文化部の地域移行目指す掛川文化クラブ 音楽教員が設立

2023年度から土日の活動を中心に段階的に地域移行を進める方針が示されている部活動。それは文化部も例外ではない。静岡県掛川市では5月から、小、中、高校生が一緒になって地域で音楽活動を行う取り組みがスタートした。その活動を担うNPO法人「掛川文化クラブ」を設立した県立掛川西高校の佐藤真澄教諭は「子供から大人まで一緒に音楽で表現できる、学校の部活動に代わる地域の居場所にしていきたい」と語る。

部員不足に悩む地方の音楽活動

「少子化が進む地方では、吹奏楽をはじめ、音楽系の部活動が成り立たなくなりつつある。芸術系の授業数も少なくなる一方で、このままでは、地方の子供たちには音楽を親しむ場がなくなってしまうのではないか」

指揮を振る佐藤教諭(同提供)

そう佐藤教諭は、音楽教育への危機感を語る。そんな地方の課題を解決できないかと、掛川西高校で音楽を教え、吹奏楽部や音楽部の顧問もしている佐藤教諭は、NPO法人「掛川文化クラブ」を立ち上げることを決意した。

同クラブでは、当面、吹奏楽、合唱、弦楽の3つの活動を軸に、土曜日や市内の中学校の部活動がない水曜日に、小中学生を集めて練習を行う予定という。指導を担当するのは、佐藤教諭をはじめ、市内にある社会人の吹奏楽団や合唱団のメンバーだ。「社会人の団体も、若い世代が入ってこないなどの課題を抱えている。活動を通じて、子供から大人まで一緒に音楽で表現できる、学校の部活動に代わる地域の居場所にし、いずれはコンサートも開けたら」と佐藤教諭は青写真を描く。

同時に市内の高校の、音楽系の部活動の部員を対象にボランティアも募集する。「年齢が近い高校生が入ると、小中学生も目標ができる。また、高校生も経験が浅い小中学生に教えることで、自分の技術を振り返ることになる」と佐藤教諭。さらに音楽の教員志望者や文化行政に関心のある学生にも参加を打診しているという。

5月1日に行われた説明会(佐藤教諭提供)

参加する小中学生には楽器などを貸し出し、会費は月額1000円に抑えるなど、家庭の負担にも考慮した。5月1日に市の生涯学習センターで開かれた説明会には、保護者を含め約50人が集まった。今後、数回の体験会を経て、6月には本格的な活動をスタートする予定だ。

中学校との連携が課題に

掛川文化クラブの運営では、市教委も全面的にバックアップし、活動に期待を寄せる。掛川市は今年度、文化庁が部活動の地域移行に向けたモデルを創出することを目的とした「地域部活動推進事業及び地域文化倶楽部(仮称)創設支援事業」に応募し、掛川文化クラブの運営費などを支援。中学校の吹奏楽部などの地域移行に向けた課題を検証することにしている。

市教委教育政策課教育政策係の沢田佳史(よしちか)指導主事は「楽器の保管や運搬の問題もある吹奏楽部の場合、複数の中学校による合同部活動よりも、地域に拠点を作った方がいいのではないかと考えている」と話し、将来的には掛川文化クラブをそのプラットフォームとして位置付けたい考えだ。

ところが、現時点で参加希望者は小学生が中心で、既存の学校の部活動がある中学生がどれだけ参加してくれるかは未知数。「最初はどんな活動なのかも分かりにくいため、中学生の間に浸透するまでにはもう少し時間がかかるだろう。中学校の理解や連携をどう進めていくかが鍵だ。掛川文化クラブの吹奏楽の活動場所の一つは中学校なので、まずはそこで合同練習などをしていきたい」と語る。

佐藤教諭も「掛川市は広いため、クラブの運営が軌道に乗れば、市内の幾つかの中学校に活動拠点をつくっていけるのではないかと考えている。そうすれば顧問の教員の負担も減らすことができる」と話す。

人が地域の文化を育てていく

地域の音楽活動の未来に向けて、産声を上げた掛川文化クラブは、文化系部活動の今後の在り方にも一石を投じそうだ。

沢田指導主事は「この取り組みを通じて、地域の人の存在は大きいと改めて痛感した。当初こそ部活動の地域移行は難しい課題だと感じていたが、地域と関わるうちにやればできると分かってきた。一般市民の活動団体と連携しながら、単に部活動を地域に移すのではなく、子供の選択肢を広げるようなものにしていきたい」と期待を寄せる。

佐藤教諭は「地域の文化を守り、育てていくのは、結局その地域に住む人の意識次第だ。息の長い取り組みになるが、地域で音楽活動に親しむ文化を次の世代に根付かせていきたい。掛川のような地方都市でそのモデルができれば、同じような課題を抱えている地域の力にもなれるはずだ」と意気込む。

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