子供と保護者を対象にしたアンケート「コロナ×こども調査」を実施している国立成育医療研究センターの半谷(はんがい)まゆみ医師は「昨年は一斉休校でみんな同じつらさや方向性を共有していたが、今年はコロナに対してうまくやっていく術を身に付けている子と、ストレスや不安を抱えている子に二分されている。後者の子たちはもちろんのこと、前者の子たちでも、口では『大丈夫』と言っていても、本人が気付かないストレスを抱えていて、イライラしているなどの行動面でSOSのサインが表れることがある」と注意を呼び掛ける。

家庭や学校で子供が見せるストレスのサインの例

また、養護教諭を対象にコロナ禍の状況を定期的に調査している埼玉大学の戸部秀之教授が、3月末~4月に行った調査では、いまだに子供たちに「コロナ禍におけるゲームやインターネットの過剰使用とその影響」があるという回答が8割、「コロナ禍における体力低下とその影響」が見られるとの回答が6割に上ることが示された。さらに、5割以上の養護教諭が「身体的距離、会話や遊びの制限」や「学校行事の縮小」が子供に与える影響を問題視し、新年度になって感染拡大が続く中で、学校生活に不適応を示す子供が増加したと答えていた。

戸部教授は「コロナ禍1年目の子供たちへの影響はまだ続いている。今後も長引く可能性が高い現状では、子供たちの健康や発達に一層、目を配る必要がある」と警鐘を鳴らす。

GWは子供の気持ちに寄り添う時間を

人の多いところへの外出を控えることなどが求められているGW期間中、家で過ごすことがどうしても多くなる中、保護者は子供とどのように接すればいいのか。

戸部教授は、家庭や学校で子供が見せるストレスのサインの代表的なものとして▽腹痛や頭痛などの体調不良、急な体重変動などの「体に表れるサイン」▽登校しぶり、落ち着きのなさなどの「行動に表れるサイン」▽表情が乏しくなる、落ち着きや集中力の低下、急にかっとなったりふさぎ込んだりするなどの「情緒や態度に表れるサイン」▽孤立することが多い、あいさつしても返事がなかったり、声が小さかったりするなどの「対人関係に表れるサイン」――を挙げる。

こうしたサインを見落とさないようにするためにも「なるべく保護者には、子供の話や気持ちを聞くことにたくさんの時間を使ってもらいたい。子供の経験や感じ方を受け入れ、理解しようとする態度が子供にとっての心のサポートになる。できれば、密を避けつつ屋外で体を動かすなど、一緒に活動する場や時間を共有する体験を意識的につくってほしい」と話す。

半谷医師がまず注意を呼び掛けるのは、メディアとの接触だ。「コロナ×こども調査」では、コロナ禍で子供がテレビやスマートフォンなどで情報に触れる時間(スクリーンタイム)が大幅に増加し、なかなか元に戻りにくい傾向が示された。

「生活リズムが崩れると、連休明けにその反動が来て、余計に疲れをためやすくなる。スクリーンタイムや目に触れる情報の内容はある程度、保護者の関与が必要だ。SNSやネットなどを通じて、コロナに関するさまざまな情報が入ってくるが、中には誤っているものや必要以上に不安を高めてしまうものもある。子供がテレビのニュースなどを見ているときは、なるべく親が寄り添って不安に感じていないかなどを気に掛けたり、発達段階に応じて正しい情報を伝えたりしてほしい」と半谷医師。

その上で「調査では、保護者がストレスを感じていると、子供にも強く影響することが分かっている。子供たちからは『親がスマホを見る時間を減らしてほしい』という声もあった。まずは保護者が自分自身のストレスをうまく解消しながら、子供たちの気持ちをじっくり聞く機会をつくってほしい」と強調し、人に話を聞いてもらったり、手足や五感を使った運動をしたりするなど、いろいろな方法を試しながら自分に合ったストレス解消法を見つけることをアドバイスする。

「コロナ×こども調査」で寄せられた大人に対する子供たちの声(国立成育医療研究センターコロナ×こども本部「教育機関向け資料」より)

足立准教授も、子供の話をよく聞いたり、スキンシップを増やすことが効果的だとした上で、「子供は役割を持つことで、自身の存在価値を確認したり、高めていく面がある。長期休みに家庭の中で子供ができる役割について一緒に考えて、家庭の仕事を任せてみてもいいかもしれない。その際、任せた仕事は完璧にできなかったとしても、できている面に目を向けて褒めたり、感謝の気持ちを伝えたりすることで、子供の自尊心が育まれる」と説明。

さらに「思春期の子供がいる保護者は、子供との接し方で難しさを感じているかもしれないが、『大変なことがあれば話をしてほしい』というメッセージをはっきり伝えておくことが重要だ。同じように、学校の教員も信頼関係のある教員がそういうメッセージを出し、教員同士やスクールカウンセラーと情報共有しておくことが求められる。困ったときに頼れる人がいるという感覚を子供に持ってもらうことが、自殺のリスクである孤立や孤独を予防することにもなる」と話す。

登校しぶりは保護者と学校で連携を

GWが明けた直後も注意が必要だ。戸部教授は「保護者や教員が子供の『生活習慣は乱れていないか』『親しい人と関われているか』『家族との関わりはどうか』『運動は足りているか』などに気を付けながら、子供のストレスのサインを見逃さないようにすることが大切だ」と説明し、子供の生活リズムや人間関係の変化、体力面の影響などに目配りすることを挙げる。

また、例年、GW明けは不登校などが増える時期でもある。もし子供が学校に行きたがらないそぶりを見せたとき、保護者や教員はどう対応すべきだろうか。

「子供が学校に行きたがらないときは無理に行かせようとせず、その理由をしっかり受け止めてほしい。保護者と担任で子供の状況などを共有し、長引くようであればスクールカウンセラーや他の関係者とも連携しながら、支援の輪を広げていくことが大切だ」と半谷医師。

一方で足立准教授は「子供が学校に行きたがらない理由は千差万別だ。まずはその理由を子供と話し合い、保護者と学校が連携して特定していくことが必要だ。無理せずに休ませることが効果的であることもあれば、そういった対応が学校への通いづらさを助長してしまうこともある」と指摘する。

いずれにしても、子供の気持ちに寄り添い、保護者と学校がしっかり連携して対応していくことがポイントになる。


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