コミュニティ・スクール「首長に知られていない」 文科省検討会議

地域住民や保護者が学校運営に参画するコミュニティ・スクール(学校運営協議会制度)の設置促進や充実策を議論する文科省の検討会議は5月27日、第2回会合をオンラインで開催し、県教委、小学校、地域のコーディネーターから、それぞれの好事例について報告を受けた。続いて、法律で設置が努力義務とされたにも関わらず、コミュニティ・スクールが増えない理由や設置促進策について意見を交換。自治体の代表からは「コミュニティ・スクールは、(市町村の)首長にはあまり知られていないのが偽らざる実態」などと厳しい現状認識が示された。

オンラインで行われた文科省の第2回コミュニティ・スクールの在り方等に関する検討会議

この日の検討会議では、まず県内全ての小中学校と高校にコミュニティ・スクールが導入されている山口県の繁吉健志教育長が、県教委の積極的な伴走支援が導入促進につながった経緯と現状を報告した。

2013年ごろから小中学校への導入が急加速した背景として、社会教育との一体的な施策の展開や関係する人材の育成を図る山口県独自の「地域教育ネット」の整備によって、コミュニティ・スクールに対する市町の理解が進んだことを指摘。県内全ての学校への導入が完了した2015年には、退職した校長や教頭をコンダクターとして市町に配置して助言支援を行うなど、次のステップとしてコミュニティ・スクールの質の向上を図っていることを説明した。

12年間の校長経験を通じて3校でコミュニティ・スクールを立ち上げたという、安齋宏之・福島県本宮市立本宮まゆみ小学校長は「学校経営の困難さは年々増しているが、こうした状況だからこそ、学校の本質も見えてきた。令和の日本型学校教育を実現する、改革のチャンスがいま到来している。これまでの校長や教職員だけががんばる昭和の学校経営では改革を成し遂げられない。保護者や地域住民が参画し、目標を設定して、その目標を達成するために対話・協働し、それを評価していく令和の新たな学校改革が必要だと感じている」と説明。

学校の改善・改革に必要なこととして▽モグラたたき状態からの脱却▽保護者・地域住民の当事者意識の高揚▽合意形成の場・プロセスの重視▽学校評価の活用--を列挙。こうした課題に取り組むために、コミュニティ・スクールの活用を通してスクール・ガバナンスを確立し、自律的な学校経営を実現していく重要性を指摘した上で、「いまこそ、校長の本気度が問われている」と強調した。

続いて東京都杉並区立天沼小学校で学校運営協議会に携わる井上尚子さんが、地域住民が地域学校協働活動推進員や地域コーディネーターなどとして教育委員会から正式に委嘱され、コミュニティ・スクールで果たす役割について、体験的な報告を行った。

こうしたコーディネーターとの連携で学校現場が得られる効果として▽学校とコーディネーターの打ち合わせにより、授業の狙いに適した講師・サポーターを確保できる▽コーディネーターが調整役を担うことで、教員は子供の指導に専念できる▽子供たちは多様な人とのコミュニケーションを経験できるとともに、地域への理解と愛着を深めることができ、地域に守られ生活していることを実感できる--などを挙げ、「こうした効果を経験した教職員は、学校と地域の連携・協働について『なくてはならないもの』という認識を高めている」と説明した。

こうした好事例の報告を踏まえ、検討会議では、コミュニティ・スクールの設置促進や活動を充実させる方策について意見交換を行った。

コミュニティ・スクールの設置促進を巡り、自治体での首長部局との連携や首長の理解を促す方策が議題になったことを受け、吉田信解・ 埼玉県本庄市長(全国市長会社会文教委員会委員長)は「しっかり取り組んでいる学校もあれば、仕組み自体ができていないという状況の学校もあって、千差万別になっている。そういう実態があること自体を知らない首長が多い。これがコミュニティ・スクールの偽らざる実態だと思う」と、厳しい現状認識を示した。

その背景について「自治体の総合教育会議で教育委員会から報告があるときぐらいしか、首長がコミュニティ・スクールについて知る場面がない。教育に関心のある首長が『コミュニティ・スクールはどうなっているのか』と教育委員会に聞けば報告が上がってくるが、そういう積極的な働き掛けをしない限り、首長は現状を知らされない。構造的に首長が知らない状況になっているのが、全国的な実態だと思う」と説明。

認定NPOカタリバの菅野祐太ディレクター(岩手県大槌町教育専門官)は「コミュニティ・スクールの本来の役割はガバナンスへの地域参画。地域学校協働活動のコーディネーターは広まってきているが、学校運営協議会のコーディネート機能をしっかり作っていく必要がある。国からのやり方ではなく、都道府県ごと市町村ごとの実態に応じたコーディネートができる人材を育成していかなければならない。一律にコミュニティ・スクールを導入するのは、なかなか難しい。地方と都市部でも違うし、学校種でも違う」と指摘した。

検討会議の正式名称は「コミュニティ・スクールの在り方等に関する検討会議」。コミュニティ・スクールの導入を教育委員会の努力義務と定めた「地方教育行政の組織及び運営に関する法律」(地教行法)改正が、2017年の施行から5年後をめどに在り方の再検討を求めていることから、今年4月に検討会議が設置された。

コミュニティ・スクールを導入している公立学校は、昨年7月1日時点で全体の27.2%に当たる9788校。前年度より2187校増加した。教育委員会単位では48.5%となっている。


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