パラアスリートと学ぶ共生社会のヒント 灘中高で特別授業

日本財団パラリンピックサポートセンターは5月22日、パラリンピックの理念から共生社会の在り方を学ぶ「あすチャレ!ジュニアアカデミー」のオンライン授業を、神戸市の灘中学校・高等学校(和田孫博校長、生徒1213人)の土曜講座で行った。同市出身で、上半身の力だけでバーベルを持ち上げるパラ・パワーリフティングの選手である山本恵理さんが講師となり、中高生との対話を通して共生社会へのヒントを探った。

パラスポーツとの出合いを生徒に語る山本さん(日本財団パラリンピックサポートセンター提供)

先天性二分脊椎症で幼少期から車椅子に乗って生活している山本さんは、小学生のころ、大の水嫌いを克服して以来、水泳に熱中。パラリンピック出場を目指して猛練習をしていた。しかし、高校生のときに重度のやけどを負い、水泳選手の道を断念。その後、パラ・パワーリフティングと出合い、今では女子55キロ級日本記録保持者となるなど活躍している。

山本さんは講座に参加した生徒とニックネームを交換し合うなどして打ち解けると、「コロナが理由でできないこと、もやもやしていること、我慢していることは何?」と問い掛けた。生徒からは「文化祭がどうなるか分からず、みんなの気分が落ち込んでいる」「友達と遊びに行けないし、外食もできない」などの答えが返ってきた。

それに対して山本さんは「その感覚は、生まれつき障害がある私が日常生活の中で感じていることと似ている。車椅子に乗っていると、階段があって行けない場所がある。車椅子に乗れば移動はできるけど、社会に出ると制限がある。体に障害があるというよりも『私には選択肢がない』と思ったときに障害を感じる」と応じ、一例として日本のプロ野球の試合で使われている野球場では、車椅子の席数がとても少ないことなどを紹介。「ハードを変えるよりも、まずは車椅子を利用している人が野球場で観戦する機会をもっと増やすなど、ソフトから変えていくことも大事だ」と話した。

また、山本さんは高校の水泳部で出場した大会で、顧問の教員が同じ水泳選手として見てもらうために、障害があることをあえて事前に周囲に伝えずに、他の選手と同じスタートラインに立たせたというエピソードを披露。大差をつけられながらも泳ぎ続ける山本さんに、会場からは拍手や声援が自然と湧き起こり、パラリンピック出場という目標を改めてかみしめたという。

山本さんは「障害がある、苦手なことがあるという理由で特別扱いするのではなく、どうやったら一緒にできるのかを考えてほしい。できるかできないかではなく、どうやったらできるかを考え続けよう」と呼び掛けた。

講座の最後に設けられた質疑応答では、パラ・パワーリフティングや山本さんの普段の生活など、さまざまな質問が飛び交った。ある生徒から「今まで人からしてもらったことでうれしかったことは?」と聞かれると、山本さんは「スーパーで買い物をしていて、上の棚にあって私では届かない大葉を、店員さんが取ってくれたとき、その店員さんが手前の大葉ではなく、大葉の入った箱ごと取ってくれて『どれがいいですか?』と『選ばせてくれた』ことだ」と答えると、生徒らは大きくうなずいていた。


ニュースをもっと読む >