【GIGA到来】端末活用できない自治体は理由公表を 諮問会議

政府の経済財政諮問会議(議長・菅義偉首相)は5月14日、経済・財政一体改革の当面の重点課題として、オンライン教育とデジタル人材の育成などを取り上げた。民間議員は、GIGAスクール構想によって1人1台端末を配置した全国全ての小中学校が「オンライン教育の日常的な活用」を来年3月末までに開始すべきだとした上で、それができない小中学校のある都道府県・市町村に対して、できない理由と対処方針、いつまでに開始するのかを明記した工程表を年内に公表するよう求めた。また、「教員の端末活用スキルにばらつきが見られる」として、自治体によって対応が遅れているICT支援員の配置を確実に行うなど、教員のICT活用能力の向上を促した。

民間議員が提出した資料では、新型コロナウイルスの感染拡大によって「オンライン教育の対応の遅れや自治体間の格差といった課題が明らかになった」として、教育の質を高める必要性を強調。「緊急時の対応、平時の構造改革の両面から、政策効果を具体的にデータで示すなど、エビデンスベースでの改革に果断に取り組むべき」と指摘した上で、オンライン教育とデジタル人材の育成について課題を列挙した。

まず、GIGAスクール構想による1人1台端末の整備について、学校間や自治体間による進展状況に格差が広がってきている現状を踏まえ、「1人1台端末配置済みの全小中学校で、オンライン教育の日常的な活用を今年度中に開始すべき」と、学校教育における端末活用を定着させる目標時期を来年3月末に設定。この目標を達成できない小中学校のある都道府県・市町村に対し、「その理由と対処方針、いつまでに開始するのか、年内に工程表の公表を求め」る考えを明記した。これによって、個別最適な学び、学習環境の格差防止の推進につなげていくことを目的としている。

デジタル教科書については、2024年度の小学校の教科書改訂に合わせた本格導入に向け、教員側の体制作りも含め、国主導で普及を加速させる必要性を強調した。また、デジタル教科書やデジタル教材に関わる著作権者への補償金を国が負担する授業目的公衆送信補償金を継続し、保護者などに負担が転嫁されないよう配慮することが必要とした。

教員が授業にICTを活用して指導する能力について、都道府県のばらつきがみられる点も問題視。▽ICT支援員を4校に1人分配置する予算措置が国から自治体に講じられているにもかかわらず、配置済みの市区町村は2020年度で42.7%にとどまっている▽GIGAスクールサポーターは4校に2人分を目標に20年度第1次補正予算で1万7000人分の予算を国が確保したのに、21年度当初までに自治体から申請された人数が5711人分にとどまっている--などの予算執行状況を挙げながら、「各自治体でICT支援員を確実に配置するなど(中略)教員のICT活用・指導力の向上につなげるべき」だと指摘した。

また、児童生徒による家庭への端末の持ち帰りについて、家庭によっては「高速通信環境が不十分であり、落ち着いて学習できる環境も限られている」として、2020年度第1次・第3次補正予算に計上した、低所得世帯の生徒向けの機器貸与を速やかに実施するよう自治体に求めたほか、図書館や公民館における無料の学習スペースの開放を推進するよう促した。

こうした方針は経済財政諮問会議がまとめる「経済財政運営と改革の基本方針2021」(骨太の方針)に反映され、来年度予算編成の基本方針として6月上旬に閣議決定される見通し。民間議員は▽竹森俊平・慶應義塾大教授▽中西宏明・日立製作所会長執行役▽新浪剛史・サントリーホールディングス社長▽柳川範之・東京大大学院教授--が務めている。

オンライン教育・デジタル人材育成等の重点課題

※経済財政諮問会議の民間議員が示した資料より抜粋

  • 1人1台端末配置済みの全小中学校で、オンライン教育の日常的な活用を今年度中に開始すべき。できない小中学校のある都道府県・市町村には、 その理由と対処方針、いつまでに開始するのか、年内に工程表の公表を求め、個別最適な学び、学習環境の格差防止の推進につなげていくべき。
  • デジタル教科書は、1人1台端末に一体として搭載されるべきソフトであり、端末配置の意義を確実なものにするためにも、端末と同様、導入拡大と内容の充実に着実に取り組むべき。また、それを十分に活用できる教員側の体制づくりも不可欠。上記の各自治体での取組、さらには 2020 年度以降の小中高校でのデジタル教科書の導入拡大計画(注1)やその進捗(しんちょく)を踏まえ、 教員のICT活用・指導力の育成、外部のICT人材による支援、学校のネットワーク環境の安定性の確保等、デジタル教科書・教材の普及活用のための対策を、国主導の事業により、早急に具体化すべき。
  • 授業目的公衆送信補償金については、昨年度は新型感染症の下で特例的に無償化されたが、予算措置を適切に反映し保護者等の無償化を継続するなどして、デジタル教科書・教材の当面の普及加速につなげるべき(注2)。
  • 地域によってICT化を支える人材の配置に遅れがみられ、教員の端末活用スキルにもばらつきがみられる(注3)。各自治体でICT支援員を確実に配置するなど、外部のICT人材による支援を着実に進め、研修の充実等と合わせ、教員のICT活用・指導力の向上につなげるべき。
  • 家庭によっては端末を持ち帰って利用するための高速通信環境が不十分であり、落ち着いて学習できる環境も限られている。低所得世帯の生徒向けの機器貸与等(注4)の施策を速やかに実施するとともに、図書館・公民館等における無料の学習スペースの開放を推進すべき。
  • 大学入学共通テストの受験料等を負担できるかどうかが大学進学の機会格差を生むことがないよう、高等教育無償化のための給付型奨学金の支給対象となる学生については、受験料を免除するなどの措置を講じるベき。
  • デジタル人材を全国的に育成するため、教育機関における育成カリキュラムや教育コンテンツを抜本的に強化すべき(注5)。専門機関におけるトップレベルの高度デジタル人材の育成(注6)、スーパーシティ・スマートシティや企業・地域との連携強化を通じた人材育成が必要(注7)。また、この分野に対する大学·高専·専門学校の教育課程を拡充すべき(注8)。
注1:2024年度の小学校の教科書改訂を契機とした本格導入、25年度の小中学校100%導入に向けて順次拡大している。
注2:オンライン教育を推進するため、著作権者への補償金を一括で支払うことにより、著作物を無許諾利用できる範囲を拡大する制度。年間一人当たり、小学生120円、中学生180円、高校生420円、大学生720円とされており、公立学校には地財措置、国立大学や私立学校には予算措置が講じられているが、費用が保護者等に転嫁されないよう配慮が必要。
注3:教員の日常的な ICT活用を支援するため、4校に1人分のICT支援員を配置するための地財措置が講じられているが、配置済の市区町村は42.7%(2020年度、文部科学省調査)にとどまる。GIGAスクールサポーター(20年度第1次補正予算)は20年度4校に2人(約1万7000人)の配置目標に対し、5711人の配置にとどまる(21年度初までの申請ベース)。教員が授業にICTを活用して指導する能力も、都道府県のばらつきがみられる(2019年度:最高 85.2%、最低60.49%)。
注4:Wi-Fi 環境が整っていない家庭に対する小中高校等のモバイルルーターの貸与等のための自治体向け支援(2020年度第1次・第3次補正予算)、低所得世帯等の高校生向けの端末整備支援(2020年度第3次補正予算)が措置されているが、執行率(20年度交付決定分)はそれぞれ 33%(約 57.5万台)、21%(約 7.4万台)にとどまる。
注5:日本のIT人材は2030年に45万人不足するとの試算もある(経済産業省調査)。
注6:IPA デジタルアーキテクチャデザインセンター、高度ITアーキテクト育成協議会(AITAC)等。
注7:デジタル人材の環境整備として、高度プロフェッショナル人材の登用、専門人材の中途採用、 副業·兼業·共同での人材確保、プロジェクト単位の雇用、教育訓練休暇の活用、海外の高度人材の活用による企業の雇用慣行の見直しや制度の整備·普及等。公的職業訓練等のデジタル対応として、非正規雇用等からのステップアップのための公的職業訓練の充実、トライアル雇用の活用、特定一般教育訓練給付の拡充、オンライン講習による習得機会の確保等。地域のデジタル人材の育成として、訓練協議会の活性化、地域ブロック単位の産学官のプラットフォームの活用等。
注8:例えば、大学におけるデータサイエンス・情報関係の学部拡充・再編、オンライン受講やダブルディグリーの拡大。高専におけるコースの充実や国際的な学位化、大学·大学院進学の拡充。専門学校におけるデータサイエンス教育の強化。
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