大卒要件や「特別免許状」見直しを 規制改革会議が答申

政府の規制改革推進会議(議長:小林喜光・三菱ケミカルホールディングス取締役会長)は6月1日、規制改革の推進に関する答申をまとめ、菅義偉首相に提出した。教育関係では、デジタル時代を踏まえた大学・高校の設置基準の見直しをはじめ、必要単位を取得すれば4年未満でも卒業できるようにする大学の卒業要件の見直し、多様な外部人材を教師として登用する「特別免許状」の利用促進に向けた手続きの見直しなどが盛り込まれた。政府は答申を受けて今後、規制改革実施計画を策定し、実現に取り組んでいく。

記者会見する規制改革推進会議の小林議長(左)と河野行革相

規制改革推進会議の3回目の議長・座長会合は首相官邸で開かれ、各ワーキンググループの審議結果を取りまとめた答申が小林議長から菅首相に手渡された。「デジタル社会に向けた規制改革の実現」と副題がつけられた答申で、教育関係は「デジタル時代の日本を支えるイノベーション人材育成の環境整備」と「オンライン教育等にかかる規制・制度の見直し」を大きな柱として具体的な実施事項が打ち出された。

「デジタル時代の日本を支えるイノベーション人材育成の環境整備」では、デジタル技術の活用で教育の質の向上が可能になる中、高等教育・初等中等教育の在り方を大きく見直すべきだと提言。具体的には、▽大学設置基準では、オンライン授業の普及やリカレント教育の実施に向けた観点から、校舎等の施設の在り方を定める設置基準の見直し▽学生が海外大学院等へ進学しやすくなるよう、必要単位を取得した場合は4年未満でも卒業できるように卒業要件の見直し▽高校設置基準でも、全日制・定時制・通信制それぞれの創意工夫が最大限生かされるよう抜本的な見直し▽年間200件程度にとどまっている、多様な外部人材を教師として登用する「特別免許状」の利用促進に向けた手続き面や要件の見直し――などが盛り込まれた。

また、「オンライン教育等にかかる規制・制度の見直し」では、オンライン教育の有効活用により、教師が児童生徒に寄り添う質の高い教育の実現を打ち出した。具体的には、▽教師が同時双方向、オンデマンド動画などをハイブリッドに活用し、児童生徒の状況に応じて、より質の高い教育を行うため最適な対応が取れるようにする▽不登校児童生徒や病気療養児がオンラインを活用した学習を円滑にでき、一定要件の下、出席扱いとして学習成果を評価に反映できることを周知する▽学習者用デジタル教科書の使用を、各教科等の授業時数の2分1に満たないこととする基準の撤廃――などが盛り込まれた。

会議後、記者会見した小林議長は「今回は各ワーキングループの会合を多く開き、できるところから実行する手法に切り替えたのが大きなポイントだった。総理と河野太郎行政改革相のリーダーシップの下、大胆にデジタル化を可能とする速やかな規制改革を実行してほしい」と話した。

また、河野行革相は「昨年の9月末からワーキンググループの会合が81回開かれ、大きくいろいろなものが前進したのではないかと思う。総理からは直ちに実施計画を策定し、スピード感をもって実行せよと指示されたので、しっかりやっていきたい」と述べた。

規制改革推進会議の答申に盛り込まれた教育に関する主な内容
デジタル時代の日本を支えるイノベーション人材育成の環境整備
〇デジタル時代を踏まえた大学設置基準等の見直し
  • 通学制と通信制の設置基準の見直しにあたっては、その差異が相対化していることを踏まえ、それぞれの長所を生かした形で大学が独自性を活かすことができるよう、さらなる見直しが必要であり、関係者の意見を聞きながら検討を行う。
  • 大学設置基準では、授業の主たる実施場所は大学の校舎等であることが求められるが、オンライン授業の普及や今後期待されるリカレント教育の実施に向けた利便性等の観点から、「校舎等施設」等の基準について、柔軟に対応できるよう見直しを実施する。
  • 学生が海外大学院等へ進学しやすくできるよう、必要単位を取得した場合には、4年未満でも卒業できるよう、大学の卒業要件を見直す。
〇デジタル時代を踏まえた高校設置基準等の見直し
  • 全日制・定時制と通信制の長所を生かしながら、教育現場の独自性が生かされるようにすべきであり、施設・設備要件については、より柔軟な対応が可能となるようにすべきである。
  • 生徒の習熟度を考慮し、学習指導要領で設定されている標準単位数に縛られず、単位数を増減できること、後に履修する科目の内容を含めて学習指導要領に示していない内容を加えて指導することが可能であることを現場に浸透させるよう周知する。
  • 校務の情報化・標準化を進める観点から、校務支援システムの導入等により、指導要録の電子化をより一層促す。
〇教員資格制度にかかる規制・制度の見直し
  • 教師の「質」について早急に議論を行い、結論を出す。現在の教員免許制度や免許更新制が教師の質を高めているのか検証し、必要に応じて見直す。
  • 多様な外部人材を教師として登用する「特別免許状」が現在、年間200件程度にとどまっており、利用を促進するため手続き面や要件の見直しを行う。
  • さらなる外部人材登用のため、一定の能力・経験を有する社会人経験者が円滑に教員免許状を取得できるよう、特別免許状を活用した仕組みを検討する。
  • 社会人登用に必要な採用プラットフォームを整備するなど、運用面でも社会人登用が進むよう環境整備を行う。
オンライン教育等にかかる規制・制度の見直し
〇オンラインを活用し、教師等がより児童生徒等に寄り添う質の高い教育の実現
  • 遠隔・オンライン教育等、ICTを活用した学びの成果や課題について、検証を進め、検証結果も踏まえた目標設定を行う等、ICTの効果的な活用の取り組みを推進する。
  • 教師が、同時双方向、オンデマンド動画、デジタル教材をハイブリッドに活用し、児童生徒の状況に応じ、より質の高い教育を行うために最適な対応が取れるようにする。
  • 不登校児童生徒や病気療養児について、オンラインを活用した学習が円滑にできるようにし、一定要件の下、出席扱いとし、学習の成果を評価に反映できることについて、学校現場に引き続き周知する。
  • 離島・中山間地域等に居住する生徒でも、他校の通信課程の科目を受講することで多様な科目を学ぶことなどができるよう、高校段階の全日制・定時制と通信制とのハイブリッド的な取り扱いを推進する。
〇学習者用デジタル教科書の普及促進
  • 1人1台端末の早期実現を踏まえ、学習者用デジタル教科書の使用を各教科等の授業時数の2分の1に満たないこととする基準について撤廃する。
  • デジタル教科書の使用が全国的に普及するよう促進し、あわせて視力低下の防止等の健康面での留意事項等についても引き続き周知を図る。
〇感染症や災害の発生等の非常時にやむを得ず学校に登校できない場合の学びの保障
  • 新型コロナウイルス感染症対策として特例的に実施した、オンライン学習を含む自宅での学習の成果を学習評価へ反映できることなどを、その他の感染症や災害等で登校できない場合も、同様の取り扱いを可能とする。
  • 大学においても、対面授業が困難な場合、オンラインを活用した授業を行う弾力的な運用を認めるとした今般の特例的な取り扱いについて、今後、他の感染症や災害等で対面授業が困難な場合も同様の取り扱いを可能とする。
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