20年目迎える聞き書き甲子園 若者がSDGs実践する一助に

高校生が地域の「名人」を訪れ、名人が語る自然の中での生活の知恵や技術を文章にまとめる「聞き書き甲子園」が今年、20回目を迎える。5月11日にメディア向けに開かれたオンライン説明会で、聞き書き甲子園の実行委員長を務める澁澤壽一・共存の森ネットワーク理事長は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を見据え、「地方で持続可能な暮らしをしようとしている若者を育てる上で、聞き書きは非常に役に立つ。持続可能な社会を再構築するムーブメントの一助となれば」と期待を寄せる。

第20回聞き書き甲子園の参加者募集ポスター

2002年から始まった聞き書き甲子園は、話を聞く名人の対象や選定方法を変えながらも、高校生が農林水産業や伝統工芸などに携わる高齢者と1対1で話を聞き、その内容を一字一句丁寧に書き起こした上で、その人の語り口を意識して文章を紡いでいくスタイルは一貫してきた。

澁澤実行委員長は「当初は名人の人生のアーカイブを残すことが主たる目的だったが、20年続いたのは、聞き書きを通じて高校生の成長が手に取るように分かるからだ。聞き書きは聞いて書くだけの作業だが、聞いたものを書く行為は、相手が話したことを咀嚼(そしゃく)して理解し、共感しないと文章に表せない」と、教育的な効果が高いことを強調する。

昨年はコロナ禍から中止せざるを得なかったが、今回は、地域の感染状況を踏まえながらも、感染防止対策を徹底して、できるだけ名人に話を直接聞く場を確保する方針。「高校生は名人の人柄や周辺の環境など、五感を使って聞くことで、世代も経歴も違う方とコミュニケーションをし、成長を実感する」と澁澤実行委員長。「聞き書き」はまさに生き方を学ぶキャリア教育になるという。

今年は岩手県西和賀町、石川県能登町など、全国の12市町村で合計88人の高校生を受け入れる予定で、6月24日まで特設ホームページで応募を受け付けている。参加者に決まると、8月中旬に1泊2日の研修が行われ、名人にアポイントメントを取った後、9月中に2回に分けて話を聞き、その書き起こしを基に作品にする。作品は冊子にまとめられ、日本の自然と共に生きる人々の貴重な記録となる。

澁澤実行委員長は「SDGsへの意識の高まりから、日本でも暮らしの在り方に転機が訪れている。都市部から地方に移住する若者も増えつつあるが、地方で持続可能な暮らしをしようとしている若者を育てる上で、聞き書きは非常に役に立つ。持続可能な社会を再構築するムーブメントの一助となれば」と話す。

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