GIGAスクール好調の秘訣は 奈良市教委が事例発表

GIGAスクール端末をうまく運用している自治体の1つとして注目されている、奈良市教委の教育部学校教育課情報教育係の谷正友係長がこのほど、オンラインイベント(大塚商会主催)に登壇し、学校での端末利活用の具体的な手法を紹介した。国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの豊福晋平准教授も登壇し、近年関心を集めるデジタル・シティズンシップ教育について触れた。

スムーズに利活用できている要因を説明する谷係長

イベントでは、まず谷係長が、昨年の一斉休校時から現在までの、端末活用の取り組みについて振り返った。

同市はこれまで、特にICT活用に秀でた地域ではなかったことを強調。それにも関わらず、全校で端末をスムーズに利活用できている要因として、県全体で同じ端末や学習アプリを使用し、オペレーションを同一化することで連携しやすい環境を整えていると明かした。これにより学習者である子供たちも、小学校から高校卒業まで一貫したIDや端末を使用でき、学習しやすい環境が整う。

またGIGAスクール構想が軌道に乗ったきっかけの1つとして、昨年度から実施する「校長会、教頭会のオンライン化」を指摘。初めの2回ほどは、「ネットがつながらない」「音声が聞こえない」「カメラが起動しない」など混乱が続いたが、3回目以降は徐々に慣れていき、今ではオンライン開催が当たり前のように進められているという。

谷係長は「管理職がICTに苦手意識を持ったり、実際に苦手だったりするケースが多い。実際に使えるようになることで、『私もできたのだから、現場の先生もできる』と捉えられ、現場での活用への促進につながった」と振り返った。

また研修の仕組みも紹介。市教委主導で、1時間以内の短い研修動画を連日アップしており、オンデマンドでも配信し、教員は自分の好きな時間に視聴することができる。端末の家庭への持ち帰りについても、同市では全面的に認めている。毎日持ち帰りしなければならないかという問いに対して、谷係長は「毎日の持ち帰りは必須。緊急時にスムーズに学習を継続させるためには、日常的に家庭で活用している必要がある」と回答した。

さらに谷係長は「『端末を整備したから、あとはよろしく』と学校現場に全て任せるのは乱暴。課題に一緒に向き合って、真剣に考えていかなければ、前向きな動きにならないのではないか。GIGAスクール構想は、チームで取り組むことが何より大切だ」と、自治体や学校現場が密に連携をとって推進する意義を改めて呼び掛けた。

公教育の展望などを語る豊福准教授

続いて講演した豊福准教授は、デジタル・シティズンシップ教育について説明。デジタル・シティズンシップ教育とは「優れたデジタル市民になるために、必要な能力を身に付けることを目的とした教育」などと、位置付けられている。

従来の情報モラル教育との違いについて、「これまでICTは依存の原因となり得る、禁止や抑圧するべき対象だった。しかしこれからは日常生活のライフラインとして、ICTが孕むジレンマも含め、付き合っていくべきものとして捉えなければいけない」などと述べた。

さらに子供のICT使用を巡って、大人からネット依存やトラブルへの危惧が後を絶たない現状について、「親世代の幼少時にはなかったもので、大人がモラルパニックを起こし、一様に悪いものだとラベリングしているのではないか」と疑問を呈した。ネット依存やゲーム依存の基準を正しく把握するなど、大人側が冷静に受け止める必要性を訴えた。

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