共通テスト「思考力を試す出題ではない」 大学教授ら批判

今年1月に初めて実施された大学入学共通テストの試験問題について、大学教授らでつくる「入試改革を考える会」は5月21日、文科省で記者会見を開き、代表の大内裕和中京大教授は「共通テストは思考力を重視する問題になったとされるが、専門家から見て、センター試験に比べ、本来各教科で問われるべき思考力を試す問題にはなっていない」と批判。「以前の大学入試センター試験のように、もっとシンプルに各科目の学力を判定できる出題が必要だ」として、共通テストの出題方針を見直すよう求めた。

記者会見する「入試改革を考える会」のメンバー

会見の冒頭、大内教授は「高大接続改革として行われた大学入学共通テストは、高校の学習指導要領を強く反映した内容となった。しかし、共通テストは大学入試として必要性を満たすことが重要。これまでは『大学入試が高校教育をゆがめる』と問題になってきたが、今回の共通テストは『大学入試が大学教育をゆがめる』ことが問われている」と述べた。

続いて、各教科の専門家がそれぞれの試験問題について見解を明らかにした。

まず、英語について、阿部公彦東大教授(英文学)が「失敗した最大の原因は、不必要な『4技能分け』へのこだわりから生じている」と指摘。出題者が4技能のバランスを可視化しようとこだわった結果、「言語運用では本来、4技能が複雑に絡み合っていて、きれいに切り分けることはできない。それを強引に線引きしようとして弊害が出た」として、発音問題や並べ替え問題など有効な問題が排除されたことを批判した。

また、入試問題はシンプルさが大事」と強調し、その理由について「問題形式を複雑にすると、問題形式そのもののテストとなってしまい、英語の勉強よりも試験対策に時間とお金をかけた人の方が有利になってしまうから」と説明した。

国語では、紅野謙介日大教授(日本文学)が「学習指導要領では、さまざまな情報を比較して問題点を整理したり、情報の信頼性や妥当性を検討したりすることが求められている。それを反映して、共通テストには複数の資料を読んで回答する問題が出た。また、対話によって学びを深めるという学習指導要領を受け、共通テストでは多くの教科で先生と生徒などの対話形式が頻出している。こうした設問は、正答するには大人でも相当な時間がかかる」と指摘。学習指導要領が求める学力の定着を測ろうとしたことから設問が複雑になり、大学入試問題としてふさわしくないとの見方を示した。

数学については、予備校講師の大澤裕一氏が「会話形式の導入や、現実的な場面設定での問題作成などを目指した結果、数学に関係しない設定や文章量が非常に多くなっている。これで数学の能力を適正に問える試験問題と言えるのか」として、読解力を重視した数学の試験問題という共通テストの在り方自体に疑問を投げ掛けた。その上で「共通テストであれば、余計な設定を排除し、できるだけシンプルな形で各教科の基本的な内容を問うべきだ」と述べた。

物理では、予備校講師の吉田弘幸氏が「会話文を入れるとか、フラットなデータを与えてそれを読み取らせるなど、非常に工夫して作問していると思うが、新しい共通テストの作問方針に従って問題の形を整えることに集中してしまい、内容の吟味がおろそかになっていると思われる部分がいくつかある」として、個別の問題点について所見を表明。「出題者の気持ちを読み取るような、(まだ実施されていない)次期学習指導要領を先取りした形の試験になってしまっている。今後の高校教育全般への影響を危惧している」と指摘した。

関連記事